[写真] 8回に同点二塁打、9回は再逆転の三塁打を放った5番矢澤、満面の笑みで試合後に応えてくれた。
2012年10月13日(土) 12:32~15:02 晴れ 微風 府中市民球場
秋季東京都高校野球大会 2回戦
創価 (西東京・小平市) 0 0 0 2 0 0 1 4 3 = 10
東亜学園 (西東京・中野区) 0 0 0 2 2 2 0 3 0 = 9
[ 投 手 ] 樽海(5)‐内野(4)
[ 本塁打 ] 内野(7回/左)
[ 三塁打 ] 矢澤(9回/右)
[ 二塁打 ] 奥2(4回/中・8回/中)、矢澤(8回/右中間)
1番 (中) 松下 → (8表/打)荒幡 → (8裏/中)村松
2番 (二) 奥
3番 (三) 南
4番 (右) 海老原
5番 (左) 矢澤
6番 (一) 小野
7番 (捕) 若林
8番 (投) 樽海 → (6裏/投)内野
9番 (遊) 大口 → (6裏/遊)川口
あっという間に秋がやって来た。
夕暮れ時に聞こえていたカナカナカナのヒグラシの鳴き声は、リンリンリーンの鈴虫に選手交代し
日に日に深まる秋は、耳でも楽しむことが出来るようになった。
晩夏にブロック予選を突破して早や三週間、いよいよ今日からが正念場の本戦
対戦相手は今春に苦杯を喫した東亜学園、試合会場は昨秋に苦杯を喫した府中市民球場
ジンクス的には、いろいろとあるが、越えなきゃならない壁なんだから・・・ 越えるしかないだろう。
快晴で微風、絶好の野球日和となった府中市民球場
ネット裏には屋根があるが、日陰に入らないと我慢できないほどの暑さではない。
秋の日射しが、直角に射し込む12時32分、注目の一戦が始まった。
序盤は東亜ペースで進むが、先手を取ったのは押されてた創価だった。
1回、2回と三者凡退に終わった創価打線、3回には若林が初ヒットで出るが後続が続かない。
一方の東亜は、エラー、ヒット、四球と毎回塁上を賑わすものの、要所は樽海が締めていた。
試合が動いたのは、互いに2巡目となった4回、
この回の先頭は2番奥、真ん中高めのストレートを上手く上から被せると、
打球は、やや前目に守っていたセンターの頭上をあっという間に超えて行った。
続く3番南は、外のストレートを上手くミートして12塁間を真っ二つに割り無死13塁とする。
期待された4番海老原は三振に倒れるもののも、南が前進守備の隙間をついて盗塁を決め一死23塁
5番矢澤は積極的に初球から行くが、ややさし込まれた緩い当りのショートゴロ、
前進守備のショートの正面だったが、3塁走者奥の上手いベースランニングにも助けられて、
これが野選となり1点を上げる。
6番小野は初球からスクイズに行くが、なんと・・・ 空振り
3塁走者の南は挟まれてしまうが、3本間で2度3度と粘る間に1塁から矢澤が3塁まで進塁する。
ここで小野がミスを帳消しにする上手いバッティングを見せた。
外のストレートを上手くミートすると、打球は12塁間を抜け2点目が入った。
ブロック予選の場合なら、もうこれで創価ペースなんだろうが・・・ 今日は少し違った。
何となくソワソワ感みたいなものがあって、ボールをしっかり握らないまま次のプレーに進み、
結果的にそれが送球ミスやタッチミスとなり、失点への負の連鎖となっていた。
4回裏、東亜は一死から高いバウンドのセカンドゴロを打つ。
セカンドの奥は、上手くタイミングを合わせて捕球するが、1塁への送球が少し高い。
送球はファースト小野のミットの先からこぼれてしまった。
小野と奥の二人の距離感が若干近かったのだろう、1塁側スタンドから見ている限り
捕球できないほど高い送球ではなかったように見えたが、先制した後だけに気になるプレーとなった。
そして、この何か変なソワソワ感は、今度はバッテリーにも連鎖する。
一死1塁から、樽海は次の打者を歩かし一死12塁
続く打者は送る構えで来てるのに、今度は変化球が低くワンバウンドするとキャッチャー若林が後逸
仮に犠打を決められたとしても二死23塁、アウトカウントが一つ取れていたのに
相手は何もしてなくて、アウトカウントも増やすことも出来ず進塁だけを許してしまった。
一死23塁、創価の守備陣は前進守備を敷く。
次の打者はセカンド奥の右を痛烈な打球を飛ばすが、ここは奥が横っ跳びでグラブの先に引っ掛けた。
1点取られはしたが、ナイスプレーでなんとか二死までこぎつける。
しかし、次の打者へ投げ急いだことは今後の課題にしなくちゃいけない。
折角追い込んでいたのに、勝負球に選んだストレートを渋くセンター前に落とされてしまった。
イニングが浅いので、特に取り上げるほどでもないが・・・ もう少し慎重に粘りのほしい場面だった。
高校野球にミスは付きもの、だから味方のミスを粘りのピッチングで凌ぐ。
これがエースの条件だから・・・ 頑張れ、樽海
[写真] 8回に逆転打を放った7番若林(写真左)と9回に逆転打を放った5番矢澤(写真左)
ソワソワ感は、記録に残るエラーと、記録には残らないちょっとしたミスになって表れていた。
5回の東亜も一死からだった。
四球で歩かせた後、ライト前に上手く打たれて一死12塁とされると
続く打者の当りはサード南の後方にフラフラと上がった。
微妙な位置だったが、捕球態勢に入ったところが外野の芝生にほんの少しだけ入っていた。
よってサード塁審は、インフィールドフライのコールをしなかった。(これは正しい判断だと思う。)
おそらく秋の日射しが目に入ったのだろう。
スタンドから聞こえた「あっ・・・ 」との声とともに、南のグラブからボールがこぼれていた。
それでも直ぐ後ろに居たレフト矢澤がボールを捕球すれば、サードでホースアウトは取れていたのだが
サードの南が後ろに向き直って捕球に行ったため、結果はどこにも投げられなくなってしまった。
一死満塁、記録に残るエラーと、記録には残らないエラーが二つまとめて出てしまった。
流れと言うのは恐ろしい。
樽海は次の打者を詰まらせたものの、打球はセンターの前で弾み2点を追加されてしまった。
近藤監督は、6回から樽海に変えて内野をマウンドに送って来た。
内野はいきなりレフト線に二塁打を打たれるが、後続をなんなく打ち取り二死2塁
続く打者もショートゴロに打ち取るが、今度は大口の送球が暴投となって1失点
さらに次の打者の時に、低めの変化球を若林が横に逸らして二死2塁
低めのショートバウンド気味の変化球は・・・
ピッチャーにとっても、キャッチャーにとっても配球パターンに組込まれており
所謂、振らせるボールであって、空振りを取るボール
これを見逃されるのは居たしかたないが、
後逸していは、投げるボールは無くなりはしないが、配球パターン的には単調になってしまう。
この冬、キャッチャー若林の最大の課題は・・・ これの克服だろう。
内野は次の打者にヒットを打たれてしまい、さらに1点を追加される。
内野が打たれたというよりは、試合の流れが打たせたといってもいいような切なさがそこにはあった。
中盤6回を終えて、6対2で4点のビハインド
6点取られはしたものの、投手の自責点は「0」と言うところに・・・ 野球の怖さがあった。
[写真] 犠打を2塁でアウトにしたサード南(写真左)とキャッチャーフライを取った後の若林(写真右)
4点差で迎えた7回表、創価の攻撃は既に二死
バッターボックスには、前の回からマウンドに上がった内野が入っていた。
高めのボールをひと振りした次のボールだった。
心地よい金属音が、スタンドにこだました。
その金属音が消えかかる頃、打球はレフトスタンド後方の木立の中に消えていた。
1点返した。まだまだ諦める訳にはいかない。
さぁ・・・ 反撃の狼煙を上げよう。
8回表、一死から2番奥が再びセンターの頭上を破る。
一死2塁から3番南、やや詰まり気味のゴロが三遊間にころがった。
捕球寸前のサードの目の前を2塁走者奥が通過した。
これが目に入ったかどうかは定かじゃないが、
堅守を見せていた相手サードの送球がワンバウンドとなってファーストが後逸するエラーとなった。
それを見ていた3塁走者の奥が、小躍りしながら本塁へ戻って来て1点を返す。
さらに4番海老原、ここまで抑え込まれていたが、相手投手の制球が乱れるから野球は恐ろしい。
ここまで無四球だったのに、スリーボールワンストライクから投球が大きく外れた。
スタミナ切れと見たのか、それとも弱気になったとみたのか・・・ 東亜ベンチは躊躇なく動いた。
ピッチャー交代、1番から10番だが、タイプは左の軟投派であまり変化は感じられない。
二死12塁でバッターは5番矢澤、それはまさに一閃といって表現した方が適切だろう。
上から被せ、痛烈に叩いた打球が右中間を破り、あっという間にフェンスに到達していた。
2塁走者南に続いて、1塁から海老原も帰って来た。
6対6、追いついた。ついに追いついた。
贅沢を言わせてもらえれば、矢澤には3塁まで走って欲しかったが、
まだ一死だけに、大事を取ったのも分からんではない。
6番小野はファーストゴロに倒れるが、矢澤は3塁へ進み二死3塁
続くのは、今日当っている7番の若林、けっして良い当たりではなかった。
上から叩きつけた打球がピッチャーの前で高くはずむと、
そのまま2塁ベースの上も通過してセンター前に転がる。
渋い。本当に渋い当りだが・・・ ジャスト二遊間、
ピッチャーも、セカンドも、ショートも、届きそうで届かない。取れそうで取れない。
7対6、この回一気に逆転をした。
8回表で捉え、さらに逆転、普通のドラマなら、このまま・・・ なんだろうが
今日は、これから二転三転するから驚きを隠せない。
[写真] 大量失点はあったが粘りに粘った創価の投手陣、樽海投手(写真左)と内野投手(写真右)
8回裏の東亜、内野は先頭打者をサードゴロに打ち取るが、次の打者にはボールが先行して歩かすと
一死1塁から次の打者の当りは、サード南の前に小飛球となってフラフラっと上がる。
南はダッシュよく突っ込んで来たが、直接捕球は無理と判断した。
だが・・・ 後の判断が拙かった。打球の回転を見たのだろう。
ファールにしようとした判断がミスとなり、打球は3塁ベースを超えて転がり内野安打
何でもない当りだった。
ワンバウンドで捕球して、直ぐに1塁へ送球すれば際どいプレーだが
二死2塁からの再スタートが出来る場面だった。
弱気になったとは思いたくないが・・・ ソワソワ感が、まだ創価の内野陣を苦しめている。
モヤモヤ感を引きずった内野は、次の打者を歩かせてしまい一死満塁とピンチはさらに拡大
それでも内野は粘った。続く打者はレフト定位置へのフライに打ち取る。
犠牲フライになるかどうかは微妙な位置だった。
東亜の3塁走者は、躊躇なくタッチアップをする。
肩の強いレフトなら直接本塁へ送球するのだろうが、ショートを中継して返球はストライクだった。
「アウトだ。」そう思った矢先、タッチを焦ったキャッチャー若林のミットからボールが転がる。
アウトかセーフかは微妙だが、キチンと捕球していたら際どかった。
結果としてのアウト・セーフは仕方ない。
しかし拙かったのは、ボールを後ろに逸らしたことで2塁走者と1塁走者を進塁させたことだろう。
キチンとボールを握って次のプレーを行う。
今日の創価は・・・ それが悉く失点につながっていた。
それは記録には残らないミスだけど、続く打者にライト前タイムリーを打たれ
再び2点差とされただけに、次は必ず修整しなければならない課題だ。
[写真] 試合終了後、丁寧にグラウンド整備する南(写真右)と小野(写真左)
9回表、2点を追う創価の最後の攻撃は、途中出場の9番川口から始まる。
ここまでヒットの数では創価だが、与えた四球とミスったエラーの数でも創価が多く。
タイムリーを打たれたように見えはするものの、
失点の切欠は四球とエラーで、実は樽海も内野もそんなに打たれているわけではない。
世の中には、帳尻を合わせるという言葉がある。
2番手で上がった左投手の制球が突如乱れ、川口を歩かせると、次の途中出場の村松にもスリーボール
ここで東亜ベンチが再び動き、ピッチャー交代を告げる。
右のオーパースローが出てくるが、この投手もストライクが入らない。
村松への初球はストライが入ったが、次のボールが外れて歩かす。
さらに2番奥には全くストライクが入らず、ストレートの四球で歩き無死満塁
バッターは3番南、相手はゲッツーポジションで1点OKの守備陣形を敷いていた。
ところが、南にはストライクが先行する。
南は内角のストレートに詰まりショートゴロに打ち取られるが、ゲッツーだけは辛うじて免れた。
一死13塁で4番の海老原、外野フライで同点の場面だが、打球は高く上がった内野フライ
一死13塁だけにインフィールドフライはないが、今度はこの打球を東亜のサードが落球する。
しかし、場面は好転しない。
3塁走者の村松は本塁に戻れないばかりか、南は2塁でホースアウトとなり二死13塁
続くバッターは5番の矢澤、ツーボールツーストライクと追い込まれていた。
あとストライク一つ、あとアウト一つまで・・・ 追い詰められていた。
スタンドの視線は、ピッチャーとバッターの二人に二分されていた。
ベンチ入りメンバーで、ただ一人創価中出身の矢澤が、
次の瞬間に底力をみせた。プレッシャーを見事に跳ね返した。
低いライナーが、あっという間にライトの頭上を超えて行った。
打球が速かっただけに、1塁走者の海老原が本塁へ突入するのは微妙だったが
相手キャッチャーが立って捕球するのとほぼ同時に、
スライディングした海老原の左手がホームベースを叩いていた。
10対9、再び逆転して9回裏のマウンドに内野が上がる。
先頭打者の打球は、強い当りだったがショートの正面に飛ぶ。
ところが捕球態勢に入った川口の手前で、大きくイレギュラーするとレフト前に転がってしまった。
無死1塁、ここで東亜はセオリー通り送って来る。
一死2塁、内野が粘る。次の打者を三振に取って、ツーアウトまでこぎつけるが、
続く打者の時に、またもや低めの変化球が暴投となって二死3塁、ピンチがまた一つ拡大してしまった。
もう、暴投もエラーも許されない。
開き直った内野は、強気にストレートで勝負をかけると
やや芯を外した打球がセカンドの正面に飛んだ。
「あっ」と思ったのは、セカンド奥の守備位置が少し深かったこと。
さらにイレギュラーも怖い。
だが・・・ セカンドの奥は勇敢だった。
思いっきり良く前に出ると、慎重にバウンドを合わせて、この打球を捌く。
15時02分、1塁の塁審の右手が上がった。「アウトォォォ・・・」
前半は投手戦、中盤は東亜ペース、後半は二転三転
感動と・・・なぜか切なさが残る2時間30分のゲームが終わった瞬間だった。
10対9、乱打戦と言えば確かにそうだが、ひと言でそう表現するのではあまりに勿体ない。
意地と意地、気合いと気合い、執念と執念の・・・ 攻め合いと凌ぎ合い。
鍛えられた球児が繰り広げた一つのドラマ
絶対に勝ちたいと思った方が・・・ 勝つ。
本当に際どい試合だったが、勝敗の分岐点はそこにあったような気がする。
たくさんの課題を確認することが出来た試合だった。
でも・・・ 負けないってことは、強いってことだから、もっと自信を持ってもいいと思う。
次の試合まで、既に20時間と少々
残された時間は少ないが、ゆっくりと体をケアして・・・ 明日も頑張れと申し上げたい。
1 表/創価 三振、三ゴ、中飛
裏/東亜 捕飛、一直失、三振(盗塁死、三振ゲッツー)
2 表/創価 三振、三ゴ、三振
裏/東亜 三ゴ、右安、三振、三振
3 表/創価 右安、犠打、三振、二飛
裏/東亜 四球、犠打失(三ゴ)、犠打、暴投、中飛
4 表/創価 中二、右安、三振、遊ゴ(野選)1点、挟殺死(スクイズ空振り)、右安1点、中安、中飛
裏/東亜 右飛、二ゴ失、四球、暴投、二ゴ1点、中安1点、一ゴ
5 表/創価 投ゴ、三振、三振
裏/東亜 三直、四球、右安、三飛失、中安2点、二直併殺
6 表/創価 遊飛、遊ゴ、遊ゴ
裏/東亜 [選手交代/樽海→内野]左二、犠打失(投飛)、三振、遊ゴ失1点、[選手交代/大口→川口]
暴投、左安1点、中飛
7 表/創価 遊ゴ、三直、左本1点、三振
裏/東亜 二ゴ、中飛、三振
8 表/創価 [代打/松下→荒幡]投ゴ、中二、三ゴ失1点、四球、右中間二2点、一ゴ、中安1点、右飛
裏/東亜 [選手交代/荒幡→村松]三ゴ、四球、三安、四球、左犠飛1点、右安2点、三飛
9 表/創価 四球、四球、四球、遊ゴ1点、三ゴ、右三2点、遊飛
裏/東亜 左安、犠打、三振、暴投、二ゴ 試合終了
まったく持って、その通りだと反省しました。
いつも、ご父兄や生徒さん達とは、少し離れたところで観戦しており、応援の様子が死角となっていました。
明日の試合では、応援も意識しながら観戦させていただきます。
申し訳ございません。