[写真] 5番矢澤の犠牲フライで、3塁から村松がタッチアップして先制点を上げた。
三塁コーチは思わずセーフのポーズ、矢澤のバット処理に出た次打者の内野がチラっと見る。
2012年10月14日(日) 12:40~14:37 曇りのち小雨 無風 江戸川区球場
秋季東京都高校野球大会 3回戦
明大中野八王子 (西東京・八王子市) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 = 0
創価 (西東京・小平市 ) 0 0 0 1 0 0 0 2 X = 3
[ 投 手 ] 内野
[ 本塁打 ] 南(8回/左)
[ 三塁打 ] 矢澤(7回/右中間)
[ 二塁打 ] 内野(2回/左中間)
1番 (二) 奥
2番 (中) 村松
3番 (三) 南
4番 (右) 海老原 → (8裏/走)松下 → (9表/右)
5番 (左) 矢澤
6番 (投) 内野
7番 (一) 小野 → (8裏/一)荒幡
8番 (捕) 若林
9番 (遊) 大口 → (7裏/打)斎藤 → (8表/遊)川口
試合開始の直前から降り出した小雨が、グラウンドの熱気を冷やしていた。
気になるほどの雨量ではないが、守りの際の微妙な指先感覚が気にならないでもない。
一方でグラウンドの湿り具合は絶好のコンディションを作り上げ、イレギュラーは心配なさそうだ。
今日の創価は、シーズン始めからずっと同じだったスターティングメンバーを少し変えて来た。
それが意図するところは、おそらくトップバッターの出塁率の改善と、
打撃の良い内野を先発投手に起用し、得点力のアップが狙いではなかろうか。
12時40分、後攻めの創価のマウンドには、今シーズン初先発となる内野が上がった。
ワンボールの後、相手のトップバッター(左打者)は、いきなり痛烈なパンチを出してくる。
パチンと軽くミートした打球が・・・ 3塁線を鋭く襲った。
反応良くサードの南が、逆シングルでグラブをさし出す。
巧く捕球はしたものの、3塁のベース際に飛びこんだ勢いに体を持って行かれてしまい
ラインを数歩飛びだしたばかりか、体勢を大きく崩されていた。
しかし・・・ ここからが違った。
素早く体勢を立て直すと、ファーストの小野へストライク送球、
打者走者が左打者だけに、際どいプレーとなったが、間一髪でアウトにした。
これは凄い。初回の先頭打者から、もの凄いピッグプレーが出てしまった。
このプレーは、今日も波乱含みだと教えてくれているのだろうか。
それとも・・・ 今日は創価の守備陣がワンマンショーを見せてくれるということなのだろうか。
いずれにしても、目が離せない立ち上がりとなった。
南のファインプレーに気を良くしたはずだが、続く打者にはボールが先行しスリーボールワンストライク
しかし・・・ ここからが今日の内野は違った。
ストレートで力勝負を挑んで空振りの三振、続く3番打者には初球をライト前に巧く運ばれたが
4番を力勝負でねじ伏せ、見逃しの三振に打ち取る。
ヒットを1本打たれはしたが、上々の立ち上がりを見せた内野
ボールは走ってるし、変化球も切れている。
その裏、明大中野八王子のマウンドにはエースナンバーの篠原が上がる。
小柄だが、堂々としたオーバースローでテンポが良く、選手名簿の173センチよりは大きく見せる。
スピード感は、さほど感じないもののピッチングは強気で気持ちが良い。
1回裏、2番から一つ繰り上がった先頭打者の奥がバッターボックスに入る。
強烈な先制パンチをあびせたいところだが、なんと1球も振らずに3球三振
球筋を見極め、後続の打者に伝えたいのだろうが・・・ これはいただけない。少しでも粘りが欲しい。
2番に入ったのは、今シーズン初スタメンとなった小柄な一年生の村松(左打者)
村松も球筋を良く見ていたが、こちらは3球投げてスリーボール、ストライクを一つ見送った後、
外のボールに手が出たというか、軽く合わせたというか、レフト定位置への平凡なフライ
二死走者なしで、3番の南が続く。
三振を恐れるほどの球速ではないのに、1番2番が続けて中途半端な打席に終わっており
クリーンナップの動向が気になってていたら・・・ 南は、いきなり初球を叩いた。
結果は、センターの真正面に糸を引くような痛烈なライナー、殆ど定位置で動くことなく捕球されたが
クリーンナップは甘いボールを見逃さない。そんな、積極果敢な姿勢を確認しただけで
たかだか一つのアウトだけど、つい数分前に感じた不安は・・・ 既に頭の片隅から消えていた。
約10分程度の攻防だが、1回の裏表に凝縮された両校のベンチワーク
これは、腹の探り合いなのか、それとも・・・ ジャブの打ちあいなのか。
試合は回を重ねるごとに、目が離せない展開で進んで行った。
[写真] 応援団長君(写真左)の熱い声援を受けて力投する内野投手(写真右)
まずまずの立ち上がりを見せた両投手だったが、最初のピンチを背負ったのは創価の内野だった。
3回表、明治の先頭打者がセンター前にクリーンヒットを放つ。
やや左中間寄りの当りだった。この打球をセンターの村松がダイビングキャッチを試みる。
だが・・・ 村松の気持ちは分かるが、打球は惜しいとはいえないぐらい手前で弾んでいた。
レフトの矢澤が素早くカバーに来てたので、幸いにも長打となることはなかったが
イニングの先頭打者に、ギャンブルを仕掛けるのは、正直言って無謀だと思う。
9回裏、二死満塁で同点、もう1点もやれない場面なら躊躇する必要はない。
しかし、どちらが選手点を取り、主導権を持つか、
その鍔迫り合いの真っ最中、自ら傷口を広げかねないプレーは、やはり控えるべきだろう。
次の打者は手堅く送って一死2塁、迎える打者は初回に3塁線を襲う打球を放った1番
なかなかの好打者とみたが、今度はミートではなく、上から強めに叩きつけて来た。
打球は再びサード前に転がるが、大きなバウンドとなってサード南の頭上を超える。
一瞬「やられた。」と思ったが、サード前の打球かが幸いした。
さらには、レフト矢澤のバックアップも速かった。
2塁走者は、頭上を超えたのを確認してからスタートを切ったため、本塁までは戻って来れなかった。
一死13塁、強打か? それともスクイズか?
2球目だった。3塁走者がスタートを切った。創価バッテリーは外に外して来た。
しかし、バッターはスクイズの構えを見せるが当てには来なかった。
サインは、おそらくスクイズだったと思う。
打者は外されたボールに届かないと判断したのか? それともストライクスクイズだったのか?
はたまた、セーフティスクイズだったのか?
その真意は不明だが、飛びだした3塁走者を挟んでアウトに出来たことは大きい。
その後、内野はスクイズをしなかった打者を四球で歩かせたが、これも悪くない判断だったと思う。
前日の試合で、スクイズを空振りした6番小野が、直後に奮起してタイムリーを放った経緯もある。
内野は・・・ 何かを感じたのではなかろうか。
二死12塁からの仕切り直しは、明治の3番打者
内野は力勝負を挑みショートゴロ、大口が2塁ベース寄りに走りながら、これを軽快に捌いた。
サード頭上を超えるヒットと、スクイズの見逃しは、ラッキーとアンラッキーの行って来いだが
矢澤の素早いバックアップ二つが、記録には残らない隠れたファインプレーだったのではなかろうか。
そして、ピンチの後にチャンス有り。創価のチャンスは4回裏に巡って来た。
この回の先頭打者となる2番村松がセンター前ヒットで出ると、ベンチは勝負強い3番南に犠打を指示
一死2塁で4番の海老原、ここまで眠れる大砲だった海老原に、ついに1本出た。
しかも・・・ 超強烈な当りだった。
打球が上がっていれば、間違いなくバックスクリーン直撃だったと思う。
これが海老原の打球だ。同じ高校生とは思えない打球である。
ジョークの一つでも言うとすれば
ボールにノーシンでも飲ませなければ、頭痛が治らないぐらい力任せシバかれていた。
唯一残念なことがあったとすれば、あまりに打球が強すぎて
抜群のスタートを切った村松を、サードコーチが止めるというハプニングがあったことだろう。
だが、それも杞憂に終わる。
5番矢澤がレフトに犠牲フライ、欲しかった、欲しかった、待望の先取点が入った。
その後は、5回表に明治は四球を足がかりに、6回裏に創価はエラーを足がかりにチャンスがあり
ともに2塁へ走者を置いたが、決め手を欠き得失点には至らず終盤に入った。
[写真左] ヨシッ! 主砲・海老原に待望の1本が出た。 [写真右] 今日も三塁打を放った5番矢澤
7回裏の創価は、先頭の5番矢澤が低いライナーで打ち遊間を真っ二つに割る三塁打から始まった。
願ってもない追加点のチャンスに、バッティングの良い6番内野が向かうが、腰に死球を受けてしまった。
悔しそうな顔で1塁へ向かうが、応援する側にとっては、バッティングよりもまずピッチング
ピッチングに影響がなければ、チャンスが広がったと素直に喜べば良い。
だが・・・ ここから相手投手の気迫と粘りが凄かった。凄かったというより見事だった。
スクイズのタイミングを図る創価ベンチを見透かしたかのように
ストライクを先行させると、巧みな牽制を織り交ぜてサインを出させない。
7番小野、8番若林が、立て続けにボール気味の釣り球にひっかかって空振りの三振
9番大口には代打の斎藤を送るが、緩い変化球を見逃して三振
なんと三者連続の三振、グラウンドにボールが飛ばなきゃ・・・ 得点は入らない。
4回裏はピンチの後のチャンスで1点を挙げただけに、その裏返しを考慮すれば・・・
8回表の守りは慎重に行きたかったのだが、想定外のアクシデントが起こってしまった。
三振とピッチャーゴロで簡単に二死とするが、続く打者の当りは三遊間の真ん中への緩いゴロ
サード南が軽快に捌くが、送球の際に足が流れてしまい、本塁寄りに逸れてしまった。
これをファーストの小野が捕球して、打者走者にタッチに行こうとするが
捕球の直前に交錯して、左手を押さえたまま、うずくまってしまい立ちあがれない。
辞退の深刻さを即座に判断したベンチは、小野に変えて荒幡をファーストに送る。
審判団の指示は、治療のためのタイムだった。
しかし、ベンチはタイムを選択せずに選手交代を選択した。
試合開始前から降り続く小雨も、既に2時間が経っていた。
グラウンドコンディション等にさし障りはないが、ここで暫らくタイムを取ることで
守備に就く選手の体が冷えてしまうことを心配したのではなかろうか。
結果は別として、これは良い判断だったのではなかろうか。
二死1塁から試合は再開された。続く打者は痛烈な当たりでライト前に弾き返して来た。
二死12塁、ピンチは拡大したが、内野は大きく深呼吸をして次の打者に向かう。
力勝負、それしかない。
強気に攻めたピッチングで詰まらせた打球は、ピッチャーの右後方、サードの前に高いバウンドで弾む。
内野が自ら取りに行った。逆シングルでグラブを高くさし出し捕球すると、
そのままの勢いで3塁へ送球し、ホースアウトを狙おうとしたが・・・ サードの南も飛び出していた。
3塁ベースはガラ空きの状態だった。
いま、ここから2塁走者とよーいドンしても・・・ 間に合わない。
とっさに早判断した内野は、振り向きざまに今日一番ファーストボールを1塁へ投げ込んだ。
打者走者がヘッドスライディングをする。ファースト荒幡のミットが音を立てる。
それは、ほぼ同時に見えたが・・・ 1塁塁審の右手が大きく上がった。
これもビックプレーだ、もの凄いプレーだと思う。
もうこれで、今日は負けはない。そう確信した瞬間でもあった。
[写真] 試合を決めたツーランを放った3番南(写真左)と、ゆっくりホームインする3塁走者の奥(写真右)
そして、今度はピンチの後のチャンスが8回裏の創価に巡って来た。
この回の先頭の1番の奥が渋く三遊間を割って出ると、2場の村松が手堅く送って一死2塁
さらに牽制の悪送球があって、一死3塁で3番南がバッターボックスに入る。
7回に三者三振に打ち取られただけに、ここはスクイズがあるかもと思いきや
相手投手も強気でストライク先攻で攻め、全くもって遊びがない。
ワンボールツーストライクから、辛うじてバットに当てたファールの次のボールだった。
カシッ、小さな音だった。渇いたような金属音ではなかった。石を叩きつぶしたような音だった。
南と相手キャッチャーは、ともに同じ方向を見つめていた。相手レフトは見上げただけだった。
弾丸ライナーの2点ホームランが、レフトスタンド後方のネットの中段に突き刺さっていた。
ヨシッ、これで勝った。完全に勝った。
そう思ったが楽には勝たせてくれない。これが高校野球だ。最後の最後でもう一つ波乱が起こる。
9回表の明治の攻撃、先頭打者をファーストゴロに打ち取るが
ベースカバーに入る内野へトスするタイミングで・・・ よもやの落球がでてしまった。
無死1塁、内野は「ドンマイ」と荒幡に軽く手を上げ、小走りにマウンドに戻ると
次の打者を力勝負でねじ伏せ、ショートゴロに打ち取る。
ショートには、ファーストの荒幡と同じく8回表から守備に就いた川口が入っていた。
やや腰高に見えたが、体の正面で大事に捕球すると、2塁ベースに入ったセカンドの奥にトス
さらに奥から荒幡に送られて、綺麗なダブルプレーが成立した。
最後の打者をピッチャーゴロに打ち取り、1塁へ送球した直後に内野は小さくガッツポーズ
堅実な守備と強い精神力が要求される場面で、当り前のことを当り前にサラリとやってしまう。
バッテリーも、内野陣も、もう大丈夫だ。昨日の守備の乱れは、既に過去のことになっている。
それで良い。それで良いと思う。
練習して来たことだけ信じて、前を向いてプレーだけに集中すれば・・・ 自然に先は開けてくる。
「練習量は嘘をつかない。」という名言もある。
頑張れ創価 風は吹いている。
1 表/明治 三ゴ、三振、右安、三振
裏/創価 三振、左飛、中直
2 表/明治 二飛、左飛、左飛
裏/創価 一ゴ、一直、左中間二、二ゴ
3 表/明治 左安、犠打、左安、盗塁、スクイズを外して挟殺死、四球、遊ゴ
裏/創価 右飛、遊ゴ、右飛
4 表/明治 三振、遊ゴ、遊ゴ
裏/創価 中安、犠打、中安、左犠飛1点、中飛
5 表/明治 三振、左飛、四球、捕逸、三ゴ
裏/創価 遊ゴ、遊ゴ、遊ゴ
6 表/明治 遊ゴ、三振、三振
裏/創価 遊ゴ失、犠打、投ゴ、三振
7 表/明治 右飛、三振、三振
裏/創価 右中間三、死球、三振、三振、[代打/大口→斎藤]三振
8 表/明治 [選手交代/斎藤→川口]、三振、投ゴ、三ゴ失、[選手交代/小野→荒幡]、右安、投ゴ
裏/創価 左安、犠打、左本2点、四球[代走/海老原→松下]、中飛併殺
9 表/明治 [守備変更/松下・走→右]、一ゴ失、遊ゴ併殺、投ゴ 試合終了
また、お疲れ様です。
この試合は球場に行けず、応援掲示板で楽しんでました。^_^;
前日とは、うって変わって締まったナイスゲームだったようですね。
前日はナマで見てましたが、誓球の空さんの指摘どおり「球がきちんと握れていない」状態でした。
「ボール回し」でミスしたり・・・。
選手もストレスがたまったのでしょう。
ホームランを打った内野君のニコリともしない表情が物語ってました(^.^)
翌日にキッチリ修正したあたりはさすがですね。
いよいよ三高戦ですね~、楽しみだ~\(^o^)/
※海老原くん、リキみはとれてましたか?
内野投手は、何度かピンチがあったのですが、もの凄く落ち着いてました。
また、守備陣も東亜戦とはまるで別人でした。
エラーは二つでましたが、これが無くなれば本物ですね。
それと、海老原の当りは凄かった。
二塁走者の村松は良いスタートを切ったのですが、あまりに打球が速すぎて、3塁コーチが止めてしまいました。
実際は、相手センターの返球が良くなかったのでホームイン出来てたように見えましたが
3塁コーチが止める気持ちも分かるような当りでした。
大変申し訳ございませんが、たったいま帰宅したばかりなので、続きは明日以降でご容赦下さい。