超高機動銀河恋愛黙示録モロッソスギャラクシー

美少年刑務所の名物所長チャキオと
小悪魔ボディの見習い天使アヴダビが激突する
モロッソスみそっみそっ創作宇宙

学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第十二部」

2007-08-05 00:00:16 | メランコリー・譲一
アヴダビ: ねえ、そろそろ譲一でもやらないかい?
チャキオ: やろうやろう
アヴダビ: フワッフワッホー!
チャキオ: ぽへぽへぽー
アヴダビ: ぴきゅーー くわば!(ボン!)
チャキオ: げろっふ
アヴダビ: メランコリー譲一 第十二部 新宇宙編
チャキオ: オラの胃袋は宇宙だ!

ナレーション(アヴダビ): 電話ボックスの中で途方にくれる譲一。パトカーのサイレンがだんだんと近づいてきます……。どうぞ
譲一(チャキオ): 「ヤバイなあ。どうしよう……。そうだ、こんな時は……電話だ、電話。警察に電話だ!」
ナレーション: 「はい、こちらは宇宙警察です。どうしました?」
譲一: 「あの、変な人たちが追ってくるんです。どうすればいいのか……」
ナレーション: 「落ち着いて下さい! ええと、そこの電話ボックスなら、今ちょうど警官が向かっていますので、保護させます」
譲一: 「お願いします。ここで待ってればいいんですね?」
ナレーション: 「そうです」 と、同時に、キキー! パトカーが到着しました。中からは屈強な警官が二人躍り出ました。どうぞ
譲一: 「助けてください! 今、変なヤツが!」
ナレーション: 「変な奴はお前だ!」 警官が銃を構えました。「そんなハレンチな格好でうろちょろしやがって……。たまんねえぜ」 どうぞ
譲一: 「あっあひいっ! 俺じゃないんです! 俺はこんな格好にさせられただけでっ!」
ナレーション: 「おいおい、コイツ何か言ってるぜ?」 「くくくっ、武器を持っているといけねえ。身体検査してやりな」 警官(屈強な黒人です)はガムをくちゃくちゃ噛みながら、近づいてきます。どうぞ
譲一: 「わあぁっ! やめてぇ! 俺は、確かに可愛いよ。それは分かってるけど、でも、そういうの……やだよ!」
ナレーション: 「うるせえ! 俺様がじきじきにテメエのクソいまいましいホットパンツの中に凶悪な武器が隠されてねえか調べてやるって言ってんだよ!」 黒人警官は飛び掛ってきました。どうぞ
譲一: 「うわああーーーーっ! 助けてーーーーっ! 誰かあぁーーー!」
ナレーション: 「待ちなさい!」 どこからともなく声がしました。「誰だ!?」 振り向く警官。と、その顔が凍りつきました。「あ、あなた様は、新皇帝譲一様……」 土下座する警官二人。現れたのは、本来の譲一だったのです。どうぞ
譲一: 「あれ? この美男子はどちら様?」
ナレーション: 「ぼっちゃん……。お忘れになるのも無理はありません。私ですじゃ、ヨハネス小向です」 どうぞ
譲一: 「え? あれ? ヨハネス? ゴメン、ちょっと思い出せない……」
ナレーション: 本来の譲一(ヨハネス)は寂しそうな顔をしました。それから、土下座している警官に何か囁きかけ、お菓子を握らせると、警官達は頭を下げて帰っていきました。どうぞ
譲一: 「あ! お菓子、俺にも俺にも!」
ナレーション: 犬のようにハァハァ言う譲一にとまどいながらも、本来の譲一(ヨハネス)はアンドーナツを渡しました。どうぞ
譲一: 「ありがとー! あれ……。このドーナツ……」
ナレーション: 「え? (ドキリ)」 どうぞ
譲一: 「ヨハネス特製の……アンコの代わりに、味噌が塗りたくられてるヘンテコドーナツじゃない?」
ナレーション: 「…………」 ヨハネスはただじっと立ち尽くしています。どうぞ
譲一: 「ヨハネス? もしかして……ヨハネスなの!?」
ナレーション: 「ぼ、ぼっちゃん、やっと思い出して……」 その時です。「譲一くーん!」 パンチョスが走ってきました。「さっき、パトカーのサイレンが聞こえたから。きっと譲一くんが何かやらかしたかと思って……」 どうぞ
譲一: 「パンチョス! パンチョス……。心配して……来てくれたんだね……グスッ」
ナレーション: 「ええ! 大丈夫? 何もされなかった? は! あ、あなた様は……!」 パンチョスは本来の譲一(ヨハネス)に気付くと、凍りつきました。どうぞ
譲一: 「パンチョス、ヨハネスの事、知ってるの?」
ナレーション: 「知らない人なんているはずないわ。この国の支配者ですもの……」 いつしかパンチョスは汗だくになっていました。ヨハネスと見つめあっています。二人の間に、火花が散っているのです。どうぞ
譲一: 「ちょっとちょっと、二人ともやめてよ! ケンカは良くないよ。穏便に行こうぜ!」
ナレーション: しかし譲一の言葉は耳に入らないようです。にらみ合う二人。一触即発という感じです。どうぞ
譲一: 「もう! 二人とも、離れろよ! ブレイクブレイク! パンチョスは右! ヨハネスは左! そしてファイッ!」
ナレーション: 譲一に煽られて、二人のバトルが始まりました! 応酬するパンチ&キック! 物凄い戦いです。これはどちらも相手を殺す気でやっているようです。どうぞ
譲一: 「やべえっ。どうしよう……。というよりも、あれ、俺の可愛い顔じゃない? ボコボコになるのは見るに耐えないっす。ということで、二人ともストーーーーップ!!!!」
ナレーション: 止めるんだね? ではクイズ判定に入ります! 用意はオッケー?
譲一: オッケー
ナレーション: 問題です。渋谷で待ち合わせしている若者は、意外とホームレスが近くにいても平気です。なぜでしょう?
譲一: 「俺とお前はマジでマブダチだと思ってる。なんつーの? ソウルメイトってヤツ? 今に俺らもソッチの世界に行くからさ!」みたいな感じ?
ナレーション: おしい!
譲一: じゃあねえ
譲一: 渋谷の若者は、臭いを感じる機能を持たない新人類なんだ。だから、臭い人がいても、ネイティブかなんかだと思ってるんじゃないかな?
ナレーション: 物凄くおしいー! 次、ラストチャンスです。
譲一: じゃあ、
譲一: お父さんがいるんだ! 実は彼らの仲間の中の、誰かのお父さんなんだ。悪い奴らとつるんでないか、心配で見に来てるんだ! そうでしょ?
ナレーション: 正解!!
譲一: ふひー。
ナレーション: 「ぼっちゃん……」 身をていして必死に二人を止める譲一に、本来の譲一(ヨハネス)の目に涙が溢れました。「ぼっちゃん……良い人を見つけましたなあ」 ヨハネスがパンチョスを見ると、パンチョスがうなづきました。どうぞ
譲一: 「ヨハネス……。俺、パンチョスと暮らしていきたい……。俺、パンチョスがいないと……ダメなんだ……」
ナレーション: 「……。ぼっちゃんの幸せは、ヨハネスの幸せでございます。どうか、どうかいつまでも、お幸せに……!」 ヨハネスは涙を拭くと、高級外車に飛び乗り、走り去りました。どうぞ
譲一: 「パンチョス……俺、さっき言いたかった事……ちゃんと言ってもいい?」
ナレーション: 「ええ……。なあに?」 パンチョスは譲一の手を握り締めました。どうぞ
譲一: 「パンチョス……俺と一緒に……幸せになってください!」
ナレーション: 「こんな……こんな私で……ぐすっ……」 後は言葉になりませんでした。身を震わせて男泣きに泣くパンチョスは、なぜだかとても、しおらしいのでした。どうぞ
譲一: 「パンチョス……。イチゴのケーキ、一緒に食べに行こう! さ、お手をどうぞ」
ナレーション: 「はい……。喜んで」 パンチョスは譲一とそっと手を重ねました。「幸せにして下さいね……」 どうぞ
譲一: 「うん……。パンチョスも……俺を幸せにしてね……」
ナレーション: パンチョスは心からの笑顔で、答えるのでした。

ナレーション: 第十二部・完
譲一: えーーーーっ!?
ナレーション: そしてメランコリー譲一・完
譲一: うわあああーーーー

長い間ご愛読ありがとうございました。
次回の作品にご期待下さい。
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第十一部」

2007-07-22 00:54:10 | メランコリー・譲一
チャキオ: 譲一やろうぜ!譲一!
アヴダビ: ゲロッフ
チャキオ: ちょっとぉ
アヴダビ: ごめんごめん。メランコリー譲一 第十一部 はじけろ青春編
 
譲一(チャキオ): 鼻がプープーするよ
ナレーション(アヴダビ): 「あらあら、譲一君、不思議な寝言ね……」夢の中、なにやら懐かしい声がします……。どうぞ
譲一: 「うええ……。パンチョス……」
ナレーション: 「どうしたの? 怖い夢でも見たの? おお、可哀想に」 目を覚ますと、ふかふかベッドの中、パンチョス先生の逞しい腕に抱かれていました。もう朝です。どうぞ
譲一: 「パンチョスぅ~。怖かったよぉ……。俺の……俺の鼻が……ぷ」
ナレーション: 「鼻? 鼻がどうしたの? 大丈夫、ちゃんとついてるわ」 パンチョスは優しく、譲一の鼻をツンと押しました。どうぞ
譲一: 「えへへ。パンチョスって優しいね……。なんか照れるよ……」
ナレーション: 「まったく甘えん坊さんなんだから……。ほら、起きた起きた! おらあ!」 パンチョスは威勢よくヘッドスプリングで起き上がると、かけ布団を蹴り上げました。どうぞ
譲一: 「ひゃっ!やめてよ!」
ナレーション: パンチョスの寝汗をかいた体は、窓から差し込む朝日に、キラキラと宝石のように輝いていました。どうぞ
譲一: 「パンチョス! パンチョス、メチャクチャ綺麗だよ! なんかウットリするよ!」
ナレーション: 「こらあ! 生意気言ってるんじゃないぞ☆」 パンチョスはクルクルとターンしながらキッチンへ行ってしまいました。ガラガラと、コーンフレークを開ける音が聞こえます。どうぞ
譲一: 「なんだよ。パンチョスみたいな何の取り得もない男を褒めてやったってのにさ……。フレークは虎の絵が描いてあるのがいいなあ」
ナレーション: 譲一はもう一度ベッドに横になりました。あの日、この街に戻ってから、もう随分と経ってしまった……。譲一は静かに目を閉じました。どうぞ
譲一: 「色々あったよなあ……。あの時のパンチョスったら……ウフフ……フフフ……」
ナレーション: この、パンチョスの部屋で過ごした月日は、譲一にとってかけがえの無いものになっていました。どうぞ
譲一: 「ホントに面白いんだよ、パンチョスってさぁ。うへへ……うひゃっひゃっひゃ……。あ~、可笑しくってお腹よじれそう! ぷぷぷぷ~!」
ナレーション: 「なに笑ってるの~?」 キッチンからパンチョスが呼びかけてきます。どうぞ
譲一: 「あ、ごめんごめん。ちょっと昔のこと思い出しちゃって。ほら、パンチョスがさあ、屋根を修理してた時さぁ……」
ナレーション: 「ああ、あの、太陽光線で口ヒゲに火がついちゃった時のこと?」 どうぞ
譲一: 「そうそう。パンチョスったら、大慌てでさ。俺もビックリして、何故か持っていた爆竹を投げ込んじゃったじゃない?」
ナレーション: 「ふふ。もう、突然、顔面がパン! パパン! なんて破裂したもんだから、足を滑らせて、ね……」 どうぞ
譲一: 「パンチョスが落っこちていくとこ……何もできずに見ているだけで、歯がゆかったっけなあ……」
ナレーション: 「あの時の譲一君の、私を見下ろす顔が、憎くてねえ。墜落した後、急いで駆け上がって、あなたをコテンパンにしちゃったわね……。あの時のことを思い出すと、胸が痛むわ……」 どうぞ
譲一: 「ごめんごめん。あん時は俺も悪かったよ。パンチョスが落ちてく様がこれまたお腹がよじれそうに面白くってさ……。我慢したけど引き攣ってたんだね。パンチョスに殴られてる間、ちょっと反省したよ。けど、恨みの方が3割り増しって感じだったけどね」
ナレーション: 「でも、あの時のことがあったから、私達これまでうまくやってこれたと思わない?」 どうぞ
譲一: 「うん。そう思う。なんか、俺、今が一番幸せだよ」
ナレーション: 「そう言ってくれて、私も嬉しいわ。さてと、ご馳走様」 キッチンからは食器を洗う音が聞こえます。どうぞ
譲一: 「パンチョス……。ありがとう……」
ナレーション: 「いいのよ……私、私……ぐすん」 どうぞ
譲一: 「俺……俺……パンチョスの為に、ケーキ買ってくる! 話したいことがあるんだ!」
ナレーション: 「え、話したいことって……? 大事なこと? なら、私、今日はお勤めお休みしようかしら」 どうぞ
譲一: 「大事なことだよ! お祝いだよ! パンチョスはイチゴの乗ったケーキがいいよね?」
ナレーション: 「ええ、それ大好き! もう、知ってるくせに」 どうぞ
譲一: 「じゃあ、買ってくるね。すぐ帰ってくるから待ってて!」
ナレーション: 「あ、譲一君! そんな格好で! ……ああ、もう行っちゃった。ふふ……話って何かしら。ドキドキしてくる……」 どうぞ
譲一: 「あっ! イッケネ~! パンチョスのホットパンツのまま出てきちゃった! 恥ずかし~!」
ナレーション: それはプラネタリウムのように、さまざまな星座が描かれた素敵なホットパンツでした。どうぞ
譲一: 「ダメだ! 恥ずかしすぎる! どこかで着替えよう!」
ナレーション: ちょうどすぐそばに電話ボックスがあります。どうぞ
譲一: 「もしもし? 洋服ありますか? スーツとかおしゃれな感じのね」
ナレーション: 譲一はブツブツと独り言を言いながら電話ボックスに入りました。どうぞ
譲一: 「えっと……服屋、服屋……。呉服問屋トメ五郎。ここにしよう。電話してステキな服を持って来てもらおう!」
ナレーション: 「はい、まいどありがとうございます。呉服問屋トメ五郎です」 どうぞ
譲一: 「あのさあ、なんか俺サイズにピッタリな服を何点か持って来てくんないかな? ここにいるんだけど」
ナレーション: 「では、お客様のサイズを確認しますのでテレビ電話に切り替えますね。……きゃあ! 変態!」 どうぞ
譲一: 「変態って失礼じゃないですか!? こんな俺様のようなカッチョメンに対して!」
ナレーション: 「あんたみたいな変態、逮捕されるがいいのよ! ふふ……今通報してやったわ! あは、あははは!」 どうぞ
譲一: 「ちょっ! ちょっと! 待って! それ、困るし! だいたいちゃんと服は着てるよ! ちょっと短いってくらいで……」
ナレーション: しかし、もう電話は切れていました。受話器からは、ただ、ツーツーと空しい電子音が鳴るだけでした。そして、遠くからはサイレンが迫っていました……。
ナレーション: 第十一部・完
譲一: えーーーーーっ!
ナレーション: でも第十二部に続くよ
譲一: 良かったふ
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第十部」

2006-12-28 09:54:50 | メランコリー・譲一
アヴダビ: おまえばか!
チャキオ: ギャッ
アヴダビ: おでんの食べすぎで脳みそがポウしたんじゃないの?
チャキオ: へへへ。アレ、オイラの脳みそだったのかなあ?食べちゃったよ
アヴダビ: もう知らない! 譲一はじめるざんす!
チャキオ: ドスコイ!

ナレーション(アヴダビ): メランコリー譲一 第十部 粉雪編
譲一(チャキオ): 「こな~ゆき~~~~!」
ナレーション: アストロンの衝撃で気を失ってしまった譲一でしたが、自分の寝言に驚いて目を覚ましました。どうぞ
譲一: ンッガング!
ナレーション: 周りを見渡しても、ここはちょうど郊外の畑の中です。辺りには誰もいないようです。どうぞ
譲一: 「あ~。マジで体中が痛いよ。誰か~! 誰かいませんか~! っていないっつーの! ヘヘッ」
ナレーション: 疲労と空腹と衝撃の痛みから、譲一の脳は少し危険な状態でした。ヘラヘラしながら穴を抜け出し、取り合えず街を目指します。どうぞ
譲一: 「ヘヘッ。へヘヘッ。お腹すいたなあ……。へへへへ」
ナレーション: 住宅街を抜け、商店街へ向かう譲一。ここは確かに住み慣れた街です。ですが、なぜだか様子が違うような気がします。道行く人々もなぜか忙しなく、緊張しているようです。どうぞ
譲一: 「すみません。ご飯ありますか?」
ナレーション: 「な、なんだいアンタ! やぶからぼうに!」 声をかけられて驚いたホームレスは、慌てて汚れたタッパーをポケットに隠しました。どうぞ
譲一: 「あ! それ! 俺にくれるっていう気はありませんか? 俺、メチャクチャお腹すいちゃって……。じゅるり」
ナレーション: 「これは俺んだ! やるもんか! それに、俺んなんか取らなくたって、金には困ることないだろうが!」 その時です。通りを歩いていた人々が、歓声を上げて、同じ方向へ走り出しました。「わあ! 俺もこうしちゃおれん!」 ホームレスも後へ続きます。どうぞ
譲一: 「待って待って! 俺も連れてって! ちょっとオジサン! 置いてかないで~!」
ナレーション: ホームレスは人混みに紛れて見えなくなりました。もう、辺り一面人の海です。どうぞ
譲一: 「も~! 何だよなあ! あ、すみません。ご飯ありますか?」
ナレーション: 「うるせえ! どけ!」 突き飛ばされる譲一。と、誰かが、「いらっしゃったぞ!」 そう叫ぶと、辺りの人々が皆土下座をし始めました。どうぞ
譲一: 「何だろ? ねえ、何が起きてるの? 誰かいるの? スゴイ人? サインもらってもいいかなあ?」
ナレーション: 「バカ野郎! お前も土下座しねえか! 豚のエサにされちまうぞ!」 無理矢理頭を地面に擦り付けられる譲一。すると通りの向こうから、何かがやってくるのが目の端に見えてきました。どうぞ
譲一: 「なんだよ。なんだか偉そうだなあ……。俺、偉そうな人って嫌いだなあ……。人を犬みたいに扱いやがって……」
ナレーション: ブツクサ言う譲一。その間にも、それはゆっくりと近づいてきます。それは、二十人ほどの、フンドシ一丁の、美少年軍団でした。彼らは豪華なお御輿を担いでいるのでした。どうぞ
譲一: 「うわ~! フンドシだ~~~! 憧れちゃうよ。俺も締めたいなあ。フンドシってクラシックパンツっていうんだよ。知ってた?」
ナレーション: しかし、最早誰も譲一の言葉など聞いていません。「助子様! 助子様ー!」 民衆は狂ったように御輿を拝んだり、手を振ったりしています。どうぞ
譲一: 「助子!? え? マジで助子? 何故に? いったい何なの?」
ナレーション: 御輿の上の豪華な椅子には、確かに譲一の妹の助子が座っているのでした。彼女は民衆に手を振りながら、抱えたザルから500円玉をすくっては撒きすくっては撒きしています。民衆は喜び喚きながらばら撒かれた500円玉に群がっています。どうぞ
譲一: 「あ! お金だ! お金! 俺もゲッツゲッツ!」
ナレーション: 譲一も思わずお金に飛びつきました。しかし体力を消耗している譲一は、他の者に押されて、転がりながら御輿の前に飛び出してしまいました。どうぞ
譲一: 「わあっ! ちょっと~! 誰!? 今、押したの! ったくも~。バカバカ!」
ナレーション: 「まあそんなに痩せて、可哀想に……」 御輿の上から助子が優しく微笑みました。どうぞ
譲一: 「おい! 助子! 俺だよ。お兄ちゃんだよ。ハイディホ~!」
ナレーション: しかし今のあなたは譲一本来の姿をしていません。しかも、痩せ過ぎて筋肉の落ちている今はマッチョ松下の面影さえありません。助子に分かるはずないのです。「これで、何か温かい物でもお食べなさい」 助子は御輿の上から500円玉を降りかけてきました。どうぞ
譲一: 「ムカッ! なんか、俺、犬みたいな扱いを受けるのが一番嫌いなんだよね~。これでも喰らえ! 500円、銭返し! テリャッ!」
ナレーション: 「もらい!」 譲一が投げつけた500円玉は、先ほどのホームレスが空中でキャッチしました。そうこうしている間に御輿は行ってしまいました。どうぞ
譲一: 「おいおい! お前が取っちゃ話が進まないだろう! ったく、これだからホームの無い奴は困っちゃうよ」
ナレーション: 「なにを! コノヤロウ!」 憤慨したホームレスが掴みかかってきました。どうぞ
譲一: 「タイムタイム! クサッ!」
ナレーション: 譲一はホームレスを振り落としました。周りでは民衆がまたもざわめいています。「新皇帝だ! 新皇帝がいらっしゃるぞ!」 どうぞ
譲一: 「誰だれだれ? あ~、まだ臭いや」
ナレーション: 譲一が体を擦っている間に、通りの向こうから、三十人ほどの、水着姿の美少女達が、四つん這いの姿でやって来ました。彼女達が引いているのは、これまた豪華な作りの馬車なのでした。どうぞ
譲一: 「わ~。セクシャル! ちょっと俺には刺激が強すぎるよぉ」
ナレーション: 美少女達は首輪をつけ、嬉しそうに馬車を引っ張っています。馬車の窓からは、何やら餅やオニギリが民衆に向かって投げられています。「餅! 俺も! 俺も!」 ホームレスは狂ったように走っていきました。どうぞ
譲一: 「待って待って! 俺にもちょうだい! お腹すいちゃったよぅ!」
ナレーション: 譲一は民衆に混じって馬車に押し寄せました。「ハハハ! そうら、そうら!」 馬車の窓から楽しそうに餅を投げる人物。それは、本来の譲一、その人だったのです。どうぞ
譲一: 「ゲッ! 俺じゃん! も~、最悪ぅ~」
ナレーション: 「ははは。お前さんにも、そうら!」 ガリガリ譲一に向けて、オニギリと、饅頭が投げられました。どうぞ
譲一: 「こんなのいらねえよ! 必殺、オニギリ返し!」
ナレーション: 「もらい!」 譲一が投げつけたオニギリは、先ほどのホームレスが空中キャッチしました。どうぞ
譲一: 「またかよ~! お前は犬かっつーの!」
ナレーション: ホームレスは譲一には目もくれず、他の群集と一緒に食べ物を拾っています。そうこうしている間に馬車は行ってしまいました。「メランコリック譲一閣下、バンザーイ!」「バンザーイ!」 あちこちから声が上がりました。どうぞ
譲一: 「マジむかつく! ちょっと! ホームレスのオジサン! ジョン! 飛びかかれいっ! アイツを噛み千切れいっ!」
ナレーション: ですが、ジョンなど存在しないのです。そんな譲一を見て、人々は頭の横を指でグルグルするジェスチャーをして、くすくす笑いながら食べ物や500円玉を拾っていました。どうぞ
譲一: 「もうっ。皆見てろよ! 俺の実力を思い知らせてやるわいっ! パ・ル・プ・ン・テ!」
ナレーション: 叫び続ける譲一。そのうちに民衆は一人また一人と消えていき、ホームレスも誰もいなくなりました。もちろん路上の500円玉や食べ物もなくなっていました。ガリガリ譲一だけが突っ立っていました。どうぞ
譲一: 「やっぱパルプンテは早すぎたかな? 覚えてなかったみたいだ。テヘッ」
ナレーション: 譲一は舌を出しました。誰も聞いている者はいませんでした。日も陰ってきました。今夜も冷えそうです。どうぞ
譲一: 「寒いっ。寒すぎるっ! 誰かぁ……。お腹すいたし、毛布ください」
ナレーション: 「可哀想に……良かったらこれでも召し上がれ」 誰かが、譲一にフランスパンを差し出しました。どうぞ
譲一: 「あ……ありがとう……」
ナレーション: 「どういたしまして」 その人物は口髭をいじりながらニコッと笑いました。それは、パンチョス先生だったのです。どうぞ
譲一: 「パンチョス~~~!! あ、あ、あいらぶゆ~~!」
ナレーション: 「きゃあ!?」 貴方は変わり果てた姿です。保険医のパンチョスが分かってくれるかどうか……。クイズ判定に入りますよ?
譲一: おうよっ
ナレーション: 問題……ドワーフはなぜ皆ひげモジャなんでしょう?
譲一: 「ドワーフは常に汚らしいので、色んな汚さから肌を守る為にヒゲがボウボウになるんだと思います。鼻毛の原理と同じかな?」
ナレーション: おしい!
譲一: えっ! じゃあ、じゃあ
譲一: 「ヒゲで息をしているから! えら呼吸みたいなやつね」
ナレーション: おしいー! 次でラストチャンスです
譲一: 「じゃあ、おじいさんのおじいさんの、そのまたおじいさんもヒゲ大好き♪だから」
ナレーション: オマケで良しとしますかね……。
譲一: ホッ
ナレーション: 「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい! 取り合えずこれを食べて」 フランスパンを差し出すパンチョス。どうぞ
譲一: 「モグモグ。美味しいなあ。こんなに美味しいフランスパンを食べたの初めてだ! ありがとう~」
ナレーション: 不思議なことに、譲一がパンを一口食べるごとに筋肉が一つ盛り上がります。そうして、全部食べ終わる頃には、ガリガリだった体が、ムキムキに戻っていました。「あ! あなたはマッチョ松下君……! の体をもらった譲一君!?」 どうぞ
譲一: 「パンチョス! 俺が譲一だってこと、分かるの? ホントに? うっうっうわ~~~ん!」
ナレーション: マッチョの体を持つ譲一は、感動のあまり、パンチョスの厚く汗ばんだ胸板に飛び込みました。そうして、男泣きに泣きました。かたく抱き合う二人の大男を、赤い夕陽が照らしていました。
ナレーション: 第十部・完
譲一: えーーーーっ!
ナレーション: でも第十一部に続くよ
譲一: 良かった良かった。ごっつぁんです!
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第九部」

2006-12-16 23:23:44 | メランコリー・譲一
アヴダビ: 譲一やるか
チャキオ: ポウッ!
アヴダビ: 元気いいねー
チャキオ: ポポウッ!
アヴダビ: 第九部 悠久編 はじまるよう!
チャキオ: すごいんだポウッ

ナレーション(アヴダビ): 奴隷船を逃げ出したガリー譲一とパッパラー。休み休みオールを漕ぎ、三日が過ぎました。いまだ陸地は見えません。照りつける太陽のもと、飲まず食わずの二人は、グロッキーでした……。どうぞ
譲一(チャキオ): 「のど渇いた……。水、くれよぅ! ウォーーーーーターーーーー!!」
ナレーション: 「しっかりしろ、譲一! くそ、熱が下がらない……。手足もこんなシワシワになってるし、いったいどうしたらいいんだ……」 パッパラーは困り顔です。どうぞ
譲一: 「パッパラー……。ゴメンネ……。迷惑かけちゃって……グスン……」
ナレーション: 「いいから、目をつぶって眠るんだ。俺が漕いでいてやるから、お前は眠れ」 パッパラーはオールを取りました。彼もまた疲れきって死にそうだというのに。どうぞ
譲一: 「ダメだよ! パッパラーだって死にそうなのに……。俺、もうちょっとだけ頑張るよ。もうちょっとね」
ナレーション: 「無理するなよ。……くそ、こんな時、もとの姿に戻れたら……おっと」 パッパラーは口を押さえました。どうぞ
譲一: 「元の姿? え? 何々? 俺、そういうの聞き逃さないタイプなんだ! 聞かせて聞かせて!」
ナレーション: 「い、いや、なんでもないよ。どうせ話したってゴニョゴニョ」 パッパラーはそっぽを向いてため息をつきました。どうぞ
譲一: 「ねえ、ねえってば! パッパラー! 教えて♪ 教えてよ! ねえねえ。お・ね・が・い♪」
ナレーション: 「う、うん……。俺、実はこんな姿じゃないんだ。奴隷船の船長に呪いをかけられちゃってさ……。へへ、ざまあないよ」 パッパラーは苦笑いを浮かべました。どうぞ
譲一: 「パッパラーもそうなの!? 実はね。俺も元の姿じゃないんだ……。ホントの俺はさ、もっともっと可愛いんだよ」
ナレーション: 「お前が? ハハ、そういう妄想を持っている奴は多いんだよ。本当はもっと可愛いとかカッコイイとか……現実から目を背けているだけさ」 どうぞ
譲一: 「ちがうよ! ホントに可愛いんだって! パッパラーは絶対ドキッとするよ! 間違いないよ!」
ナレーション: 「そうか……じゃあ信じるよ。信じたってどうにもならないがね……」 どうぞ
譲一: 「うん! それよりパッパラーはどんな姿なの? まさか獣だったりしないよね~」
ナレーション: 「俺は……フフ、そりゃあ可愛かったさ……。名前もパッパラー・マルコスなんて変なんじゃないしな……。その名前ももう思い出せないんだ……」 どうぞ
譲一: 「え? パッパラー・マルコスって変な名前なの? 全然、変じゃ無いじゃん! 立派な名前だよ! 自信もちなよ!」
ナレーション: 「変だよ! こんな名前をつけたあいつを、俺は許さない……」 パッパラーは歯軋りしました。どうぞ
譲一: 「そうかなあ……。俺は素敵だと思うけどなあ……。でも、俺もそんな素敵な名前をつけた人に会いたいなあ! どこにいるの? 行ってみない?」
ナレーション: 「それは、奴隷船の船長なんだけど? なあ譲一、俺の呪いを解くアイディアを持っていないか? 俺、こんな俺じゃ嫌なんだよ!」 パッパラーは譲一のやせ細った肩をガクガク揺さぶりました。どうぞ
譲一: 「あががが……。ちょっと揺らさないでよ! オエーーーッ!」
ナレーション: 「うわあ! きたねー! ちょ、俺に向かって、や、やめて……!」 その時、パッパラーの体がピカーっと光りました。「うわあああ!」 どうぞ
譲一: 「ホントにカワイイ~~~!! ビーバーみたいだ!!」
ナレーション: 光がおさまると、ボートの、先ほどまでパッパラーの座っていた所に、見たこともない全裸で毛むくじゃらの小さなお爺さんが座っていました。お爺さんの背中には蝶々のような羽が生えていました。どうぞ
譲一: 「お爺さん、もしかしてパッパラー? ねえ、元に戻らない方が良かったなあ。しゃべれる?」
ナレーション: 「フェッフェッフェ、ありがとうよ譲一。呪いが解けたわい。ふうー」 小さな毛むくじゃらのお爺さんは伸びをしました。どうぞ
譲一: 「ガーン! パッパラーの方が良かった! 元に戻って~! パッパラーを返してよ~! パッパラーの嘘つき! 元の姿の方が良いってこの程度かよ!」
ナレーション: 「何じゃと!? 生意気な小僧め! お前なんぞ海のもくずにしちまうぞ!」 お爺さんはビーバーのように突き出た出っ歯で、ボートの縁をガリガリかじりました。どうぞ
譲一: 「やぁっ! ゴメンナサイ! パッパラー、許して! 俺も元に戻りたいんだ! 何とかしてよ~」
ナレーション: 「ふむ……」 パッパラーは譲一の頭を撫で回しました。「お前は、お前の本当の体を持つ者に会わねばならんじゃろうな。そうせねばどうにもならんて」 どうぞ
譲一: 「どうすればいいのかなあ? 俺、その人のところ、飛び出しちゃって……。戻るに戻れないんだ……。パッパラーも付いてきてくれる?」
ナレーション: 「それはならんよ。ワシ、もう家に帰るもん」 お爺さんはボートの縁に立って、せえの、と飛び立つ姿勢をとりました。どうぞ
譲一: 「ダメダメ~~~!!! 行かせない! ムギュッ!!!」
ナレーション: 「ぎゃああああ!」 譲一の手の中で、お爺さんの目や鼻や耳から、血がぴゅぴゅっと噴き出しました。どうぞ
譲一: 「ぎゃっ! ごごご……ごめん~~~!! でも、キモイッ!」
ナレーション: 「ひ、人殺し……だ、誰か助けて……!」 毛むくじゃらのお爺さんは虫の息です。どうぞ
譲一: 「大丈夫! 俺、こういう時の為に救急の仕方を習った事があるんだ! まずは、倒れている人に呼びかけてっと……。大丈夫ですか~?」
ナレーション: 「い、いいから手を離して……」 譲一の手の中で身をよじるお爺さん。どうぞ
譲一: 「ダメだよ! まず気道確保しなくっちゃ。ゴキュッ!」
ナレーション: お爺さんは不意に静かになりました。その時です。雲間から光がすっと差し、頭に光る輪っかをつけた天使が降りてきたのです。同時に、静かになったお爺さんの体から、お爺さんの霊魂がすうっと抜け出ました。どうぞ
譲一: 「ちょっと! 行かないで! まだ途中なんです! 救急が! 次はね、誰か~助けてくださ~い! って叫ぶとこがあるんだから、まだ行っちゃダメだよ!」
ナレーション: 天使は困ったような顔をして、再び雲間へ戻っていきました。すると、今まで静かだったお爺さんの体が、ゴフッと血を吐き、苦しそうにうめき声を上げました。どうぞ
譲一: 「パッパラー大丈夫? えっとえっと、次は……次は……。あ、なんか嫌だなあ。こんなおじいさんとマウス・トゥ・マウスは……。それは省いてもいいよね?」
ナレーション: 「お、お願い、楽にして……。何でもしますから……」 お爺さんは弱々しく言いました。どうぞ
譲一: 「え? そんな事、言われても……。何をやればいいの? できればマウス・トゥ・マウス以外が良いんだけど……」
ナレーション: 「マウス・トゥ・マウスって言ったって……もうワシ喋ってんじゃん……」 お爺さんはウンザリ顔です。どうぞ
譲一: 「そうだった。ゴメンゴメン。俺って一つのことに熱中しちゃうと周りが見えないタイプっていうか……。えへへへ」
ナレーション: 「お前って、本当に、どうしようもない、やつ、だ、わい……ベフッ。くっくっく、どうやらワシもここまでのようじゃの。だが、最後に目にものみせてくれる……!」 お爺さんは血を吐きながら、よろよろと立ち上がりました。その手には、いつの間にか禍々しい杖が握られていました。どうぞ
譲一: 「ちょっと! パッパラー! 無理しちゃダメだよ。そんな杖持って~。貸してごらん!」
ナレーション: 説得するんですね? では、それが成功するかどうか、クイズで判定します! オッケー?
譲一: ポウッ!
ナレーション: 問題……サザエさんの、タマの声優は誰でしょう?
譲一: ?
ナレーション: えー……。正解!
譲一: フフフ
ナレーション: 「死ねや!」 杖がピカリと光り、不思議な力が譲一をふっ飛ばしました。ですが、「あわわ、魔法を間違えてしもうた」 と、お爺さんの声がかすかに聞こえました。譲一は空中をピューっと飛び、雲を抜け、海を越え、はるか眼下に、住み慣れた町が見えてきたのです。どうぞ
譲一: 「わあ~。もしかして、戻れたんじゃない? やった~! やった~! パッパラー!」
ナレーション: 喜んだのも束の間、この高度から落ちたら……! どうぞ
譲一: 「ししし……死んじゃうよ~~~!! 誰か~~~!! パッパラー! パンチョス~~! ロクさん~~! えっとえっと……ジロリゲス~! えっとえっと……。ボブソン! 誰でもいいから助けて~!」
ナレーション: ですが、誰が助けに来るはずもありません。みるみる地面が迫ってきます……。どうぞ
譲一: 「そうだ。俺は飛べる。飛べる気がする! 絶対飛べる! テリャッ!」
ナレーション: ですが、飛べるはずもなく……。地面まであと5メートルです。どうぞ
譲一: 「ううっ……。怖いなあ……。参ったなあ……」
ナレーション: 譲一は腕組みをしました。地面はあと1メートルのところまで迫っていました。どうぞ
譲一: 「こうなったら……アストロン!」
ナレーション: 突然、譲一の体が、黒曜石のように黒光りしました! 同時に、ドゴォっと地面に激突しました。轟音とともに土砂が舞い上がり、巨大なクレーターが出来、その中心に、きようつけの姿勢で頭から譲一が突き刺さっていました。その体は、徐々に元の色に戻っていきました。どうぞ
譲一: 「ふうっ。勇者の職業についといて今日ほど良かったって思ったことはないよ……」
ナレーション: ごぽっと地面から頭を引っこ抜き、譲一はやれやれといった表情です。それも束の間、疲労困憊の体でアストロンしたので、もう限界でした。そのまま気を失ってしまいました……。
ナレーション: 第九部・完
譲一: えーーーー!
ナレーション: でも第十部に続くよ
譲一: 良かったポウ!
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第八部」

2006-12-13 00:52:27 | メランコリー・譲一
アヴダビ: 譲一やるーよ
チャキオ: じゅるり
アヴダビ: んんな! メランコリー譲一「第八部 旅情編」
チャキオ: あらいやだ

ナレーション(アヴダビ): ひょんなことから奴隷船で働かされることになったマッチョ譲一でしたが……。突然ですが、好きな数字を言って下さい!
譲一(チャキオ): 193
ナレーション: ちょっと、大きすぎるかもしれないや……。出来れば1ケタが無難だと思う。どうしてもってなら193でも良いですけど。
譲一: じゃあ、4
ナレーション: 肉体労働にいそしむ譲一でした。奴隷船のオールを漕ぐことなど、マッチョの肉体ではどうってことはなかったのです。そうして、黙々と働き、4ヶ月が過ぎました……。どうぞ
譲一: ますますムキムキ♪ ウフフ・・・
ナレーション: そうです。マッチョ譲一の体は、当初よりもさらに一回りは大きくなっていたのでした。周りの奴隷は日に日にガリガリになっていくというのに、いやはや、大した体です。どうぞ
譲一: 「ちょっと~!皆見て見て! 俺の肉体美を!」
ナレーション: 「凄いですよね譲一さんは……。なんだか、譲一さんの側にいると、皆やつれるの早いんですよね。まるでエネルギーを吸い取られているかのように……」 奴隷仲間が恐怖をたたえた目で言います。どうぞ
譲一: 「な、何言ってんだよ! 皆、しっかりしろってっ! それっ! キュッ!」
ナレーション: 「え? あわわわわ! なぜだか私らの体もムキムキに~!?」 マッチョ譲一の指先からほとばしった光が、周りの奴隷仲間を照らした途端に、彼らもまたムキムキになったのです! どうぞ
譲一: 「キャアッ! 俺の専売特許を盗らないでよぅ!」
ナレーション: いまやオールを持った奴隷達は、全員がマッチョになっていました。「コラア! 何を騒いでおるかー! え、ええー!?」 ムチを持った奴隷監督が飛んできましたが、思わずたじろいでしまいました。どうぞ
譲一: 「ねえ、ちょっと! この人たち、俺の専売特許を取るんだよ! 酷いよねえ。鞭打ってよ!」
ナレーション: 「言われなくても! オラア! 貴様おとなしくせんかあ!」 ビシ、バシ、とムチを振るう奴隷監督。「痛えんじゃ!」 激昂した奴隷達は、怒りのあまり、なんと鎖を引き千切ってしまいました! 「うおお! 私ら自由じゃ!」 どうぞ
譲一: 「ちょっと~。誰のおかげだと思ってんの~? まったく……」
ナレーション: ぶつぶつ言いながらも、譲一も鎖を引き千切りにかかりました。どうして4ヶ月も大人しく働いていたのか、自分でも分からないぐらいでしたが。……しかし、なんということでしょう。譲一の鎖は切れません。自分の体をよく見ると、それほどマッチョではないのです。なんということでしょう。譲一は自分のマッチョエネルギーを、周りの奴隷に分け与えてしまったのです。どうぞ
譲一: 「やだ~! ちょっと、そこの君! 俺のエネルギー、返してくんない?」
ナレーション: 「触るんじゃねえ、軟弱野郎! ひゃっほーい、俺は逃げるぜ!」 海に飛び込む奴隷。どうぞ
譲一: 「えっ! 待って待って! 俺も連れてって! バカ~!」
ナレーション: そうこうしているうちに、船室にはガリ譲一と奴隷監督だけになっていました。「どうしよう、みんな逃げちゃって、俺、お頭に怒られちゃうよ……」 奴隷監督は涙をこぼしました。どうぞ
譲一: 「ねえ。大丈夫? 俺もさ……。何だか一人ぼっちになっちゃったみたいでさ……。グスン……」
ナレーション: 「う、うう、ありがと。俺、どうしよう。このままじゃお頭にぶっ殺されちゃうよ。ねえ、俺どうしたらいい?」 どうぞ
譲一: 「ねえ、何とか一緒に逃げようよ。どうにかなるよ!」
ナレーション: 「うん……。もう、それしかないよ……。ボートがある。それに乗って逃げれば……」 どうぞ
譲一: 「よし! やろう! ねえ、俺の名前はメランコリック・譲一。君の名前は?」
ナレーション: 「よろしく、メランコリック譲一。俺の名は……」 彼の名前は何でしょう?
譲一: パッパラー・マルコス
ナレーション: 「俺の名はパッパラー・マルコス。歌が得意なナイスガイだ。さあ、鎖を外してやるよ」 パッパラー・マルコスは譲一の足枷を外してくれました。どうぞ
譲一: 「ありがとう! パッパラー!」
ナレーション: 「うん。行くぞ」 二人は甲板の船員に見つからないように、そっと奴隷室から出て、ボートに乗り込みました。そうして、そっと奴隷船から離れました。どうぞ
譲一: 「やった~いっ! やっと解放だぁっ! ひゃっほうっ!」
ナレーション: 二人は一生懸命にオールを漕ぎ、奴隷船は波間に見えなくなりました。「はあはあ、ここまで来れば大丈夫だろう。なあ譲一、景気づけに一曲歌わないか?」 どうぞ
譲一: 「うん! 歌おう! 歌おう! 」
ナレーション: 「じゃあ、あれを歌おう。<アメリカ忍者は恋愛上手>」 どうぞ
譲一: 「いいね~! よしいくよ! え? 俺が歌っちゃっていいの?」
ナレーション: 「じゃあ俺から……。
ナレーション: 「お前の唇 インドの焼きたてのナンみたい ♪」
譲一: 「アンタの瞳も とろけるスイスのチーズフォンドゥ ♪」
ナレーション: 「アチッ 熱いぜ メガネが雲ってきたあ ♪」
譲一: 「あらやだ お熱ね アタシの魅力に ♪」
ナレーション: 「お前を抱きしめると ペットショップの匂いがするんだ ♪」
譲一: 「アンタはいつでも 藻の香りがするのね、イケナイ人 ♪」
ナレーション: 「言うじゃない? 部長はこのこと知っているの? ♪」
譲一: 「部長のことは もうヤメテ 過ぎた男に興味は無いの ♪」
ナレーション: 「OH! ドンクライ 手裏剣いっぱい持ってる俺のところへ来なよ エンジェル ♪」
譲一: 「引っかかったな アタイも忍のはしくれよ アンタのお命、ちょうだいするわ ♪」
ナレーション: 「ワオ メガネ割られて 肝心なところでいつもダークネス ♪」
譲一: 「アタイの素顔が見たければ 地獄の果てまで追ってキナ! ♪」
ナレーション: 「見えない……見えない…… パーカッションが俺を導くのさ ♪」
譲一: 「ワオッ! オウエーイ! 乱れ舞い散るサクラ吹雪 ♪」
ナレーション: 「ンナ! ヘエ~イ! 抱き締めればお前ヒゲもじゃ ♪」
譲一: 「モサッと生えれば世界は変わる 女も男も抜け忍もみんなヒゲのカーニバル ♪」
ナレーション: 「イッツもじゃ世界 恋愛上手は返上するぜ 今夜は一人でフェスティバル ウォウウォウ フゥーーー サンキュー」
ナレーション: 第八部・完

譲一: えーーーーっ!
ナレーション: でも第九部に続くよ
譲一: 良かった良かった
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第七部」

2006-12-06 20:42:11 | メランコリー・譲一
チャキオ: げフッ
アヴダビ: ちょっと……
チャキオ: ごめんごめん。なんかアイス食べたら冷えちゃって
アヴダビ: 知らないよ! じゃあ譲一始めるよ
チャキオ: おう!

ナレーション(アヴダビ): 第七部 「たそがれ編」
譲一(チャキオ): あんれまあ
ナレーション: 夜の商店街。いつまでも泣き止まない珍平太。珍平太は道路でゴロゴロ転がりながら「お菓子買って~」と叫んでいますよ。どうぞ
譲一: 置いてくよ。俺、いっとくけど君の父親じゃないからね
ナレーション: スタスタと歩き去ろうとするマッチョ譲一に、「パパ~待ってぇ~!」と泣き声がかかります。町行く人々も、あらまあ可哀想に、といった顔です。どうぞ
譲一: 「でも、俺、この子知らないし……」
ナレーション: 知らないオバちゃん達に言い訳するマッチョ譲一。その時です。「わー! パパ! 助けてぇ!」 珍平太の悲鳴です! どうぞ
譲一: 「どうした? ヌル作!」
ナレーション: 振り向いた時には、子供は黒服の男達によってバンに連れ込まれた後でした。バンは走り出しました。窓ガラスの向こうの泣き顔が、遠ざかっていきます。どうぞ
譲一: 「え? どうしよう? どうしたら良いんだろう……。マジで超めんどくせ~!」
ナレーション: マッチョ譲一がもたもたしている間に、バンは走り去ってしまいました。後にはまたもとのとおりの雑踏があるだけです。どうぞ
譲一: 「何がなにやら……。何だよなあ……。結局俺には何も残されてないってか!?」
ナレーション: 譲一は地団太を踏みました。マッチョだからでしょうか、夜の冷気の中でも、少し動くだけで汗をかいてしまいます。どうぞ
譲一: 「ブルブル……。寒くなってきた……。このままじゃ、俺、死んじゃうかもしれない!」
ナレーション: 寒いはずです。譲一は今は破れたフリフリ服をまとっているだけなのですから……。どうぞ
譲一: 「このフリフリ……着替えたいなあ……。何かないかなあ……」
ナレーション: そうして商店街をウロチョロしていると、紳士服屋、ブティック、ファッション雑貨屋などが目に入りました。どうぞ
譲一: やっぱり男は紳士服でしょう!
ナレーション: 紳士服屋に入ろうとしたところ、ガタイの良い店員に止められてしまいました。「申し訳ございません。当店ではそのような格好の方をお通しするわけにはいきません。お引取り下さい」 どうぞ
譲一: 「え? あ、この服は違くて……。いつもはこんなの着てないんです!」
ナレーション: 「違うも何も、現に着ているじゃないですか? おーい、皆来てみろよ!」 店員がぞろぞろとやってきました。どうぞ
譲一: 「ちょっと! やめてよ! 呼ばないでよお!」
ナレーション: 「ひゃーははは! 背中なんて破けてるぜ!」 そうやって譲一を笑い者にしていた店員達の顔が、突然凍りつきました。やぶけた服の間から、刺青を見たのです。どうぞ
譲一: 「あ! ちょっとちょっと。だから、何書いてあるのか読んでよ!」
ナレーション: 「ひいい! ごめんなさい! ごめんなさいい!」 十数人いた店員達は、皆泣きながら店の中へ逃げ込んでしまいました。シャッターがゴウンゴウンと降りてきます。シャッターの隙間から店員の一人が電話をかけている姿が見えました。どうぞ
譲一: 「あ! やめて! 通報とかしないで!」
ナレーション: ピーポーピーポー……。サイレンが聞こえてきました。同時に、こんな放送も。「戒厳令が敷かれました。住民の皆様は速やかに帰宅して下さい。繰り返します……」 どうぞ
譲一: 「え~~!! マジでマッチョってなんなの? 若干引いちゃうんですけど……」
ナレーション: そうこうしているうちに、オリの付いたトラックと機動隊の車輌が続々と集結してきました。どうぞ
譲一: 「ええい! なすがままだ! 勝手にせい! 」
ナレーション: マッチョ譲一の前に、機関銃を構えた十数人の機動隊員が迫ります。そして隊長格の男の声が。「撃てー!」 ズダダダダダ!
譲一: 「ちょっ! ちょっと~~~!! 助けて~~~~!!!」
ナレーション: クイズ・ザ・判定に入りますね。オッケー?
譲一: オッケー
ナレーション: 問題……のび太くんとドロンジョ様の共通点は何でしょう?
譲一: 声が同じ!
ナレーション: 正解! ズババババー! 弾丸は全て譲一の体に命中しました。吹っ飛ぶ譲一。体中が殴られたように痛みます。どうぞ
譲一: 「え~~~! 正解したんじゃ無かったの~~~!?」
ナレーション: 運が良かったのでしょう。弾丸は筋肉に弾かれたようですから。どうぞ
譲一: 「あ~、マジびびった。も~最悪っ!」
ナレーション: 「ちゃんと命中したのに!? ひいい! 化け物!」 機動隊は浮き足立っています。どうぞ
譲一: 「あの~。俺の背中に何が描いてあるんですか? さっきからチョ~気になってるんですけど!」
ナレーション: 「うわあ! く、来るな~!」 機動隊員は我先にと乗ってきた車に駆け込み、慌てて発車してぶつかったり自動販売機をなぎ倒したりしています。どうぞ
譲一: 「も~~。やだっ! 俺、どうしたらいいのか分かんない! もう……もう……うえ~ん!」
ナレーション: 車は走り去りました。一人泣き崩れる譲一。そのむき出しの肩に、誰かがそっと上着をかけました。どうぞ
譲一: 「うっ……うっ……ありがとう……パンチョス……」
ナレーション: 「いや、そりゃ誰だ? わしゃ、皆からはロクさんと呼ばれとるがね」 見上げると小汚い爺さんが笑っていました。譲一にかけてくれたのは、爺さんの上着のようでした。「そんな格好でいたら風邪をひくぞい」 どうぞ
譲一: 「あ、ごめん。なんか願望が出ちゃったみたいで……。ううん、何でもない。ロクさん……ありがとう……」
ナレーション: 「いいんじゃよ。良かったらわしらん所へ来んか? 今ちょっと宴会が始まったとこなんじゃがね」 どうぞ
譲一: 「いいの……? 俺のこと……受け入れてくれるの……?」
ナレーション: 「お前さんにその気があればね……。最後の楽園てやつよ……」 どうぞ
譲一: 「わあい! やったあ! 行くよ! 行く行く!」
ナレーション: マッチョ譲一とロクさんは商店街を抜け、河原へと降りていきました。ダンボールや雑誌の束で立てた小屋の前で、数人の男達が寝転んで月を見ています。カップ酒やビール瓶もあって、宴会はそこそこ盛り上がっているようです。どうぞ
譲一: 「ロクさん! 俺も飲んでもいいの? 迷惑じゃない?」
ナレーション: 「言ったじゃろ? ここは最後の楽園。お前さんはここへ来る資格があるんじゃよ」 ロクさんはニッコリ笑って、缶ビールとオニギリを譲一に渡してくれました。どうぞ
譲一: 「ロクさん! おいしい! おいしいよぉ!」
ナレーション: 呑み慣れないお酒を一気に飲んだせいでしょうか、少し気分が悪くなってきました。これは健康状態に関する判定をした方がよさそうですね。クイズるよ、オッケー?
譲一: おうけい
ナレーション: 問題……なぜジャイアンは映画版だと優しく頼もしいのでしょうか?
譲一: 「映画だと、興行成績とかに関わってくるのでジャイアンサイドも必死なんだと思います」
ナレーション: おしい!
譲一: 「え~~~!!」
ナレーション: 「顔色が悪いようじゃね。横になるといい」 ロクさんにうながされるまま、譲一は眠ってしまいました。どのくらい眠ったでしょうか。まだ薄暗い中、誰かに揺り起こされました。どうぞ
譲一: 「ロクさん……? ロクさん……?」
ナレーション: 「ねぼけてんじゃねえ!」 ピシリとムチが飛びました。驚いて回りを見ると、半裸の男達が櫂を漕いでいました。譲一の足には鎖がはまっています。先ほどムチを振るった男が、譲一にも乱暴に櫂を握らせました。大変です。ここは奴隷船のようです! ロクさんに、してやられたようですね!
ナレーション: 第七部・完
譲一: えーーーーっ!
ナレーション: でも第八部に続くよ
譲一: 良かった……
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第六部」

2006-11-30 19:05:42 | メランコリー・譲一
チャキオ: 譲一やろうぜ! 譲一!
アヴダビ: はーい
チャキオ: ゲロッフ
アヴダビ: では、第六部はじめるよー
チャキオ: おー!

ナレーション(アヴダビ): ヨハネス譲一と助子が部屋を出て行き、一人取り残されたマッチョ譲一でした……。どうぞ
譲一(チャキオ): 「ヨハネスの奴~。何ヤッテンダヨ!」
ナレーション: ナニヤッテンダヨ……ナニヤッテンダヨ……。譲一の叫びは空しく部屋に響き渡りました。部屋のベッドの上には、ピクリとも動かない老ヨハネスの体が横たわっているだけでした。どうぞ
譲一: 「ちょっとヨハネスにイタズラしてみよう。なんか無いかな~。助子みたいにしてやれ!」
ナレーション: 譲一はヤケクソになって、なすがままの老人の体で着せ替え遊びを始めました。延々と……。30分ほども遊んだ後、こんなことをしていても事態は何も好転しないことに気がつきました。どうぞ
譲一: 「俺、何やってんだろう……。老人の着せ替えは流行らないよね~。もっとさあ、何ていうの? 美少女フィギュアみたいなさ~ってこんなことしてる場合じゃなかったんだった……。バカだね、俺って。へへッ」
ナレーション: 譲一が物言わぬ老人と戯れている間に、階下では楽しそうな会話が聞こえてきました。どうぞ
譲一: 「なんだよっ! ヨハネスの奴! 助子なんかと楽しそうにしやがって……。寂しくなんかないよ! 寂しくなんて……。なんだよ……ちくしょう……」
ナレーション: 「……負けませんぞ~」「ウノ!」「ありゃ~」「うふふ」「あはは」 そんな会話が、どうしても耳に入ってきてしまうのでした。どうぞ
譲一: 「ちくしょうっ! ウノなら俺の方が上手いのに~!」 譲一は悔しくてガンガン床を叩きました。
ナレーション: ボゴォ! なんということでしょう。マッチョ譲一の超筋肉を活かしたパンチは、床板を粉砕してしまったのです。床に大穴が開き、譲一はあっという間に下の階に落っこちてしまいました。そこには唖然とする助子と、本来の譲一の肉体を持つヨハネスがいたのでした。どうぞ
譲一: 「あらっ。ちょっとやり過ぎちゃった! ごめんあそばせ」
ナレーション: 「あ、あなたはあの時の怪物! どうして!? 地下牢にぶち込んでおいたのに……!」 助子は驚き恐れています。どうぞ
譲一: 「そうだ! お前が兄である俺を牢屋にぶち込んだんだよな! マジ、ムカつく! 本当だったら投げ飛ばしてやりてえよ!」
ナレーション: 「何わけの分からない事を言っているの!? 気持ち悪い!」 助子は恐ろしさのあまり涙を流しています。どうぞ
譲一: 「あ~。ゴメンゴメン。泣くなよ助子~。泣かれるとな~、困っちゃうよな~。ずりいよな~」
ナレーション: 「来ないでーー! 触らないで! お兄様、助けて!」 マッチョ譲一の手を振り切って、ヨハネス譲一にすがり付く助子です。どうぞ
譲一: 「マジかよ~。そりゃねえっつーの! マジでムカついた。フンヌッ!」
ナレーション: 助子を捕まえようと伸ばした手を防いだのは、ヨハネス譲一の腕でした。「ぼ、坊ちゃん……」 口ごもるヨハネス譲一。どうぞ
譲一: 「ヨハネスも……俺を裏切るのかよ……。なんだよ……皆……。誰も俺が元に戻らなきゃいいって思ってんだろ! もういいよ! 皆、皆、大ッ嫌いだーーーーー!!」
譲一: 猛スピードで走る譲一。
ナレーション: 「坊ちゃーん……」 ヨハネスの声が遠くに聞こえました。扉を突き破り、門番を蹴散らして、譲一は夜の街を駆け抜けました。どうぞ
譲一: 「このまま……いけない事してやる! 危ない目にあってやる! 見てろよ! ちっくしょう!」
ナレーション: 譲一は通行人を蹴散らしながら、ある建物の前まで来ました。中からお遊戯の歌声が聞こえます。そこは保育園でした。どうぞ
譲一: 「フンヌッ! フンヌッ! 見てろよ~」
ナレーション: メキメキメキ! 保育園の鉄柵など、マッチョの超筋肉の前には一たまりもありません。ですが、鉄柵を破壊したと同時に、「ビービービービー!」 警報が鳴り響いたのです。どうぞ
譲一: 「あ! どうしよう! 何か怖くなっちゃった……。やっぱダメだ。この音、苦手! 逃げよう!」
ナレーション: そうこうしているうちに人が集まってきました。これはマズイです。クイズ判定に入ります! オッケー?
譲一: オッケー
ナレーション: キン肉マンの額には「肉」、ラーメンマンの額には「中」、ではテリーマンの額には何と書いてあるでしょう?
譲一: 米
ナレーション: う! 正解!
譲一: フフフ
ナレーション: あっという間に保育園の職員に取り囲まれる譲一。職員は手に手に警棒を持っています。ピンチかと思われたその時。「あ、パパだー!」 保母さんの手を振り切って、一人の男の子が抱きついてきました。どうぞ
譲一: 「え? マッチョ……。子供いたの? ガーン! ショックゥ~!」
ナレーション: 「パパ、遅いよ~」 泣き出す男の子。「松下さん、迎えが遅くなる時は連絡下さいね」 小言を言う保母さん。どうぞ
譲一: 「この子、ホントにマッチョの子供ですか? マジですか? マジへこむわ~」
ナレーション: 「ちょ、ちょっと松下さん、何を突然言い出すんですか! それに、どういう事情があるかは知りませんが、お子さんの前でそんなこと言うのはいけません!」 歯を剥いて怒る保母さん。どうぞ
譲一: 「保母さん、歯ぐきが丸見えだね。すっごい健康的!」
ナレーション: 「んもう、いやですよ~、この人ったら!」 保母さんは照れて口元を押さえながら、マッチョ譲一の背中をバシバシ叩きました。すると、来ていたキラキラフリフリの服が、ビリっと破けてしまったのです。どうぞ
譲一: 「保母さん~。やだぁ……。恥ずかしいじゃない! 見ないでよ~」
ナレーション: 「も~、逞しい背中なんだから~、って、ハッ!? 背中に刺青……」「あ、パパー、背中に何か書いてあるよー」 どうぞ
譲一: 「え? 何? 何て書いてあるの? ちょっと読んでください!」
ナレーション: しかし保母さんと保育園の職員は、急に譲一と男の子を門の外へ送り出し、そそくさと建物へ帰って行きました。どうぞ
譲一: 「何だろう……。何て書いてあるんだろう……? お前読める?」
ナレーション: 「なんか……迷路みたいなの…… 」 どうぞ
譲一: 「迷路!? 何だろう? ねえ、鏡持ってない? お前、名前何ていうの?」
ナレーション: 「分かんない……うえ……ママ……」 どうぞ
譲一: 「泣くなよ……。も~、じゃあ、お前の名前はグロ吉でいいか?」
ナレーション: 「う、うえ~ん、やだー、ぶえー」
ナレーション: どうぞ
譲一: 「じゃあ、聞くよ? グロ吉とヌル作とどっちがいい?」
ナレーション: 「珍平太……」 どうぞ
譲一: 「あはは! マッチョってセンスねぇ~!」
ナレーション: 「ガム買って……。あとグミも」 どうぞ
譲一: 「ダメだよ。ガムもグミも子供の食べる物じゃ無いぞ! がまんしなさい!」
ナレーション: 「うえ~~ん」
ナレーション: 第六部・完
譲一: えーーーー!
ナレーション: でも第七部に続くよ
譲一: 良かった……。
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第五部」

2006-11-21 19:33:01 | メランコリー・譲一
アヴダビ: そいじゃあ、第五部はじめるね
チャキオ: おお

ナレーション(アヴダビ): ポタポタという滴の音にはっと目を覚ました譲一。硬く冷たい石の床の上で眠っていたようです。変な姿勢で寝ていたためか、体の節々が痛みます。辺りを見回して、ここが自宅の地下牢だと気付きました。どうぞ
譲一(チャキオ): 「何で……こんなトコに……」
ナレーション: その時です。「脳みそ……脳みそくれ……」 気味の悪い声に振り向くと、隣の牢屋にも人がいました。まるで幽鬼のようにフラフラと牢屋の中を行ったり来たりしています。その男は……なんと本来の譲一その人だったのです。どうぞ
譲一: 「そのウットリする可愛い顔! 俺だ! 俺がここにっ! どうしよう? どうすればいいんだろう?」
ナレーション: マッチョ・譲一と本来の譲一の間は鉄格子で仕切られています。その向こうでは、青ざめた肌をした本来の譲一が、マッチョ・譲一にはまるで気付いていないかのように歩き回っています。ノロノロと。どうぞ
譲一: 「こんな鉄格子! マッチョの体なら破れるわっ! ふんぬ~」
ナレーション: メキメキメキ! 見事にひん曲がる鉄格子。どうぞ
譲一: 「やった! これで可愛い譲一と接触がとれる!」
ナレーション: 隣の牢屋へ乗り込んだマッチョ・譲一。本来の譲一の頭は、まるで蝶つがいで留められているフタのように、頭頂部がパカパカ開いたり閉じたりしています。中を覗くと、やはりカラッポなのでした。どうぞ
譲一: 「えっと……。どうすれば良いのかな……? この中に脳みそを入れれば良いのかな?」
ナレーション: 「脳みそ……脳みそ……。は!? お、おでの脳みそ、くでええ!」 マッチョ・譲一に気付いた本来の譲一は、突然襲い掛かってきました! どうぞ
譲一: 「ちょっと! 俺の脳みそは俺のもんだって! え? お前のモンで良いんだっけ? あ~、何か分かんない!」
ナレーション: モタモタしている間に、本来の譲一がマッチョに噛み付いてきました。これは危険です。クイズで生死を判定します。オッケー?
譲一: オッケー
ナレーション: パズーと彼女が地下世界で遭遇した人物は次のうちの誰でしょう? ①ボブじいさん ②ボブ・ディラン ③その他(具体的に)
譲一: ①ボブ・じいさん
ナレーション: 正解! 「これ、離しなさい!」 暗闇から現れた杖が、本来の譲一をポカリと叩きました。あっけなく倒れる本来の譲一。そして杖の主は、ヨハネスでした。どうぞ
譲一: 「ヨハネス! 俺、俺だよ! ヨハネスは分かってくれるよね? 譲一だよ!」
ナレーション: 「分かります。分かりますとも。姿は変われど、あなたは譲一坊ちゃんに違いありません」 ポロポロと涙を流すヨハネス小向。どうぞ
譲一: 「ヨハネス~! やっぱりヨハネスだけは俺の味方だよ! 俺、ヨハネスの事大好きだよ!」
ナレーション: 「えっふえっふ……グスン。いやはや、年を取ると涙腺が緩んでしまって仕方ありませんな」 照れくさそうなヨハネス。どうぞ
譲一: 「ヨハネス……。俺、元に戻りたいよ。どうにかならないかなあ?」
ナレーション: 「承知しております。まずはここに倒れている、本来の坊ちゃんの体を私の部屋に運んで下さいませ」 どうぞ
譲一: 「お安い御用よ! ほいっ」
ナレーション: 二人と一体は、譲一の妹の助子に見つからないようにヨハネスの個室へ向かいました。そこにはいくつかのベッドと、意味深な機械が置いてありました。「さあ、ここへ横になって下さいませ」 どうぞ
譲一: 「ねえ、大丈夫? ヨハネス……。俺、ちゃんと元に戻れる?」
ナレーション: 「それは……多分……」 モジモジするヨハネス。どうぞ
譲一: 「ねえ、ちょっと! 何、モジモジしてんの? 超心配なんですけど……」
ナレーション: 「大丈夫……じゃない? かなあ……。何分ためした事ないので……へっへっへ」 ヨハネスの声は段々小さくなっていきます。どうぞ
譲一: 「えーっ! 困るよ~。まず、ヨハネスで試してみよう! ね?」
ナレーション: 「ええ!? じゃあ、ちょっとだけですよ?」 ベッドに横になるヨハネス。機械が作動し、電気ノコギリと電気ドリルがヨハネスを……。「ぎやああ!」 その悲鳴はとてつもなく大きなものでした。どうぞ
譲一: 「どうしよう! ゴメン! ヨハネス! しっかりして~」
ナレーション: グッタリして動かないヨハネス。しかしその隣のベッドで、本来の譲一がむくりと起き上がりました。「成功です、坊ちゃん」 本来の譲一はニッコリ微笑みました。どうぞ
譲一: 「やだっ! ひょっとして、ヨハネスが俺の中に入っちゃったんじゃない?」
ナレーション: 「いやあ……やっぱり若い体は良いですな!」 ストレッチを始めるヨハネス・譲一。「ちょっと一泳ぎしてきたくなってきましたよ!」 どうぞ
譲一: 「ダメダメ! 俺の体だもん! 返してよ!」
ナレーション: その時です。「ちょっと! 今の悲鳴は何!? ヨハネス、大丈夫なの!? ここを開けてちょうだい!」 扉を叩く音。助子です。どうぞ
譲一: 「助子だ! アイツうるせえからなあ……。ヨハネス、とりあえず上手い事誤魔化してよ」
ナレーション: ヨハネス・譲一は頷くと、扉を開けました。助子は、そのヨハネス・譲一を見て、「まあ、お兄様! 元気になったのね! 良かった……本当に良かった……」 と、泣き崩れました。それを見てアタフタするヨハネス・譲一。どうぞ
譲一: あれ? ヨハネスの言葉でいいの?
ナレーション: いや、君はマッチョ・譲一だよ
譲一: オーライ
譲一: 「ヨハネス……。助子に帰ってもらって!」と小声で囁く譲一。
ナレーション: 「お嬢さ……助子……。とりあえず、行きましょうか」 ヨハネス・譲一の言葉に、うれし涙を流しながらうなづく助子。二人は手を取り合って部屋を出て行きました。後にはマッチョ・譲一だけが残されたのでした。
ナレーション: 第五部・完
譲一: えーーーー!
ナレーション: でも第六部に続くよ
譲一: 良かった……
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第四部」

2006-11-20 07:28:27 | メランコリー・譲一
アヴダビ: じゃあ、メランコリー譲一・第四部始まるよーー
チャキオ: おー

ナレーション(アヴダビ): 放課後になり、学校を後にする譲一。校庭で部活動に専念する若者どもを尻目に、家路を急ぎます……どうぞ
譲一(チャキオ): 「部活なんてよくやってられるよなあ……。俺は皆と一緒の事はしたくねえっつの!」
ナレーション: 譲一は帰宅部でした。でも、何に対しても無気力であるわけではないのです。単に、彼の趣味に合う部活動が無かっただけです。どうぞ
譲一: 「俺の趣味……。俺の趣味ってなんだっけ……?」
ナレーション: 今日はいろんな事があって、そのショックで軽い記憶障害があるのも仕方の無い事でした。そうこうしているうちに自宅が見えてきました。大きな屋敷です。どうぞ
譲一: 「あ~、マジ疲れた……。帰ってバラの花たっぷりのお風呂に浸からなくちゃやる気も何もでねえよ……」
ナレーション: 譲一がいつものように巨大な門をくぐろうとしたところ、いかつい顔の二人の男が立ちふさがりました。譲一の家に雇われている門番です。「誰だ貴様は! 立ち去れい!」 どうぞ
譲一: 「ちょっと~。ゴルジーニョ! 俺の事忘れたの? 大丈夫? ボケちゃった?」
ナレーション: 「なにぃ! どこの馬の骨か知らぬが、このゴルジーニョ様に無遠慮な言葉遣い! ええい、我慢ならん! 折檻してくれるわ!」 槍を振り上げるゴルジーニョ。もう一人はどうしたものかといった顔です。どうぞ
譲一: 「ちょっ! ちょっ! ちょっと! どうしちゃったの? ゴルジーニョ! 俺だよ、俺、譲一だよ! シルペッカも何とか言ってよ!」
ナレーション: 「む、私の名前も知っているとは……。あいや待たれよ、ゴルジーニョ。この者、どこかで会った事があるのかも……?」 シルペッカは首を捻りながらも油断のない目つきで譲一を見つめます。どうぞ
譲一: 「だから~、譲一だってさっきから言ってんじゃん! 皆、頭、大丈夫? グーパーグーパーした方が良いよ」
ナレーション: 「嘘をつくなこの筋肉ダルマめ! 譲一坊ちゃんはとっくに帰宅されておるわ!」「もう我慢ならん、討ち取ってくれる!」 二人の門番は槍を振り回しました。どうぞ
譲一: 「えっ? ちょっと待って! あ、そうだ! 俺、マッチョだった! どうしよう! ゴルジーニョ! シルペッカ! 信じて。俺が譲一だよ!」
ナレーション: 「問答無用ーー!」 二本の槍が同時に投げられました! このままでは……! では、判定ザ・クイズに入ります。準備はオッケー?
譲一: おっけー
ナレーション: 問題……次の言葉を使って意味の通る文章を作りなさい。「ロンドン留学」・「乞食」・「名人」
譲一: 「乞食名人になりたくてロンドン留学をした」
ナレーション: えー。不正解!
譲一: えーーー!
ナレーション: 一本の槍がブスリと譲一の肩に刺さりました! もう一本も、目の前に……! ザ・クイズです。
譲一: はいよ
ナレーション: 問題……マイケル・ジャクソンぽい奇声を4つ上げてください。
譲一: 「ポウッ」「ンナッ」「ヒーヒー」「シャモン!」
ナレーション: 正解! 間一髪、バク転でよけた譲一。その時、上から聞きなれた声が。「ゴルジーニョ、シルペッカ、お待ちなさい!」 見上げると、五階のバルコニーに立つ少女の姿が。彼女は譲一の妹の……どうぞ
譲一: 助子!
ナレーション: 「ゴルジーニョ、シルペッカ、その方はお兄様のご学友よ。失礼の無いようになさい!」 助子は厳しく言い放ち、バルコニーの奥へ引っ込みました。どうぞ
譲一: 「助かった~。やっぱりスケコは違うよね……」
ナレーション: 二人の門番は渋々道を開けました。「それにしても助子様を呼び捨てにするとは……」 無念そうにつぶやいています。どうぞ
譲一: 「だから、俺が譲一だっつってんだろ! この筋肉ゴリラ!」
ナレーション: 門番は挑発には乗らず、無表情で見送るのみです。二人の間を、肩に槍を突き刺したまま通る譲一。住み慣れた屋敷に入りました。どうぞ
譲一: 「全くよ~。ホントにやんなっちゃうよ……。最悪にもほどがあるよっ! 早くバラのお風呂に入らなくちゃ!」
ナレーション: バスルームへと急ぐマッチョ・譲一。その彼に、後ろから助子の声がかかりました。「いらっしゃいませ。ええと、マッチョ……さん。あいにく今ちょっと兄は出てこれないのですが……」 どうぞ
譲一: 「助子! 俺だよ! 譲一だよ。お前なら分かってくれるだろ!?」
ナレーション: 「いやあ! 触らないでー! 何をわけの分からない事を言っているのです!?」 必死に抵抗する助子。どうぞ
譲一: 「ちょっと! 助子! 違うって! 譲一だってば! ねえ、お願い。落ち着いて!」
ナレーション: 助子は泣きながら隣の部屋へ逃げていきました。後を追おうとした譲一でしたが、体からつき出た槍が突っかかって、ドアを通り抜けられません。どうぞ
譲一: 「助子ーーーーっ! おおーーーい! 誰かーーーーっ! 抜けないよっ! ちょっとどうしよう!」
ナレーション: そうこうしている間も、傷口からは血が流れ続けていました。段々苦しくなってきました……。これは危険です。判定に入りますよ!?
譲一: ほいよ
ナレーション: 問題……ルパン、次元、富士子、とっつぁん、の中で、一番足が太いのは誰ですか?
譲一: 次元!
ナレーション: 不正解! 正解は富士子です。譲一はクラクラし始め、とうとう気を失ってしまいました……
ナレーション: 第四部・完
譲一: えーーーー!
ナレーション: でも第五部へ続くよ
譲一: 良かった・・・
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第三部」

2006-11-17 19:47:19 | メランコリー・譲一
アヴダビ: では、第三部はじまるよー
アヴダビ: 今回はちょっと恋愛要素多めに頼むよ
チャキオ: でもマッチョ松下相手でしょ?
アヴダビ: それは今後の流れによるよ。ではでははじまり~
チャキオ: おう

ナレーション(アヴダビ): 檻の柵に頭を挟まれて気を失った譲一……。長い夢の後、不意に眩しさを覚え、目を開けました。白い天井が見えます。そうして、自分がベッドに寝かされていることに気が付きました。どうやらここは保健室のようです。「目が覚めたようね、譲一君。気分はいかが?」 声の方に振り向く譲一。どうぞ
譲一(チャキオ): 「うう……ん……。パンチョス……」
ナレーション: 「ふふ、先生の名前、覚えていてくれたのね、嬉しい」 保険医のパンチョス先生は口ヒゲをいじりながら微笑みました。どうぞ
譲一: 「パンチョス先生……。俺はいったい……。ところで先生、ヒゲはえてたっけ?」
ナレーション: 「あなたは長いこと気を失っていたのよ。麻酔が効きすぎていたみたい。無理もないわね。あ、このヒゲ? 馬鹿ね、来日して一度も剃っていないわ」 パンチョス先生は顔を赤らめました。どうぞ
譲一: 「そうだよね……。パンチョス先生はヒゲがトレードマークだったのに……。どうして俺は覚えてなかったんだろう……。今日も決まってるよ、パンチョス先生」
ナレーション: 「ありがと。嬉しいわ」 メキシコ人男性のパンチョス先生は、ワインと肉で太ったお腹をさすりました。「あなたも、すごく、格好良いわよ」 パンチョス先生は鏡を持ってきました。そこに映っていたのは……判定に入ります! 用意はオッケー?
譲一: オッケー!
ナレーション: 問題……トトロはどうやって増えるのでしょう? 四択です。①=生殖活動で増える。②=自己分裂する。③=別の物から生み出される(粘土とか)。④=その他(具体的に答えてください)
譲一: ④サツキとメイによる移植手術
ナレーション: おしい!
譲一: えーーー!
ナレーション: 譲一は鏡をのぞいてみました。そこに映っていたのは、マッチョ松下でした……。どうぞ
譲一: 「マッチョ! え? 俺、マッチョ? ウソ……。どうしよう……」
ナレーション: 「驚くのも無理はないわ。あなたの頭は鉄柵に強く食い込んでいて、どうしても引っこ抜けなかったの。仕方が無いから脳みそだけ取り出して、マッチョ君の体に移植したのよ。あなた達なら、きっと相性が良いはずだから、拒絶反応もないだろう、って思われたのよ」 どうぞ
譲一: 「やだよ! やだやだ! 俺の可愛い顔が台無しだよぉ!」
ナレーション: 譲一はベッドの上で暴れまわりました。シーツがはらりと落ちて、鍛え抜かれた体が露になりました。身長195センチ、体重95キロです。どうぞ
譲一: 「わっ……。マッチョ……逞しいなあ……。ドキドキするよ……」
ナレーション: 「ほら、気に入ったでしょ? 大丈夫、すぐに慣れるわ」 パンチョス先生は濃い眉毛の下でウインクしてみせました。どうぞ
譲一: 「でも、俺、かなり自分の顔に自信があったからさ、正直ブルーって感じ……。マッチョも良いんだけどさ……。はあぁ……」
ナレーション: 「男の子だったらクヨクヨしないの! それより、その新しい体、ちょっと動かしてきたらどう?」 どうぞ
譲一: 「どうやって動かすの? うまく動かせないよ。パンチョス先生……」
ナレーション: 「あれまあ……じゃあ、ちょっと荒療治になるけど仕方ないわ。習うより、慣れろよ! たあー!」 突然パンチョス先生は殴りかかってきました! バトル開始です。勝負の行方はクイズの結果によります。準備はオッケー?
譲一: オッケー
ナレーション: 問題……次の言葉は誰のセリフでしょう? 「キュピー、クピピ、ピポー」
譲一: ガッチャン
ナレーション: 不正解です。正解はスターウォーズのR2D2だよ。ボゴオ! パンチョス先生のアッパーカットが譲一の顎を打ち抜きました。さらに追い討ちをかけるパンチョス先生。「死ねや!」 クイズの続きです。オッケー?
譲一: オッケー
ナレーション: 問題……次のセリフを日本語に訳しなさい。「キュピー、クピピ、ピポー」
譲一: 「まいどあり!」
ナレーション: うーん、おまけで正解にしましょう。パンチョス先生の空手チョップを、ガッ、と受け止めた譲一。戦いの中で、自然と体の動かし方に慣れてきたようです。どうぞ
譲一: 「お前こそ死ねやぁ!」
ナレーション: 「ぎゃー!」 吹っ飛ばされたパンチョス先生は、ガラス窓をぶち破って外へ飛んでいきました。破壊されたベッドや棚が、保健室での戦いの凄まじさを物語っています。どうぞ
譲一: 「すげえ……。マッチョの体ってこんなにすごかったんだ……。ヤベエ……ドキドキする……」
ナレーション: 譲一の体は汗でキラキラ光っています。その時になってようやく、譲一は何も着ていない事に気が付きました。どうぞ
譲一: 「わぁっ! こんな体で保健室にいたら、パンチョスに何されるか分かったモンじゃないよ! 早く何か着なくちゃ……」
ナレーション: 保健室にはパンチョスの私物の服が何着かありました。どうぞ
譲一: 「パンチョス……趣味が悪すぎる……。何で全部、スパンコールとかフリルなんだよ! しかもマッチョの体には合わないよ……」
ナレーション: なんだかんだ言いいつつも、キラキラ、フリフリした服を身に着ける譲一。と、そこへ……「パンチョス先生! 急患です!」 ガラっと開けて入ってきたのは……どうぞ
譲一: 「ジロリゲス・木之元!」
ナレーション: 「え、ええそうですが、ちょっと膝小僧を擦り剥いちゃいましてね。へへ、体育の授業が終わるまでここにいて良いでしょ?」 ジロリゲス木之元は調子の良い笑顔を見せました。どうぞ
譲一: 「ジロリゲスって自分で急患ですって言いながら入ってくるんだね。そんな奴は急患とは認めたくないなあ……」
ナレーション: 「まあまあ、堅いことは言いっこ無しだぜ。……あれ? 先生、口ヒゲは? それに、あれ、こんなに筋肉モリモリしてたっけ?」 不審の目を向けてくるジロリゲス。どうぞ
譲一: 「そうだよ。俺はパンチョスだよ……。口ヒゲは……剃ってみたんだ。それに筋肉はさっき腕立てを30回ほどやったらね……」慌てた譲一は咄嗟にウソをついてしまいました。
ナレーション: 「ああ、そうなんだ……。なるほどね。でもさ、あの口ヒゲ、願懸けのために剃らなかったんでしょ? 剃ったってことは、願い事が叶ったってこと?」 どうぞ
譲一: 「あ、うん。まあね。俺の願いはささやかだからさ……。言わせんなよ、ジロリゲス~」
ナレーション: 「え~、なんだよ~、どんな願い事だったんだよ~。教えて下さいよ~」 どうぞ
譲一: 「俺? あ、間違えてた。アタシ? そうそうパンチョスはアタシって言うんだったっけ? アタシの願い? それは……ウフフ……」
ナレーション: 「うんうん」 ニヤニヤ笑いを浮かべるジロリゲス。どうぞ
譲一: 「すきありーーーーっ!」譲一は何となくジロリゲスにカカト落としをお見舞いしてしまいました。
ナレーション: 「グフッ!?」 ジロリゲスはグチャっと倒れました。頭蓋骨が完全に陥没しています。マッチョの超筋肉によるカカト落としは、絶対に素人には放ってはならない技だったのです。どうぞ
譲一: 「どうしよう……。もしかして……殺しちゃった……? もしかして、俺って……人殺し? や、やだよーーー!」
ナレーション: その時です。キーンコーンカーンコーン。放課後を知らせる鐘が鳴り響きました。どうぞ
譲一: 「俺じゃない。俺じゃないよ……。もう帰ろう。放課後だもん……」
ナレーション: ジロリゲスの体をそのままに、そっと保健室を抜け出した譲一。帰路を急ぐ足取りは、しかし鉛のように重いのでした。
ナレーション: 第三部・完
譲一: えーーーー!
ナレーション: でも第四部に続くよ
譲一: 良かった……
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第二部」

2006-11-14 23:51:57 | メランコリー・譲一
アヴダビ: では第二部、行くぜ!!
チャキオ: よっしゃこー!
ナレーション(アヴダビ): 前回、爆風に吹き飛ばされた譲一は、犬小屋へと真っ逆さまへ落ちてしまいました。意識が朦朧となる譲一。そんな彼の腕を、足を、何かが噛んでいるようです。それのお陰でどうにか気を失わずに済んでいるのですが……どうぞ。
譲一(チャキオ): いってーな! ジョッコス!
ナレーション: 「ワフウッ!?」 いきなり怒鳴られて、譲一を囲んでいたもの達は驚いて飛び退りました。それは、犬のマスクを被った人間でした。どうぞ
譲一: 「あ……。スミマセン……。間違えた……」
ナレーション: 「ウー、ウウー」 犬マスクの人間達は、譲一の周りを警戒するようにグルグル回っています。どうぞ
譲一: 「わあ……。どうしよう……。マジでキモイ……。そうだ、そんな時はこれ、おばあちゃんが持たせてくれた骨付きカルビ。それ!」
ナレーション: 「ワフ!? ウウー!」 犬人間達は我先にと骨付きカルビに飛び掛りました。犬人間は全部で12匹もいます。カルビを奪い合って、壮絶な乱闘が始まりました。どうぞ
譲一: 「ひゃあっ! キモイ……。この隙に……」
ナレーション: 譲一は出口を探しました。しかしここは檻の中です。鉄柵で囲まれているのです。そう、ここは、お前は犬だと洗脳された人間が閉じ込められている犬人間小屋だったのです。どうぞ
譲一: 「え? 俺は……もしかして……犬? キャウン……。できることならマルチーズがいいなあ……。俺って可愛いから……」
ナレーション: 譲一は犬人間達の中にいて、自分も犬なんじゃないかと思い始めてきました。体内の血が、むしょうに滾ってきます……。このままでは、本当に犬に……!? では判定に入りますよ! 用意はオッケー?
譲一: オッケー!
ナレーション: 問題……ナウシカのお父さんは、何本の腕を持っているでしょう?
譲一: 八本!
ナレーション: 不正解です! 本当は2本だけなんだよ。譲一はついに理性のタガが外れてしまいました。犬人間になってしまったのです! どうぞ
譲一: 「キャン! キャン! クウ~~~ン……」
ナレーション: 「ワフ? ワウ~ン?」 周りの犬人間達が心配そうに集まってきました。皆、口だけ出したマスクと、バスタオルだけしか身につけていません。年は20代から40代といったところでしょうか。どうぞ
譲一: 「キュン! キュン! キャウウウ~~~ン……」
ナレーション: 「やかましい! 犬ども!」 突然、飼育係と思しき男性が檻の外に現れ、バケツの水を譲一達に浴びせました。皆グッショリです。どうぞ
譲一: 「グル~~~ グル~~~~! キャウンッ!」(歯を剥いてみたよ)
ナレーション: 「こぉの~、畜生の分際で! こちとら突然の爆発事故でテンヤワンヤなんだっつーのに!」 飼育係はムチを持って檻の中へ入ってきました。どうぞ
譲一: 「クウ~ン? クウ~ン」(シッポを振ってみたよ)
ナレーション: 「いまさら媚びてみても遅いってんだよ……へっへっへ……。んん? お前、犬マスクはどうしたんだ! なくしたのか!?」 飼育係は顔を真っ赤にして怒っていますよ。どうぞ
譲一: 「キュウウン……」(プルプルと首を振ってみたよ)
ナレーション: 「コンチクショウが! 大切な犬マスクをなくしたら、俺が校長先生に叱られちまうじゃねえか!」
ナレーション: ムチが、譲一に向かって振り下ろされました。どうぞ
譲一: 「キャウーーーーーーン!!!」
ナレーション: バシ! バシ! バシイ! どうぞ
譲一: 「キャウッ! キャウッ! キャウン~~~」
ナレーション: バチン! ババシ! バシー!
ナレーション: どうぞ
譲一: 「ってえな~! っざっけんなよ! テメエ!」
ナレーション: 「ひゃああ! しゃ、喋ったあ~!」 飼育係は驚いてペタンとしりもちをついてしまいました。どうぞ
譲一: 「あれ? 犬? 俺? えっと、何だっけ?」
ナレーション: 譲一は様々なショックが重なって、脳がアレになっていたのです……。飼育係は驚き過ぎて、泡を吹いて、痙攣しています。どうぞ
譲一: 「ケッ! 俺をこんなトコに閉じ込めようなんて100年早いんだよ! ペッ!」(グリグリと踏みつける譲一)
ナレーション: 「う、うう~ん……」 飼育係は苦しそうに呻いています。どうぞ
譲一: 「ったく……。助けて欲しかったら3遍回ってワンっと鳴きな!」
ナレーション: 「そ、そんなこと言ったって、腰が抜けちゃって……」 飼育係はベソをかきました。周りで、犬人間達が心配そうに見守っています。檻の外では消防車のサイレンが聞こえます。どうぞ
譲一: 「マジで面倒くせえなあ……。よっこらせっと……」譲一は飼育係を背負ってみました。
ナレーション: その時、譲一はとてつもないデジャ・ヴに襲われました。この背負い心地……どうぞ
譲一: 「こ……この感触……。この肌触り……もしかして……生き別れの……ひ……」
ナレーション: 「ひい爺ちゃんだよ……譲一。思い出してくれたかい?」 飼育係は譲一の背中で泣きました。どうぞ
譲一: 「ひい爺ちゃん……。元気だったんだね……。トイレに行くって言ったっきり戻ってこなかったから……。俺……てっきり……」
ナレーション: 「ああ……あのトイレが間違いだった……。魔のトイレだったんだ……。思い出したくもない……。でも、こうして今、再びお前と会えるなんて……う、ううっ」 どうぞ
譲一: 「ひい爺ちゃん! もう、どこにも流されたりなんてしないよね!」
ナレーション: 「うわーああ! その事を思い出させんでくれーええ! うぁー! 飲まれるーうう!」 ひい爺ちゃんはパニックを起こし、譲一の背中で狂った猿のように暴れました。どうぞ
譲一: 「ギャアッ! どうしよう! 誰か~! ヨハネス~!! は……もう……いないのかな……」
ナレーション: 「は! ヨハネス!? お前、今ヨハネスと言ったな! あの野郎め~! 我が家の召使でありながら、奴のお陰でワシは~!」 ひい爺ちゃんは何かを思い出し、怒りのあまり譲一の肩をギューっと握り締めました。どうぞ
譲一: 「イッテエって言ってんだろーが!」咄嗟に譲一はひい爺ちゃんを投げ飛ばしてしまいました。
ナレーション: ガポ! 投げ飛ばされたひい爺ちゃんの頭が、檻の鉄柵の間にはまってしまいました。「あ、あが!」 妙な声を上げるひい爺ちゃん。どうぞ
譲一: 「わっ! そんな時はコレだ! ラバーナントカ。つまりはトイレのつまり取りだ。こんな時、役に立つんだね。それ!」
ナレーション: カポ! スッポン道具をひい爺ちゃんの禿げ頭にはめる譲一。「や、やめてくれえぇぇぇ」 悲痛なひい爺ちゃんの泣き声。どうぞ
譲一: 「大丈夫って。すぐに終わるから。痛くないから!」
ナレーション: やるんだね? では、無事にひい爺ちゃんが救出出来るか判定に入ります! 用意は良い?
譲一: 良いよ!
ナレーション: 問題……ガンダムは、お腹が千切れて飛行機になりますが、この飛行機の名前は何でしょう?
譲一: コアブースター!
ナレーション: 不正解です! 正解はコアファイターです。スッポン道具を思い切り引っ張った譲一。しかし、無情にもスッポン道具はひい爺ちゃんの頭から外れ、いきおい余った譲一はもんどりうって、檻の反対側の鉄柵に激突してしまいました。そうして、なんと譲一の頭もはまってしまったのです。どうぞ
譲一: 「やだ~! 俺の可愛い頭がはまっちゃってんじゃン! も~、めっちゃテンション下がるわ~」
ナレーション: 泣き叫ぶ譲一。しかし鉄柵は徐々に譲一の頭に食い込んできます。血管が塞がっていきます……どうぞ
譲一: 「あっ……もうダメだ……。俺の可愛い頭の形が変わっちゃったら……お気に入りのカウボーイハットも似合わないよ……。メチャクチャ……似合って……た……のに…………」
ナレーション: 遠のく意識の中で、犬人間達が悠々と、ひい爺ちゃんが入ってくる時に開けた扉から外へ逃げて行くのを見る譲一。檻には、ひい爺ちゃんと譲一だけが残されました。静かです……。もう、何も見えなく、何も感じません……
ナレーション: 第二部・完
譲一: えーーー!
ナレーション: でも第三部に続くよ
譲一: 良かった……
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一 第一部」

2006-11-09 07:14:33 | メランコリー・譲一
これは、美少年メランコリー・譲一が繰り広げる、学園ラブストーリーである。

アヴダビ: じゃあはじめるよー!!
チャキオ: おう!
アヴダビ: オーケイ?
チャキオ: 王系
チャキオ: オーケー
アヴダビ: じゃあ私がナレーションをやりながら、セリフやシチュエーションを振るから、それに主人公である君が応える感じで頼むよ。
チャキオ: それって、メランコリック・譲一だよね
アヴダビ: そうだよ。でははじまりはじまり~

ナレーション(アヴダビ): それは11月のある晴れた朝の出来事でした……。譲一はいつものように学校に向かいました。
ナレーション: でも、なぜだかその朝は、妙な胸騒ぎを感じていました。何かを忘れているような……
ナレーション: と、そこへ聞きなれた声が。「坊ちゃん! 坊ちゃんお待ち下され~!」
ナレーション: 誰が来たんでしょう?
譲一(チャキオ): 「執事のヨハネス・小向!」
ナレーション: 「はあはあ。やっと追いつきました……。このヨハネスめも、若くはありませんじゃ。我ながらよく追いついたもんじゃわい。ほっほっほ……」 執事は愉快そうに笑いました。
譲一: 何か言ってもいいの?
ナレーション: うん。あ、今度から「どうぞ」って言うね
譲一: うん、お願いね
譲一: 「じいやに追いつかれるなんて、俺も体がなまったかなあ・・・」
ナレーション: 「ほっほっほ。このヨハネス、老いぼれたとはいえ、まだまだ施設の厄介にはなりませぬぞ……ゴ、ゴホ! げふ!」どうぞ
譲一: 「え!? ゴメン・・・。施設に電話・・・いや、ううん。何でも・・・」
ナレーション: 「え、今なんと? まあ、それはさておき、坊ちゃん、忘れ物ですぞ。そんな格好ではご学友に笑われてしまいますぞ」どうぞ
譲一: 「あ、ホントだ。ズボン履いて無かったよ・・・。恥ずかしいね・・・」
ナレーション: 譲一はヨハネスに手伝ってもらいながら、道路で制服のズボンを履きました。そこへ運悪く憧れのあの人が通りかかったのです。その人とはもちろん……。どうぞ
譲一: マッチョ・松下!!
ナレーション: 「お、おい譲一! お前なに朝っぱらから公開着替えタイムとしゃれ込んでんだよ! たはー!」 マッチョ松下はひたいをパシッと叩いて、こりゃ一本取られたわい、といった様子です。どうぞ
譲一: 「や・・・やだなあ・・・。ちがうよ・・・。ヨハネスが・・・ヨハネスが・・・俺の制服を勝手に着ちゃって・・・」
ナレーション: 「ぼ、坊ちゃんなぜそんな事を……、いや、そうです。全てはこのヨハネスのせい。悪いのは全て私めでございます。今日のところは勘弁してくださいませ」 ヨハネスはマッチョ松下に土下座しました。どうぞ
譲一: 「ヨハネスは、何だかアレなトコがあってさ……。いつまでも若いって思ってる節があるんだ。でも、大丈夫。そんなヨハネスを俺は見捨てたりしないからさ!」
ナレーション: 「譲一……お前って本当に優しい奴だな。この召使の爺も、お前に使ってもらって幸せだと思うぜ。そら、俺もサスペンダーをつけるの手伝ってやるよ」 マッチョ松下は譲一のサスペンダーを締めてやりながら、「パチン!」と景気の良い音を立てました。
ナレーション: どうぞ
譲一: 「あ・・・ありがとう・・・。マッチョは・・・いいヤツだね・・・」
ナレーション: 「ば、ばか、俺達友達だろ? 当たり前の事をしたまでだよ。なんだよ、そんな顔するんじゃねえよ!」 マッチョ松下は坊主頭をガリガリとかきました。どうぞ
譲一: 「そうだね。ともだち……だよね……」
ナレーション: 「坊ちゃん、どうされました? 何か心配ごとでも? 大丈夫、坊ちゃんにはこのヨハネスめがついております」 ヨハネスは譲一とマッチョ松下の間に割って入りました。どうぞ
譲一: 「チッ。このジジイッ!」
ナレーション: 「え、今何と? ちょっと補聴器の調子が悪くて」 ヨハネスは申し訳なさそうにうなだれています。どうぞ
譲一: 「あ、ううん。何でもないよ」
ナレーション: 「おい、そろそろ行かないと遅刻するぞ!」 譲一とヨハネスが一悶着起こしそうな間に、マッチョ松下はかなり先に行っていました。どうぞ
譲一: 「あ、マッチョ。待ってくれよ~。ジジイ、後で覚えてろ!」
ナレーション: 追いかけてくる譲一を振り返って笑うマッチョ松下。だが、彼の目の前に、ダンプが迫ってきていました! 気付かないマッチョ! このままではひかれてしまいます! どうぞ
譲一: 「マッチョーーーーー!!!」 譲一はマッチョを助ける為にダンプの前へ
ナレーション: 助けに入るんだね? では成功か失敗かを判定します! これから出すクイズに正解出来れば救助成功。不正解なら失敗です。用意はいい?
譲一: オッケー!
ナレーション: 問題……北斗の拳の北斗四兄弟の名前を全て答えてください。
譲一: ラオウ・トキ・ジャギ・ケンシロウ
ナレーション: 正解! 譲一の捨て身の体当たりがマッチョ松下を吹っ飛ばしました。ともに転がる二人の真横を、時速80キロは出しているダンプが通り過ぎました。「いてて……お前、俺を助けてくれたのか?」 マッチョは、驚いた顔で譲一を見ました。どうぞ
譲一: 「大した事ないよ。マッチョが無事で良かった……」
ナレーション: 「ありがとよ。お前には借りをつくっちまったな。どっこいせっと」 マッチョは譲一の手を取って立たせてやりました。どうぞ
譲一: 「やっ。き……気にすんなっ!」 手を払う譲一
ナレーション: 「な、どうしたんだよ」 驚くマッチョ松下。それから寂しそうな顔で、「じゃあ、早く行こうぜ。もうすぐ校門を閉められちまう」 そう言って走り出しました。全力疾走です。どうぞ
譲一: 「待てよ! マッチョ! ダメだ、全然追いつかないや」
ナレーション: キーンコーンカーンコーン。校門まであと少しのところで、チャイムが鳴りました。マッチョは間一髪で校舎に滑り込んだようです。ですが、無情にも譲一の前で校門は閉まってしまいました。どうぞ
譲一: 「ハアハア・・・っざっけんな! マジ、ムカつく!」 校門を蹴り飛ばす譲一
ナレーション: 「コラア! 誰だ、校門を蹴った奴は!」 生活指導の先生が飛び出してきました。リアルな犬の仮面をかぶっています。なぜならこの学校は……どうぞ
譲一: 「闘犬育成訓練予備学校だからだ」
ナレーション: え、せりふ?? 「そうだ! 我が闘犬育成訓練予備学校に不義を働く貴様は誰だ! 名を名乗れ!」 生活指導の先生は飢えた野犬のようにハアハア言いながら吠え叫びました。どうぞ
譲一: 「あ、俺、何言っちゃってたんだろう……。俺の名を知りたいのか!」
ナレーション: 「そうよ……。見れば貴様、うちの制服を着ているな。遅刻者か。面白い、久々にお仕置きタイムといくか……」 生活指導の先生は牙をガチガチ鳴らしました。どうぞ
譲一: 「いや、俺、何もしてませんって! ちょっと……マジ痛いのとか、ヤなんですけど」
ナレーション: 「痛いのは嫌だと~? くっくっく、俺は嫌がる奴を痛めつけるのが大好きなんだよ……」 先生は校門の向こうから、爪で門扉をガリガリ引っかいています。「どこのクラスの奴だろうなあ……みんなの前で泣かしてやろうか……」 どうぞ
譲一: 「あ、先生! 大変! あっちあっち! あっちにアレが!!」
ナレーション: 「え!? なになに!? どっちどっち!? どっちにアレがあるの!?」 生活指導の先生は自分の作り物の尻尾を追ってグルグル回り始めました。どうぞ
譲一: 「バカめ……。所詮、犬っころが……」
ナレーション: 先生はいよいよ物凄いスピードで回転しています。近寄ったら吸い込まれそうです。どうぞ
譲一: 「どどど……どうしよう……。シルベスター! 助けてーーーーっ!」
ナレーション: たすけてー……たすけてー…… 譲一の叫びが響き渡りました。それに応えるように、「ニャオーン」 猫のシルベスターが校舎の陰から顔を出しました。どうぞ
譲一: 「わっ。いっつも可愛いね。シルベスター。おいでおいで~」
ナレーション: しかし、シルベスターと譲一の間には犬の格好をした先生がいます。シルベスターがこっちに来てくれるかどうか……判定に入ります! クイズに答えて下さい。オーケイ?
譲一: オッケー!
ナレーション: 問題……「李小龍」とは何と読むでしょう?
譲一: ブルース・リー
ナレーション: 正解! シルベスターはさりげない歩調で先生の横を通り、ひらりと華麗に校門を乗り越えて譲一のもとへやってきました。「ニャオーン?」 何かくれるのか? といった顔つきです。どうぞ
譲一: 「あ……。ゴメンよ。シルベスター……。今日はあいにく何ももって無いんだ……」
ナレーション: 「フウー!」 頭にきたシルベスターは、シャキンと爪を伸ばし、戦闘ポーズを取りました。どうぞ
譲一: 「やるか! この猫スケがっ! 負けねえぞ! フーーーーーーッ!!!」
ナレーション: ビクウ! あまりの迫力に怖気づいたシルベスターは、慌てて校門を乗り越えて校舎の方へ逃げ出しました。それに気付いた生活指導の先生は、「あ、猫だ! まあて~!」 と叫んで追いかけていってしまいました。後には譲一だけが残されたのです。どうぞ
譲一: 「シルベスター……。いつも愛情が裏返しになってしまう……。俺っていつだって……こんな調子だよ……」 立ち尽くしてホロリとする譲一。
ナレーション: そうこうしているうちに、雨がポツリポツリと降ってきました。このままでは濡れてしまいます。でも、校門は閉じたままです。どうぞ
譲一: 「あ、もしもし? ヨハネス? 雨が降ってきたからカッパと脚立持って来てくんない? ダッシュでね。10秒で。い~ち、に~」
ナレーション: 空の彼方で、キラリと何かが光りました。ロケットです! それは、譲一の家に配備されている自家用ロケットでした。「坊ちゃん、着地のナビゲートをお願いします!」 ヨハネスの切羽詰った声がケータイから聞こえました。どうぞ
譲一: 「ぎゃあぁーーーっ! マジで10秒で来んなよ~~~! ヨハネス、キモイよ~~~!」
ナレーション: 「え、いや、そんなことよりナビを……! 間に合わな……! ぶつか……!」 ロケットは校門に向かって落ちました。大爆発。譲一は爆風で空高く飛ばされました。このまま落ちたら大変危険です。判定に入ります! オーケイ?
譲一: オー系!
ナレーション: 問題……ラピュタに登場する悪い奴のメガネと、トトロのお父さんのメガネは同じ物である。○か×か。
譲一: ○!
ナレーション: ブー。不正解! 譲一は大音響を立てて闘犬小屋に落ちました。あまりの衝撃に体中の骨がバラバラになったようです。校門の方からドクロ雲が上がっていました。薄れゆく意識の中で、あの爆発ではヨハネスも……と思いました。そうして、何も分からなくなりました。
ナレーション: 第一部、完
譲一: えーーーーーっ!!!
ナレーション: でも、第二部に続くよ
譲一: 良かった・・・。ビックリした~~。
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学園アドヴェンチャー「メランコリー・譲一」目次

1936-02-26 21:08:03 | メランコリー・譲一
第一部
第二部
第三部
第四部
第五部
第六部
第七部 たそがれ編
第八部 旅情編
第九部 悠久編
第十部 粉雪編
第十一部 はじけろ青春編
第十二部 新宇宙編
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