超高機動銀河恋愛黙示録モロッソスギャラクシー

美少年刑務所の名物所長チャキオと
小悪魔ボディの見習い天使アヴダビが激突する
モロッソスみそっみそっ創作宇宙

僕たちの青春シリーズ ジョギング先生 第二十話 (チャキオ)

2007-11-26 22:31:47 | ジョギング先生
 第二十話 「セイント☆SAY! YAH!」(前編)

 僕は今日、たまたま聖(せいんと)と下校をしていた。どうしてだろう。竹豊はお昼の時間に昼寝しに帰ったっきり、戻ってこなかった。いつも一緒に帰っている洋一郎之介も妖精を追いかけて行ったっきり戻ってこなかった。最初は基次と鼻三郎と四人で帰ってたんだ。でも、基次と鼻三郎は反対方向だったからね。僕と聖が二人っきりになってしまうはめになったんだ。じゃないと、僕が聖なんかと一緒に帰るかよ! それは、とりあえず力説しといたから、いいとして、その途中の電車の中でのことだった。
「んもう。本当に暑いわね~。いやんなっちゃう!」
 聖は汗っかきだから、鞄からレースのハンケチーフを出して汗をぬぐおうと出した時、一緒になんかヒラリと落ちたのだ。僕が「あ!」と思ったけど、聖の為に腰を曲げるのが、おっくうだったので、見て見ぬフリをした。聖のヤツ、早く気づけよ!
「すみません。これ、落としましたよ」
 良い人がいたもんだ。僕はひとまずホッとした。
「あら。ありがとうございま……」
 聖の動きが固まった。
「猟(りょう)ちゃん!?」
「聖!」
 あれあれ? 知り合いかな? そこにいたのは、なかなかどうしてイケメンの男の子だった。(竹豊と僕ほどではないけどね)

 いつの間にか河原。
 話をする時は河原に限るね。っておいっ! 何で僕まで同席してんだよ。関係ないじゃないか……。
「帰らないで! お願いよ~。アタシ、猟ちゃんに女になったこと、伝えてないのよ。アタシが女に戻ろうとしていたら、せっついて教えてちょうだい!」
「えーーーーっ! 何でだよ~。有りのままを猟ちゃんに見せたら良いじゃないかよ~」
 僕はブーたれた。でも、聖いわく。
「猟ちゃんとアタシは空手仲間だったの。昔は二人で切磋琢磨したものよ。まあ、アタシが十中八九勝ってたけどね。それはさて置き、猟ちゃんはアタシの男らしさに憧れを抱いていたのよ。だから、アタシ、猟ちゃんを裏切りたくない。そして、あわよくば猟ちゃんとお付き合いをしたいのよ」
 そ……それって……騙しのテクなんじゃ? とは思ったけど、聖が猟ちゃんとお付き合いをしてくれたら、竹豊が悪の道に進まないでいてくれるかもしれない。そして、あわよくば僕が竹豊とランデブー。ウフフ。てなことで、僕は聖への協力を誓った。必ず僕が猟ちゃんとつき合わせてあげるからね。

「聖、元気だった? 悪漢高校に通ってるんだな。さすが聖は男らしいよ!」
「あら、そう?」
 あっ! いきなり女言葉をっ! もう、ホントにバカなんだから! 僕は慌てて、聖をせっついた。
「あ、いや。そうそう。俺、悪漢高校行ったんだ。バリバリ不良どもと日夜戦ってんだぜ!」
 それを聞いた猟ちゃんは、嬉しそうに笑ってた。猟ちゃん、本当に聖に憧れてんだね。
「すげえな。聖は……。俺なんか小学校以来、空手なんかやってねえよ。辞めちゃったんだ。だから、未だに強くて男らしい聖って、やっぱカッコいいよ」
 あら? 猟ちゃんも意外と好感触なんじゃない? これは押せる!と僕が確信した矢先……
「いやっだぁ! 猟ちゃんったら~」
 パァンと一発、手を叩いてから、口元に寄せるその仕草。完全に一幸さんがやるアレだ。バカッ! 本当にバカ……。どうすんだよ! 猟ちゃん、固まってるじゃん! 僕にすがるような聖の目……。とりあえず、誤魔化さねば。今の爆発を即座に沈下させなければ……。
「矢だっ! ぃ矢っだよ、猟ちゃん! 見て見て!」
 良かった……。僕のカバンに入っていた吹き矢練習用の矢が、こんな時に役に立つとは……。
「あ……。本当だ。矢だね……」
 ホッ。とりあえず、煙に巻くことはできた。その後も、僕はひとしきり聖のオネエ言葉やオネエ仕草を監視し続けた。そんな努力の甲斐もあって、なんとか猟ちゃんとデート(といっても、単に再び遊ぶだけ)の約束を取り付けることができた。
 さて、デートを成功させねば……猟ちゃんと聖のウェディングベルの第一章は始まらないわけだ……。

 次の日。僕が教室で乙女の秘密ノートに、聖デート計画を練っていると、上からバカ1号(洋一郎之介)の声がした。
「わおっ! ナイス計画! 俺も手伝いたいぜぃえーーーーい!」
 ちょっ……そんなデカイ声で叫んだら、バカが集まるよぉ……。
「なになに?」
「どうしたんダス?」
 ゾロゾロと例のバカ2、3号(基次と鼻三郎)+スーパーキュートボーイ竹豊が集まってきた。やっぱね。竹豊以外は帰ってくれ!
 皆で集まって聖のデート作戦会議が開かれる。なぜかそこにジョギング先生も参加しているのが不思議だった。
「まずは、どこに行くか、だよ!」
 とりあえず、僕が議長になることにした。だって、コイツらに任せてたら進行しないじゃん。
「もちろん、競技場でジョギングだろう。青少年は走らなきゃ損だぞ!」
 ジョギ先案、却下!
「今ね、『世界の不思議と呪術の世界展』ってのをやってるよ。そこなんかどうだろう?」
 洋一郎之介案、却下!
 だいたい、世界って言葉が二回も出てきて気持ち悪いよ。語呂が悪いし……。
「はい! 『俺リサイタル』! 午後13時開演!」
 基次案、却下!
 何だよ! 『俺リサイタル』って……。要はお前のリサイタルってことだろ? リサイタルなんて、あのオレンジ色の服着た暴れGしかやらないと思ってたけど、ここにも自分で開催しようとするヤツがいただなんて……。でも、どういう訳か、僕たちは基次手作りチケットを渡された。誰が行くかよ! バカッ!
「はい! 僕の家のプールダス! 気持ち良いダスよ!」
 鼻三郎案、却下!
 前にも言ったが、お前のプールに一緒に入ってる鯉を何とかしろ! あと、浮いた枯れ葉とか、アメンボとかもな。
「はい! 普通に遊園地とか行きたくね?」
 キャーッ! 行きます、行きます! 僕、竹豊となら、どこでも付いて行きます! あのネズミのお屋敷が良いなぁ。それでさ、あのお城の前で花火がパンパーンッとなりながらさ、ロマンチックが止まらないって感じにウフフ……ウフフフ……。
 うっかり竹豊の発言から妄想に発展していたら、どうやら遊園地に決まっていたらしい。しかもネズミのお屋敷じゃなくて、サビテックというお化け屋敷とゴーカートくらいしか目玉のない悲しい遊園地に決定されていた。誰! こんなセンス無い遊園地を選んだおバカさんは!
「俺、サビテックのキャラクターのサビエル3兄弟グッズが欲しかったんだ」
 って……たたた……竹豊――――っ! お前かよっ! ううん。いいんだ。僕もサビエル3兄弟グッズが欲しい!
「アタシも! アタシもよ! 竹豊君! アタシ……竹豊君とおソロのストラップが欲しい!」
 キィーーーーーッ! お前は猟ちゃんがいんだろうがっ!
「聖は猟ちゃん! いいっ? 乗り物に乗る時は、ちゃんと二人がペアになるんだよ! 分かってるね!」
「ええ……ええ、もちろんよ。でも、アタシ、竹豊君でも……」
「キィーーーーッ! キイーーーーッ! キエーーーーッ!」
 僕はいつにも増して興奮してしまった。そしてまた、酸欠に陥っていた。気づいた時には、作戦はほとんど決定していたみたいで、皆、帰り支度してやがる。超不安……。絶対的に失敗する気がする……。
 でも、とりあえず竹豊と遊園地デートできるのだ。ムフ……ムフフ……。何着て行こうかな? ルンルン♪

 前日、僕は散々悩みすぎたせいで、当日、寝過ごした。遅刻だぁ!
 慌てて飛び出したから、パジャマでお邪魔パート2になってしまった。着替え忘れちゃったのだ。エヘヘ……。
 待ち合わせ場所に行くと、すでに皆、集合していた。皆の私服、初めて見たけど……こりゃヒドイ……。
 あ、もちろん、ミラクルキュートボーイである竹豊ちゃんは何着ても似合うよ。うん。それに、普通のダメージジーンズにチェックのシャツなんか巻いてさ、ウットリするほどカッコいいよ。その、カマボコの絵の付いたTシャツ以外は……。何? このシャツ……。どこで手に入れたの? 僕もゲットすることを心に誓った。
 さて、まあ洋一郎之介もトーベヤンソンの顔がプリントされているTシャツ以外はおかしなところはない。でも、少しばかり色落ちしている。お気に入りなのかな……。
 鼻三郎は……どうしてスーツなのかな? コイツ、制服以外でスーツしか見たことないんだけど。金持ちアピールかね?
 基次は……ガーン! ニッカポッカだよねぇ、そのズボン。私服で着んな! もう、バカばっかだよ……。
 問題の聖は……。うわーーーーっ! バカッ! アイツ、デートだと思って勝負服なんだろうけど、花柄ワンピースじゃん! もうっ! 何やってんだよ! 猟ちゃんが見たら一発でオカマってバレんじゃん! 忘れていやがったな、コイツ!
「いっけなーーーーい! どうしよう! アタシったら……」
 オタオタする聖。今から洋服なんて……どうやって調達したら……。
「遅れてすまない! ヒヨコたち!」
 あーーーーっ! ジョギング先生が来た! ちょうどいいっ!
「先生、脱いで脱いで!」
 僕たちはジョギ先の恐らく一張羅である金色のジャージを引っ剥がした。先生はいつものランニングと短パン姿になった。まあ、どうせいつも通りだから、別にいいだろう。
「聖! これ、着て!」
 僕は聖に金色ジャージを渡して、着替えさせた。ちょうどその時、猟ちゃんが現れた。化粧が若干落としきれなかったけど、何とか誤魔化せるだろう。
「聖! ゴメン! 遅れて……って、あれ? ずいぶんたくさんいるんだね……」
 猟ちゃんは、ちょっとビビってた。考えてみれば、悪漢高校生がこんなに勢ぞろいしてたら、ビックリするよね。
「ああ……この子たちは、アタシ……俺の子分どもだ!」
 なんかヤな感じだけど、この際目をつぶろう。けど、ちょっとムッとくるね。
「すげぇな。聖! そっちのオジサンも聖の子分なの? マジでビックリ!」
「ハハハ……。ヒヨコよ。今日はたくさん遊びなさいよ」
 ジョギ先、引率者気分なのかな? もしかして遠足かなんかと勘違いしてんじゃないだろうか。
「さてさて、では参ろうか?」
 ちょっと! ジョギ先! なんで黄門様気取りなんだよ! 子分が偉そうにすんな! やっぱりジョギ先は今回の趣旨を分かっていない。どうしよう……。このままでは聖と猟ちゃんのラブラブ大作戦どころか、僕と竹豊の初めての遊園地デートもおじゃんになるよ。聖も困ったようにこっちをチラチラ見るし……。
 とりあえず、ジェットコースターに押し込もう。いかにジョギ先とはいえ、あんがいアナログ攻撃(ここでいうジェットコースタね)には弱いかもしれない。さあ、グロッキーになってちょうだい!
 なーんて、僕ったらハリキリ過ぎて、何故かジョギ先の隣に座っていた。あれ? ちょっと! 僕の隣は竹豊でしょーが! それで……竹豊は? もう多分、皆予想してたと思うけど、乗る前から酔ってグロッキーになっている鼻三郎の隣だった。本当に優しいんだから……もう……。
「ううう……。ボクはダメダス~! 死ぬんダス~~~~!」
「死なないよ! これくらいじゃ。大丈夫だって!」
 ブルブル震える鼻三郎の手を優しくポンポンと叩いてる……。ギィーーーーッ! ぐやじ~~~~! 僕の隣のオジサンは元気いっぱいだ。コイツ、ランニングと短パンなんだよ。早く捕まればいいのに。
 僕がそんなことを考えていたら、カタンカタンとジェットコースターは上昇し始めた。そこで、僕は大切なことに気づいたのだ。何かって? それは……僕はジェットコースターが大キライだったのさ。だって……コワイじゃん? あんなの乗るヤツの気が知れないよ、なんていつも思ってた。
「ギャーーーーッ! ののの……乗ってるーーーーっ!」
 僕ってば、なんてオッチョコチョイなんだろうね。聖のことも、猟ちゃんのことも、そしてジョギ先のことも、どうだってよかったんだ……。ジェットコースターに乗ることより他に重要なことなんて、何ひとつ無い!
「おおおお……降ろしてーーーーっ!」
 しかし、動き始めたジェットコースターが僕の叫び声で止まるはずもなく、僕はフリーフォールの餌食になり、気を失った。

「大丈夫?」
 あれ? 天の声が聞こえる……。ジーザス! 神様ってこんな若くて可愛い声をしてたんだね。僕のイメージ映像では、泉からもわーっと出てくるヨボヨボな感じだったんだけど……。ああ、かんわい~。神様ってこんなにキュートボーイだったんだぁ……て
「たたた……竹豊――――っ!」
「うわぁ! ビックリした~!」
 僕のバカでかい叫び声はサビテック中に聞こえた感じだ。だって……だって……竹豊の胸の中……いや、腕の中? もう、どっちでもいいけど、サイコーにハッピーなシチュエーションだよ! もうアンビリーバボー!
 ハッ! 今しかない! まさに絶好の驚くべき素敵なことシチュエーションってヤツだ! 言ってやる! 言ってやるのだ! 竹豊ちゃん、トゥギャザーしようぜ!
「た……」
「あーーーーっ! サビエル3兄弟だーーーーっ!」
 フッ。今回はオカマの妨害も、洋一郎之介の妖精騒ぎでもない。竹豊自身に妨害された……。言うなれば、サビテックのキャラクター、サビエル3兄弟の着ぐるみに邪魔されたのかもしれない。
 竹豊は僕をほったらかして、サビエル3兄弟の元へ駆けて行った。は……速~い……。ねえ、竹豊。あんなツルピカキャラのどこがいったいお気に入りなの? 詳しく聞かせてよ……。未だに僕には竹豊に関して知らないことだらけだ。
「ヒヨコよ、大丈夫か?」
 僕は竹豊に代わって現れたジョギ先の膝にムリヤリ頭を乗せられた。ううん……ジョギ先の膝枕……。気持ち悪い……。だって、ジョギ先って、今、短パンだから……なんか嫌だ。こんなの甘んじて受け続けてたら逆に死んじまうぜーーーーっ! 僕は必死で立ち上がった。あと何分か遅かったら泡吹いて死ぬトコだったよ。
 もう! いい加減、みんな戻って来い! サビエル3兄弟を囲んで、子供に混ざってる奴らは子供よりよっぽど子供のようだった。ちくしょう……。サビエル3兄弟と一緒に写真撮ってやがる……。いいなぁ。竹豊、嬉しそう。かわい~。ああ、ちっくしょう! サビエル次男、竹豊に抱きついたりなんかして……何だよ! ズルイよ!
 その時、僕はあってはならないシーンを見た。サビエル次男のヤツ、カポッて頭を取って、竹豊のキュートハンドにチュって……。えーーーーっ! 頭……頭、取ったよな……今……。なんでわざわざ、頭を取って、直でするんだよ! けっこうしっかりした、ヒゲの男性が見えた気がする。一瞬だったけど。ギィィーーーーッ! 竹豊があんなオッサンに汚されたーーーーっ! ちっくしょう……。いいな、ズルイ……。
 サビエル……この恨み、覚えとけっ! 去っていくサビエル3兄弟の後姿に、僕はありったけの念を送った。その頃には、僕もすっかり元気になっていた。

「次は何、乗る?」
 竹豊はサビテックのパンフ片手にウキウキしている。やっぱり竹豊は単にサビテックに行きたかっただけのようだ。とりあえず、猟ちゃんと聖を結び付けなければ、僕と竹豊がなかなかランデブーできないじゃないかっ!
 ここは、メルヘンチックな乙女の代名詞であるメリーゴーラウンドなんて、どうかなぁ? 猟ちゃんと聖は勝手にやってくれればいいとして、僕と竹豊が一緒の馬に乗って……ウフフフ……。まるで王子と姫なんじゃない? キャッ!
 僕が1人でウフウフと妄想に浸っている間に、奴らは勝手に進んでいた。こ……こ……ここは……もしや……。
 なんかねぇ、向こうに嫌な感じに真っ白い顔して、乱れ髪で手を前に出してる女性っぽい看板が見えるのだよ……。も……もしや……ま……まさか……嘘だよねぇ? 僕がお化けとか、幽霊とか、いったんもめんとか、ぬらりひょんとかが苦手だって、前に言わなかったっけ? ヒョロ~なんて雰囲気出す笛の音とか流しやがって……ちょっ……待って……おいってば……。そうこうしている間に、奴らはしっかりと進んでいた。
「お化けだけは……お化け屋敷だけは……ギョエーーーーーーーッ!!!!!」

 (つ・づ・く)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妖精大百科フェアリー・マンダーラ54 (アヴダビ)

2007-11-19 19:57:37 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 54匹目「動物との絆を大切にしすぎて一体化してしまった妖精 シャチハタイサム」

 さて、今日のフェアリー・マンダーラは!
「ああー、やっぱりコブタのピヨトルは可愛いなあ!」
 洋一郎之介は今日も朝から大好きなアニメ「くまのプーシキン」を観ています。そのアニメの中でも特にお気に入りなキャラが、コブタのピヨトルなのです(ピヨトルの口癖は「どどど、どうしよ~」です)。
「あ~、俺もピヨトルみたいなコブタ飼いたいなあ。やっぱコブタって、いつも困ってて弱っちくて、胴体はミミズみたいに縞々なんだろうなあ。本当に憎めないよなあ。でも……はあ」
 洋一郎之介は重いため息をつきました。
 実は昨日、お母さんに「コブタ飼っていい?」と聞いたのでした。答えは「ピーマンを食べられるようになったらいいわよ」でした。
「くっそ~! 俺がピーマンを憎しみ抜いている事を知ってて! うおおおおお!」
 洋一郎之介は思い出すだに悔しさがこみ上げてきて、テレビもつけっ放しのまま、外に飛び出しました。

「はあはあ……。ここは?」
 夢中で走って、気がつけばそこは、とある神社の中でした。
「神社……そうだ! 神様にコブタをお願いしよっと!」
 途端にウキウキ気分になった洋一郎之介は、まずは手を清めるために手水舎へスキップして行きました。
 そして石で出来た水盤を前に、ひしゃくを手に取ったその時!
 ザバーン!
「ぎゃあああ!」
 突然、水盤の中から水しぶきを上げて、笑顔の爽やかなオールバックの男性が出現したのです。
 ザババババー!
 男性はロケットのように垂直に、水面から浮かび上がってきたので、オールバック、黒いウエットスーツ(胸にはSEAと書いてあります)、そして最後に足元を咥えるシャチの頭が、次々に洋一郎之介の目の前に現れることになりました。
「ひやああああ」
 あまりのことに洋一郎之介はひっくり返って、飛び散った水でびしょ濡れになってしまいました(ズボンも濡れた事で生理的な失態を誤魔化す事が出来たのが不幸中の幸いだった、と後に本人が語っています)。
「やあこんにちは。僕はシャチハタイサム。動物との絆を大切にしすぎて一体化してしまった妖精だよ。よろしくどうぞ」
 男性(シャチハタイサムだね!)はかなり高い位置から挨拶しました。
「今日は神社にどんなお願いをしにきたんだい?」
「ええと……俺……コブタが飼いたくて……」
「動物かい!? そいつはいいね! 動物はいいよ……。心を豊かにしてくれる」
 しかし洋一郎之介は、目の前の水盤から頭だけ出して、モグモグしながらシャチハタイサムの足を咥えているシャチから目を離せなくて、彼の話をほとんど聞いていませんでした。シャチの口元から時々赤い血がピュピュッと飛んで、洋一郎之介の顔にかかりました。
「君も愛情を持ち続ければ、僕みたいになれるよ! 頑張って!」
 いつの間にか、シャチハタイサムの頬はこけ、唇は紫色になっていました。
「え、あ、うん……」
 シャチハタイサムは言いたいことを全部言ってしまうと、再び水しぶきを上げて、水盤の中へ還って行きました。

 その後、家に帰ってから、ちょうど教育テレビでやっていた動物番組で、よだれを垂らしまくってフゴフゴ言ってる本物の子豚の映像を見た洋一郎之介は、すっかりコブタへの興味を無くしてしまったといいます。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする