ひろひろの生活日記(LIFE Of HIROHIRO)

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」1話、初めて見る人の女。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0004

2021年05月06日 03時07分17秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

0004_初めて見る人の女(おんな)

--初めて見る人の女(おんな)--

人の太腿(ふともも)ぐらいの太さの幹(みき)が間隔(かんかく)を空(あ)けながら生(お)い茂(しげ)っている。
それは、山の深い森へと繋(つな)がっている。
ひょっとしたら異世界に行けるかもしれない。
今、古(いにしえ)の扉(とびら)を開かん。

山には潺(せせらぎ)がある。
澄(す)んだ水が流れている。
人が水を汲(く)みに行くせいか草が分け踏(ふ)まれ少し道が出来ている。

デミュクは、その道のわきの茂(しげ)みに倒(たお)れていた。

森の直(す)ぐ傍(そば)には、畑があり農家が見える。
森の木でつくられた家で、屋根は、木の板を貼(は)り、
上に藁(わら)が敷(し)き結んである。

畑で一人の女性が、作物(さくもつ)の成長の様子(ようす)を見ている。
一(ひと)つの葉っぱを束(たば)ねて掴(つか)み抜く。
赤茶色の細長い房(ふさ)の根がついている。
キャロット(にんじん)である。
「大丈夫(だいじょうぶ)。収穫(しゅうかく)できそう」
女性の名は、『イリス』月の神話から取った名前である。
納屋(なや)から籠(かご)を持ってきた。
そして、キャロットを抜いて入れていく。

犬が畑の周りを走り回っている。
コリーのようだ。
中型犬で体は黒の毛色(けいろ)で首筋に白の月形の模様(もよう)がある。
女性は、頭から被(かぶ)る白のシャツと茶色のロングスカートにエプロンを腰に巻いている。
白いシャツは、土まみれであった。
女性は、細身であり、
胸は、普通に膨らんでいる程度でけっして大きくない。
だが、顔から愛らしさが浮かんでいる。
犬が吠(ほ)えている。
「ワゥ。ウゥゥゥゥ。ワンワン」 
イリスは、犬の唸(うな)り声があまりにうるさいので周りを見た。
犬の姿が見えない。
森に入ったようである。
「ブロク!ブロク!」
(森で何か見つけたのかしら)
『ブロク』は、犬の名前である。

デミュクは、意識が薄れる中、犬の気配を感じた。
力を出して腕を動かし、血を右手の人差し指に付けた。
そして、犬に翳(かざ)す。
犬は、噛みつこうとして近づいた。
デミュクは、目を見開いた。
それは、デミュクが見開いたと言うより、何かが乗り移ったのかもしれない。
デミュクの目が白い。犬の目を見た。
犬は、急に大人(おとな)しくなった。
犬の額(ひたい)に血の付いた人差し指を当て、一言(ひとこと)いう。
「これは、契約の印(しるし)である」
犬は、デミュクの横に座った。
そして、主人(しゅじん)を呼ぶのか、
今度は、遠吠(とおぼ)える。
「ウォォォォーーーォ」

「犬の声が変わったわ。
 私を呼んでるの?」
イリスは、近づいて行く。

デミュクは、森の中の木々が開けた草原にいた。
太陽が眩(まぶ)しい。
(あ!月か?周りが暗い。でも、明るい)
人影が月の中から浮かび上がる。
薄黒(うすぐろ)い肌。
褐色(かっしょく)だが透き通るような肌をしている。
神話に出て来るような白い肌ではない。
(魔族のものか?)
髪は、ショートヘヤーで白髪(はくはつ)ではあるが艶々(つやつや)して輝いている。
羽(はね)を静かに羽(は)ばたかせ降りて来る。
全身に一糸(いっし)纏(まと)っていない。
(素肌が美しい)
胸の真ん中が光っている。
(何の輝(かがや)き?
 白黄(はくおう)の宝石)
デミュクは、(汚(けが)してはいけない)が、欲望を覚える。
何の感情かは分からない。
しかし、声を掛けたくなった。
だが、思うように動かない。
(痛て。
 俺、怪我(けが)して森の中で倒れたんだ。
 痛て。脇腹(わきばら)に。
 う。何かが貼(は)ってある)
デミュクは、薄く目を開いた。
(どこかの家なのか。今のは、夢なのか?
 藁(わら)か?
 暖かい。
 夜?
 夜にしては、明るい。
 月の匂(にお)いがする)
薄く開いた目からは、ぼんやりと月の光に祈っている女性の後ろ姿があった。
白髪(はくはつ)の髪(かみ)が光つていた。
(夢の女性?人か?人の村?祈り?)
デミュクは安(やす)らぎを感じた。
再(ふたた)び意識が遠のき眠りにまた落ちる。
深く深く、落ちて行く。
(デミュクは、何に安心したのだろうか?
 安(やす)らぎとは何?)筆者の問いかけです。

イリスは、犬の鳴き声がした時、森に入った。
そして、デミュクを見つけた。
青い血がお腹から流れていた。
(人の血ではない)
しかし、イリスは、ほっとけなかった。
森の奥に行き薬草を取って来て、
一部は手で擦(こす)り潰(つぶ)し、
お腹(なか)の切り口に当て、
葉っぱを被(かぶ)せた。
そして、エプロンを外してデミュクのお腹に巻き縛(しば)った。
そして、納屋から荷車を持ち出してデミュクを乗せて、納屋まで運んだ。
藁(わら)を集めて来て敷き、その上に寝かせた。
イリスは、祈を捧(ささ)げた。

そして、今である。
デミュクは、安らかに寝ている。
イリスは、デミュクの顔が安らいでいるので安心した。

お爺(じい)さんが、別の畑から農作業を終えて帰ってきた。
お爺さんを迎(むか)える。
「お爺(じい)様。
 お疲れ様です。
 農具は、私がしまってきます」
イリスは、お爺さんから農具を受け取った。

つづく。 次回(願い、言い訳)

#自作小説 #~失望と愛~ #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市

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