ヤルタ会談～下半身不随の大統領

国連安保理での「拒否権」設定は、第２次大戦末期の１９４５年２月、ソ連（現在のウクライナ）クリミア半島のヤルタで、アメリカ・ルーズベルト大統領、イギリス・チャーチル首相、ソ連・スターリン首相が終結して行われた、いわゆる「ヤルタ会談」で合意されたことです。

このとき、フランス亡命政権の指導者で後の大統領となるド・ゴール将軍は呼ばれなかった。ルーズベルトが嫌がったかららしいですけど、なのでド・ゴールは「ヤルタ体制」打破を訴え西側にいながら反米的な独自外交を展開するのですね。

とはいえ、フランスは戦後も植民地はそのままだったし、ドイツやオーストリア占領にも参加しているのですが。

さて、ルーズベルトが下半身不随だったことは意外と知られていません。小児麻痺によるものです。しかし彼は鉄のギプスでなんとか上半身を支え、杖のみで直立し、車椅子姿をみせることはありませんでした。

しかし、まだ医学の未発達なこの時代、１２年間以上も大統領という要職にあり、かつ連合国の中心人物として激務をこなしていたルーズベルトに、鉄のギプスは容赦なくダメージを与えていきました。

そしてその締め付けは、彼に狭心症という新たな病気ももたらしていました。大戦末期のことです。

それでも彼は、最後の大統領選挙戦も就任宣誓式もギプスで立って行い、疲労困憊の体のまま、すぐに２万キロ以上も先のヤルタへと旅立つのです。

この健康状態の情報は、ソ連のスターリンのところへ行っていたのでしょうか。よくはわかりません。しかし、アメリカが会談場所を北アフリカなどアメリカから近いところを提案したのに対し、スターリンはあくまで遠いヤルタを指定してきたこと、これは間違いありません。

結局、ルーズベルトはこのヤルタ会談の２ヵ月後に死んでしまいます。それでも、ルーズベルトは必至でなにかを獲得しようとしていました。それは実現しました。しかし、この健康状態の中で獲得したものは、あまりに近視眼的なものだったのです。……続きは次回。

日本国連加盟５０周年。

今年は日本が国連に加盟してからちょうど５０年。１９５６年のことです。なぜ、終戦から１６年も経過してようやく国連加盟にこぎつけたか、それは日本の加盟に「ソ連」が反対していたからですね。

ただ、ドイツ（１９７３）や南北朝鮮（１９９１）に比べればはるかに早い。それは、いろんな要素、というか運のいいことがあったわけで。

まず、ソ連は１９５３年に独裁者スターリンが死に、西側諸国との「平和共存」路線を歩もうとするフルシチョフが実権を握っていたこと。そのため５５年ごろからいわゆる「冷戦の雪解け」がはじまっていたこと。

そして、日本ではアメリカとの緊密な関係を築いていた吉田政権から、「自主外交」を掲げる鳩山政権へと変わっていたこと。

鳩山首相は、吉田への対抗意識から「ソ連との国交正常化→国連加盟」を最優先に掲げ、これがなったと同時に健康のすぐれなかった鳩山は勇退するのでした。

ソ連と日本の指導者がもしフルシチョフ、鳩山でなかったら。そして、その動きをアメリカが最終的に認めなかったら（結構口出しはしていました）。日本の国連加盟は、もう少し遅かったかもしれません。

なぜソ連との国交正常化が条件だったか。国連加盟には、安全保障理事会の承認が必要だからです。そのため、「拒否権」を持ち日本加盟を阻もうとするソ連と、とりあえずの仲直りすることが必要だったのですね。

さて、この「拒否権」とはいったいどうやってできた制度なのでしょう。次回は、その話をしようと思います。