悪魔の囁き

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2017-12-15 10:32:07 | 日記
第一話[左馬](一)


午後2時にハーフライブ本部に商談に行った。
「まいど」
「ご苦労様です」と飯田事務員が言った。
「中ちゃん。待っていてねぇ」と商談をしていうた片山バイヤーが言った。
「はい 」
「おっ。いいところに来た」と平沢社長が社長室から出てきた。
「いつもお世話になります」
「中に入ってくれ」
「はい>」
・・・!?・・・
私は社長に呼ばれてレイアウトの平面図を見せられました。
「ユゥーよ」
「はぁ~」
「今回の中野店も、一等地のレジ横40本ゴンドラだから頼むな」
「増えたんですね」
「そうだなぁ」
「平面ゴンドラ本数は同じだけど、壁面を増やしたから」
「ありがとうございます」
「分かっていると思うけど、回転率の上がる商品でレイアウトしてな」
「それは大丈夫です」
「それだけだ」
「有難うございました」

「中ちゃんの所はゴンドラが多くていいね」と片山バイヤーに言われた。
「助かりますよ」
「努力の甲斐があったじゃない」
「でも、もう少し近ければなぁ~」
「取引が出来るんだから、贅沢を言うもんじゃないよ」
「そうですね」
「まだ、店舗数は増えそう」
「宮野課長の口ぶりだと、そんな感じがしますね」
「これからもうちの店も頼みますよ」
「俺、プロですから、お任せてください」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
それからは各問屋も商談に訪問するように成った。

「山下くん。2号店のオープン決まったよ」
と東洋商事の坂田課長が会社に帰ってきて言った。
「搬入はいつですか」
「12月5日~8日までだよ」
「押し詰まっていますね」
「年明けよりはいいんじゃないかなぁ~」
「ボーナスが入って財布の紐がゆるくなるのは、12月ですものね」
「まぁねぇ」
「それでオープンは――」
「これに書いてあるので見ておいて」
「はい<」
「それでうちの商品どのくらい入りそう」
「中ちゃんに聞かないと判らないですねぇ~」
「なら直ぐ電話してみて」
「はい>」
“もしもし”
「シンワです」と社長が出た。
「東洋商事の山下です」
「ご苦労様です」
「中ちゃんいますか」
「いるよ。チョット待ってくださいねぇ」
「はい 」
「チューさん東洋商事から」
・・・!?・・・
「はい 」
「山下です」
「まいど~」
「今度の中野店件なんだけど・・・」
「はい。はい」
「僕のところの商品はどのくらい入りそう」
「若槻店と同じですね」
「そう」
「それでいいでしょ」
「出来れば、うち看板商品は入れたいんだけど」
「いいですよ」
「悪いね。それでレイアウト組んでくれる」
「これからカタログを見て、売れ筋を増やします」
「よろしくお願いしますねぇ」
「それと、棚を空欄にしておきますいので、新製品をいれてください」
「助かります」
「出来上がったら、またファクスを流しますから」
「そうだねぇ」
「それで特売はどうすればいい」
「冬物を中心にしてください」
「なら目玉商品や日替わりは前回と同じでいいね」
「いいと思いますよ」
「分かりました」
「よろしくお願いします」
「有難うございました」
「それでいつから搬入しますか」
「中ちゃんところは」
「12月5日~8日までかかると思いますよ」
「すると泊まりだね」
「せっかく湯田中温泉町まで行きますから、泊まってきますよ」
「相変わらずですねぇ~」
「山下さんは」
「僕は一日で上げつもりですよ」
「もしかしたら雪が降るかも知れないので、一日は泊まる用意しておいた方がいいですよ」
「季節柄それもあるかぁ~」
「まぁ、用心の越した事はないですよ」
「それで中ちゃんところは何人で来るの」
「メーカーも入れて8人ぐらいですかね」
「そんなに来るの」
「山本さんは」
「ハード88の営業マンを一人入れて、3人で行きますよ」
「課長は来るんですか」
「実践勉強のために新人を連れて行きます」
「ふぅん~」
「まぁ。そのうち戦力になりますからねぇ」
「何卒、ご指導のこと、宜しくお願いしますよ」
「プロの腕を見せてやりますか――」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \

「それと見積もりはどうするんですか」
「商談の時の持っていきますよ」
「中ちゃんは」
「うちもそうします」
「その時に棚割りも提出しますね」
「はい」
「分かりました」
「そんじゃ、現地で会いましょう」
「そうだね。じや、宜しくねぇ」

「東洋商事。なんだって」
「自分のところの商品がどのくらい入るのか、聞きに来たんですよ」
「それで増やすのかい」
「多少ですね」
「喜ぶね」
「でも増やした分、古い商品を削りますよ」
「となると、若槻店と変わらないという事ね」
「そうですねぇ」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「怒らないか」
「黙ってついてくれば自動的に商品が入りますからね」
「宮野課長は何も言わないの」
「全部うちのお任せですから」
「あまりやり過ぎないようにね」
「大丈夫ですよ」
「ならいいけど・・・」

「これからメーカーに注文書を出しますから」
「うちは在庫“レス”だから、早い方がいいね」
「欠品だけは出来ませんからね」
「それに昔みたく値付けも出来ないからね」
「そこなんですよ」
「サコタで値付けはできないからね」
「こっちから手伝いに行く人間もないですよ」
「そうだね」
「結局現地でやらなくてはならないですからねぇ」
「ふぅん~」
「面倒かけるけど、頼むね」
「はい」
******
やたらと雪が多く降る年だった。
東京も3月25日まで降り積もる程の多さだった。
他部門の問屋は若槻1号店と同じく宮野課長に商品見積と棚割り陳列商品を書いて提出した。
私の場合は“顔パス”だったので提出はしなかった。
其れに加え年間スケジュールで売れる店づくりデーターを揃えて提出していたので、信頼されて全部お任せだった。
長野県中野市ジョイマート2号店は店舗規制が有ったので、150坪での新規オープンで決まった。
12月5日~8日の搬入日と成った。
朝から快晴で長野まで来て仕事をするにはもったいない気分だった。
「12時だ。飯でも食いに行くか」と大村専務が言った。
「そうしますか」
「取り敢えず陳列は終わらせてください」
「このままでいいですか」とメーカーのエスエス産業の小西が聞いた。
「人が通れるぐらい開けておけばいいですよ」
「それなら商品は棚の上に載せておけばいいですね」
「それの方が踏まれなくていいなぁ」
「よし。行きましょうか」
――はい<<<――
「中。どこに行く」
「車で行くのも面倒だから、横の喫茶店に入ろぅかぁ」
「そうだなぁ」

「こんちわぁ」
「いらしゃませ」
「5人ですが」
「こちらへどうぞ」
「スイマセン」
「何にする」
「とりあえず1杯飲むか」と大村専務が言った。
「いいですねぇ~」と小山が言った。
「生でいい」とわたしが聞いた。
「いいですよ」と全員が賛成した。
「ママさん。生お願いします」
「はい< お食事は」
「生が来てから考えます」
「分かりました」
「しかし寒いいねぇ」
「エクステリアの連中は外で搬入だから辛いよなぁ」
「かわいそうに」
「本場の寒さは東京とは違うよなぁ」
「だなぁ~」
「お待ち道様」
「キタ きた 来た」
「んじや、午後からも頑張りましょう」
・・・オッオッオッ<<<L・・・
――乾杯――
・・・まぃぅ~♪<<<・・・

 定食を頼み1杯飲みながら午後からの陳列状況を話していた。
「この調子で行くと今日で殆ど終わるな」と大村専務が言った。
「飾り付けさえ終われば手直しをして検品だけだから大丈夫だと思うよ」と私が言った。
「なら小山くんとメーカーさんは3時で帰ってもらおうか」
「大丈夫ですか」とセントラル化学の山田が聞いた。
「俺と専務がいれば十分だよ」
「自分のところの商品の飾りつけは終いるんでしょう」と小山が聞いた。
「あと値段付けするだけです」と房総産業の松下が言った。
「だったら値段付が終わったら帰ってください」
「分かりました」
「それで専務と小山くんとで手直しをしてください」
――OK――
「お前は・・・」
「俺は特売に支度をするよ」
「商品は来ているのか」
「確かバックヤードに来ていたよ」
「全部揃っているの」
「大丈夫だったよ」
「それなら明日中に終わるなぁ」

午後からも勢いが付く位に腹も落ち着き食後のコーヒーを頼んだ。
「マスターコーヒーをアメリカンでお願いします」と小山が注文した。
「俺も同じく」
「僕もです」
「僕も」
「オレもアメリカカンで」と全員で注文した。
マスターとウエイトレス役の奥さんが顔を見合わせた。
・・・what?・・・
「あのぉ… アメリカン て なんですか 」
「この辺ではまだ無いよ」と私が言った。
「そうだなぁ~」と小山が言った。
「奥さん。いつものコーヒーを水で薄めれば良いですよ」と教えて上げた。
――なるほどぉ. ――
***◆◆◆***
埼玉県のホームセンターサンライトの新規オープンでは現地集合だった。
国道を挟んだ店の前の喫茶店に8時にメーカーを入れて予定通り10人全員揃った。
朝飯を抜いてきたのでモーニングサービスを注文した。
トーストとバター・ジャムに目玉焼きが出て来た。
「ところで目玉焼きはソースをかけて食べる?それとも醤油をかける」と相川が聞いた。
「俺はソースだな」と近藤が言った。
「おれは醤油だよ」と本木が言った。
「僕も醤油」と小山が手を挙げた。
「俺はソースだなぁ~」とハゲ高が言った。
二手に分かれて議論が始まった。
議論が伯仲して1時間経っても結論が出なかった。
「9時過ぎたな」と近藤が言った。
搬入の時間が来たので、私が決着を付ける事にした。
「キャベツはソースをかけて食べるから、目玉焼きはソースをかけて食べるでしょう」
と結論づけた。
「中さんは目玉焼きのことよりも、キャベツの心配していたんですねぇ」
とヘルプに来たメーカーの森本さんに発想の違いを指摘された。
「食後の一服は旨いなぁ~」と天井に向け煙を履いて小山くんが言った。
“フゥ~”
・・・まぃぅ~♪・・・
「そうかい」
「ストレスが“ス~”と消えていくんですよ」
「俺んちは誰もタバコは吸わないから分からないけど、家で怒られないか」
「そうなんですよ」
「やっぱりなぁ」
「子供が出来てから奥さんにタバコは吸わないで。吸いたければ外で吸ってよ。
と怒られるけど、中々タバコを辞められないよ」
「小指を立てる奴では我慢ができないの」
「それも試してみたけれど、何かが物足りないのですよ」
「ヘビースモーになると簡単な事ではないのかなぁ」
「奥さんに怒られるから、もう1度チャレンジしてみようかとも思っているんですけどね」
「それなら俺も一緒に禁煙するよ」
「よし。再挑戦してみるかなぁ」
「じゃぁ~ 今からねぇ」
「いいですよ」

一週間経った。
「俺は止めましたよ」
「ダメだった。5日過ぎると禁断症状が出てきて手が震えて来てイライラして来るんですよ」
「やっぱりヤメられないのかぁ~」
「かなり頑張ったんですけどねぇ~」
「意気地がねぇなぁ」
「チュウさんは元々吸わないからいつでもやめられるんだよ」
「しょうがないからさぁ。お茶の出がらしを乾かしてキセルで吸えばいいじゃない」
「どんな味がするんだろうねぇ」
「やった事がないからわかんないなぁ」
「やはりお茶の味だよなぁ」と結論づけた。
酒の勢いを保ち、午後の搬入を開始した。
******

3時頃で商品飾り付けから特売の陳列まで目星が付いた。
「こんなもんでいいだろう」と私が言った。
「値段付けは終わったのか」と専務が言った。
「終わったよ。後は手直しだけだよ」
「それなら俺とお前だけ残ってみんなは帰ってもらっていいな」
「そうだね」
「それじゃぁ、小山くん。先に帰って」
「そしたらメーカーさんたちも帰っていいよねぇ」
「自社商品の値段付けまで終わっているからいいよ」
「それなら松下さん帰ろうか」
「チューさん。シートカバーの実演はどうする」と房総産業の松下が聞いた。
「押し詰まった暮れのオープンだから、年明けにやるよ」
「それならフリーサイズのシートカバーだけ平台に山済みにしておけばいいね」
「いいよ」
「僕たちもかえりますね」とセントラル化学の山田が言った。
「うん。そうして」
「大村専務。お先に失礼致します」
「ありがとう。ご苦労様でした」
「タイヤチェーンは持っている」と私が聞いた。
「あぁ。積んでないなぁ~」
「雲行きが怪しくなって来たから、雪が降らないうちに早く帰った方がいいよ」
「よしぃ~ 早いうちに碓氷峠を越すか」
「それがいいよ」
3時にヘルプ隊は東京に帰る事に成った。
「ご苦労様でした。気をつけてね」
「よろしくお願いします」
人質役で私と専務が居残った。
「中。チョット休憩しようか」
「また、休憩すんの」
「ある程度目処が付いたし、泊まりだから慌てることもないよ」
「何を言ってんだよ。タバコばかり吸っていて,ほとんど仕事をしていないじゃないか」
「ダメなんだよなぁ~ 10分も働くと“モク”が切れて息苦しくなるんだよ」
「しょうがねぇなぁ~」
――バーフックと商品を置いて外に出た。
朝から快晴だった空が4時頃には北アルプスから黒雲が降りてきた。
私たちの頭の上が暗くなり街まで黒い雲が低く垂れ込んできた。
「やはり雲行きが怪しくなったなぁ」と空を見上げた。
「この分だと雨では無く雪になるかもしれないな」と大村専務が言った。
―― よし――
「降る前に片付けるか」
「そうだね」
4時前に思った通りに雪が降り出して来た。
「どう」と宮野課長がきた。
「毎度」
「終わりそう」
「明日で終わりますよ」
「そう」
「泊まりの手続きはしてあるんでしょ」
「大丈夫ですよ。専務こんなもんでいいでしょう」
「そうだなぁ』
「中さん。この分だと雪は積もりますよ」
――やはり・・・ですか――