【申告】
下を向きおしゃべりをしようとしたら、首がカタカタしだしました。
でも、おしゃべりが終わるタイミングでカタカタは 止まりました。
顔はカタカタが止まった時の状態で 下を向いたままです。
顔を下に向けないおしゃべり動作の時は いつも通りです。
手足そして首を左右に動かす動作も いつも通りです。
【診察】
関東地方からの再来院です。
この患者さんは、2022年9月末に頭の旋回時に首がカタカタ音がすると来院し、旋回モータを交換することで退院しました。
今回は、上下駆動モータを交換でしょうか?
持ち主様からの情報として、他にも電池交換期間や今回の症状を動画で送っていただきました。ロビのようなコミュニケーション型のおもちゃは、動作が単純ではなく条件により反応も色々変化します。そのため症状を定義して説明するのも大変です。持ち主様も前回の経験から動画を送ってくれたのでしょう。<(_ _)>
ところが、ロビがこんなやぶ医者の前でも良い子になって、症状が現れません。3,4日根気比べをしましたが負けてしましました。やぶ医者は現行犯で病状を確認しないと、悪魔の証明になってしまうので、代用特性で症状を捕まえ治療の効果を確認する必要があるのです。
嘆いていても先に進まないので、内部の検査を始めました。症状から推測される悪さ加減を、頭部基板のモータ駆動電圧、制御回路電圧を観察します。
この波形は、リセットボタンを押したときの頭部基板での6Vおよび4V電源の時間的な変化を表しています。理想的にはフラットであることです。しかし、モータが始動したり停止したりするとき、あるいはモータに異常が起き大電流が流れると電源ラインからの電流供給が追いつかず電圧値が画像のように下がるのです。朝晩のラッシュ時に車の速度が低下するのと同じですね。
①頭の上下駆動モータの交換を検討します。
指でモータ軸を回してみると、スムーズに回りません。交換前後の電圧変化画像です。
およそ0.4V電圧変動が減少していることが確認できました。
上下駆動モータを交換することにしました。これで、症状がなくなりましたと断言できないのが、現行犯で確認できていない弱さなのです。
②他に上下動作に影響しそうな可能性を検討します。
上下原点の突起に近い2本のフラットケーブルのフォーミングをし直しました。
③2本のフラットケーブルの圧着部で見られる芯線のはみ出しを切断しました。
④予防保全として、電池ボックスおよび制御基板までの配線(AWG28)をAWG26の太さの配線に交換しました。
これで、今回の症状に対する処置は終了です。あとは、1週間ほど経過観察をします。
ここで、改めてロビジュニアを観察すると両腕の動作音がいかにもロボットらしい(?)ギヤがきしむような音がします。また、両足の動作がいかにも重そうに動かしています。おもちゃ病院のドクターは、病気の患者さんと会うので元気な時の状態を知らないことが多いのです。前回は正常動作をしているので良しとしましたが、この音を何とか改善できないかと、見直しをしました。
両腕のモータからです。
モータ無負荷での電流比較をしました。
やはり、電流値が大きくなっていることが確認できました。新規モータに交換するとギヤのきしむような音もなくなり静かに動くようになりました。
最後は両足のモータです。1個のモータで両足を動かしていますので負荷が大きいのもやむを得ないところも有るのですが。
前回同様に両足を貫通している足支持軸を外してから、足を外します。
腕のモータと同じように電流値が大きくなっており交換しました。交換後は静かに動くようになりました。
両足ギヤボックスを止めるネジが3箇所あるのですが、タッピングネジを立てた跡がありませんでした。1箇所ロック機構があるのでギヤボックスが開くことはないのですが、固定もされていないのも事実です。これで良いのかなぁと前回は済ませましたが、今回はタッピングネジで締めました。
【治療後記】
症状の代用特性を現行犯で確認できていないため、半落ちでした。持ち主様で経過観察をお願いしたいと思います。
前回頭の旋回モータを交換しましたが、今回は残りの4個を交換しました。駆動音も静かになりこの状態が新品の状態なんだなぁと妙に納得しました。ロビジュニアシリーズの治療を重ねる度に、おおむね不具合原因が見えて来るものです。おもちゃなので半年間動けば良いのでしょうから、この程度の耐久性なのでしょう。ただ、毎日遊び続ける持ち主様にはモータ交換を続ける必要がありそうです。
【おまけ】
前回のカルテです。