中国新聞に 鶴の尾団地自治会の活動の様子が掲載されました。
'13/3/15
<7>担い手 自治会活動が命綱
子ども軸 親世代呼ぶ
長崎市の鶴の尾団地の夏祭りを盛り上げるのは地元小学生だ。舞台の司会を務め、ダンスも踊る。わが子の晴れ姿を見ようと、親もやって来る。
「子どもが来れば、自治会活動に関わりが薄い親世代も引き付けられる」。鶴の尾町自治会の山口明会長(64)は2年前、このアイデアを実行に移した。
狙いは当たった。次に打ち出す仕掛けは「男の会」づくり。「特に地域の男同士は名前や顔を知らないからねえ。多世代で和やかに酌み交わし、団地の将来を語り合いたい」。近く、夏祭りで接点ができた父親を誘って、懇親会を開く。
「新しい仕掛けなしに、新しい人は入ってこない」。他の団地で活動する自治会役員のひと言が、アイデアマン山口会長の原点だ。
困り事を解決
2011年度から、市の「地域づくり担い手育成講座」の受講を始めた。それまでも、住民有志で高齢者の日常の家事や困り事を解決する「助っ人隊」を組織するなど実績は積んでいた。半面、「自治会運営はこのままでいいのか」という疑問も拭えない。他の団地の実践に学びたかった。
「自治会への加入を進めるには」。講座では、市内の自治会役員たち20人程度が毎回、さまざまな課題の解決策を議論する。
山口会長は12年度も全6回に出席。先月の最終回では、夏祭りの成果にも触れた。他の地域も子どもを中心とする実践例を報告。「子どもを介せば、住民同士がつながりやすくなる」と効果を確かめ合った。
仲間を求める
受講者には、団地住民も目立つ。広島市と同様に平地が乏しい長崎市は、高度経済成長に伴って山の手に団地が広がった。長崎市自治振興課の香田篤志主査(40)は「高齢化が進み、まちづくりのノウハウや仲間を求めている」とみる。
こうした講座などを通じ、団地同士の横の連携は着実に広がってきた。他の団地の取り組みに学び合う機運が高まっている。
山口会長は今、他の団地からも助言を求められるリーダーの一人になった。受講前から打ち込む「助っ人隊」も、県内外から視察が相次ぐ。4年間の地道な取り組みで、助っ人隊の役割は、生活支援の枠ではくくれないほどに発展した。
「ちょっと、声ば聞きたか」。お年寄りから寂しさを紛らわす電話や、家庭の悩みの相談も受ける。助っ人隊への信頼が深まり、高齢を理由に自治会を脱会する高齢者世帯はなくなった。
山口会長は、団地内外の仲間に繰り返し語り掛ける。「団地の暮らしを支えるのは住民同士の結び付き。自治会活動こそがライフラインだ」。そしていま、団地同士が手をつなぎ合う関係もまた、太い「命綱」になると信じている。
クリック 鶴の尾団地
長崎市中心部から約13キロにある。1980年代前半から開発が進み、現在約400世帯、約1100人が暮らす。自治会の加入率は8割以上。人口に占める65歳以上の高齢化率は、15・6%。
【写真説明】2月末にあった講座の最終回で意見を述べる山口会長(左から3人目)。開発から年数がたった団地には共通の課題が多い