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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

SUZUKI CARRY が来院しました。その2

【申請】

 右前輪が壊れて外れてしまいました。

【初診】

 ・右前輪のステアリング部が破損して、タイヤが外れています。

 ・送信機の電池BOXのふたが一部破損しています。

 ・荷台後部の”あおり”が破損しています。

 

 

 ステアリング軸受部が破損して来院したのは、2件目です。1件目は、部品のひび割れでしたので副え木方式で治療しました。

今回は、完全に破断しています。

  

軸受部は、曲げ構造で強度を上げていますが、下面から上方への力に対しては強くはありません。今回は、ステアリング軸受部品を3Dプリンタで造形し、弱い箇所の厚みを増し強くします。

 

 

 電池BOXのふたが破損しています。とりあえずは、これによる問題はなさそうですが、治療をした方が良いでしょう。これも3Dプリンタで造形を考えたいのですが、1点懸念事項があります。

 

それは、電池BOXふたについているばね機構を熱溶解積層方式で、積層方向と同じ力が加わった時に強度が保てるかです。水平にして積層をすると、横方向からの力に対し積層が剥がれる方向であり弱くなります。垂直にして積層をするとばね機構が強くなります。これを避けるには、平たい形状のふたを垂直にさせて造形することも理論的には可能ですが、これでは平面がきれいになりません。

 

そこで、ふた全体を造形する前にばね構造部のみを造形して、強度の検証をしました。3Dプリンタのフィラメントは、PETGを使用しました。おもちゃの多くはABSという材料で射出成形されています。同じABSのフィラメントを使えば強くて良いのですが、プリント時に反りが起きてプリント安定性が低いのです。他方、良く利用されていてプリント安定性のある材料にPLAがありますが、残念ながら脆く壊れやすい性質があります。今回は、ABSのように強くて靭性のあるPETGを使用しますが、弱点としてプリント時に糸引きがしやすいのです。検証した限りでは、PETGでばね機構が実現しそうなことが確認出来ました。糸引きを完全になくすことは困難ですが、プリント条件を調整して少なくなるようにプリントします。

 

 

 3Dプリント後に糸引き箇所とサポート部を除去し微調整をします。

 

 黒く塗装することも考えましたが、手で持ち操作することを考えてあえて見送りました。

 

 後部荷台の”あおり”の固定部が破損して接着剤で補修した痕跡があります。”あおり”は、お持ちではありませんでした。

 ”あおり”については、遊びには大きなファクターはないので持ち合わせていたCARRYの荷台と交換しました。今回の荷台は別途治療方法を検討し治療したいと思います。

 

【治療後記】

 3D CADソフトは、FREE CADを初めて使用しました。時間はかかりましたが、なんとか所要の形状にすることができました。電子回路やプログラムによるシーケンスを想定して治療を進めるのも楽しいものですが、破損部を測定してからこのような目に見えるものを作り上げて、きれいに治まるのを感じるのも楽しいものです。図面を起こしながら設計時の工夫なども見えてきます。

 

【おまけ】

 家庭向け3Dプリンターの造形方式は大きく分けて、

  • 熱溶解積層方式(FDM法)

    熱で溶かした樹脂を積み重ねる方法

    初心者でも取り扱いしやすいです。

    フィラメントの種類や色が複数あります。

  • 光造形方式(STL法)

    光硬化樹脂に光を当てて積み重ねる方法

    光硬化樹脂種類は限られますが、FDM法よりは積層面がきれいです。

 の2つです。

 

 サポート材とは、

  たとえば張り出し部があるものを造形しようとする時、張り出し部は空中に浮いているのでサポートがないと自重で崩れてしまいます。そのため、崩れないよう支えを作り、造形後除去して所要の造形物ができあがります。

 糸引きとは、

 フィラメントを溶かしてノズルから排出するのですが、離れた位置に移動する場合フィラメントの排出を止めて移動します。このときノズル先端にある溶けたフィラメントを引いて移動するので、糸を引いたように樹脂が残ってしまします。これもフィラメント材料やプリント条件により程度は変化します。

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