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FPと文学・エッセイ 〜是れ日々なり〜

ライフプラン、資産設計のほか、文学・社会・芸術・文化など気まぐれに日々、FPがつづるエッセイ。

怪人二十面相! 僕らは少年探偵団だ

2009-01-13 00:06:01 | 芸能・映画・文化・スポーツ
日本の超人ヒーロー映画

「K-20 怪人二十面相・伝」を観てきました。
「スーパーマン」「バットマン」「スパイダーマン」と、アメリカでは超人ヒーローものが映画化されましたが、映像、アクション、ストーリーとも、これはハリウッド映画に肩を並べられるのでは、と思いました。CGではない実写に近い、ほぼ生の人間の重量を感じさせた上での速い動きの闘い、これは上級の格闘技を思わせるものです。それに、「ALWAYS 夕日の三丁目」(同じスタッフが製作担当)を思わせる昭和期のディテールと現実感、日本の娯楽映画もここまできたかと、退屈しないで観させてもらいました。

ただ、映画の原作小説『K-20 怪人二十面相・伝』を読んでいないのでなんとも言えませんが、ことこの映画に関しては、元祖・江戸川乱歩の「少年探偵シリーズ」に出てくる怪人二十面相、明智小五郎と切り離して観たほうがいいでしょう。(私自身は、やはり少年期に夢中になって読んだ「怪盗ルパン」のイメージに近かったです)。

元祖・二十面相と明智探偵

昨年暮れ頃、ポプラ文庫から江戸川乱歩の「少年探偵シリーズ」が刊行されました。『怪人二十面相』『少年探偵団』『妖怪博士』『大金塊』『青銅の魔神』『サーカスの怪人』。どれも怪人二十面相と明智小五郎、そして少年探偵団が登場します。これも映画「K-20」のおかげです。映画キャンペーンのためか、二十面相本がいろいろ出ています。

その中で、上記ポプラ文庫6巻は別格ものです。最初に刊行されたポプラ社の「少年探偵シリーズ」は、今でも図書館の棚にあります。おそらく、昭和の初版本に近いものではないでしょうか。僕らが小学校に上がった時に読んだのが、このシリーズだったのです。装丁、挿絵、活字の組版、すべて当時実物のままで、今また出たのです、復刻版が文庫の形となって。

書店に出ている江戸川乱歩全集をみると、今はもう、装丁も挿絵も違います。僕らの二十面相、明智小五郎、小林少年といえば、ポプラ社シリーズの挿絵画家・柳瀬茂氏の描く二十面相、明智小五郎、小林少年なのです。映画やテレビで何度も映像化されましたが、元祖のイメージを超えることはできないようです。そこに、このシリーズ文庫本です。思わず買ってしまいました。残りの巻は刊行されるのでしょうか。

文学的評価とか、小説としての出来とか関係ありません。ストーリーも覚えていません。幼少期に遊んだ道端や広場を、ずっと大人になってから歩いて懐かしむように、どこかの大屋敷の塀や庭の形、木々と花、隠れ道、縁の下、屋根の上、川伝い、遊び場の舞台となったすべて一つ一つを思い出すように、少年時の自分を探訪しながら毎日寝る前にこのシリーズをゆっくり読んでいます。

小林少年は大人になってもヒーローだった?

あの頃、僕らはみんな「少年探偵団」でした。学校が終わって、夕飯食べたあと、わざわざ外に出て行き、暗い夜道をわくわくしながら歩いたものです。突如、二十面相が現れ、事件か・・・? 美しい令嬢がさらわれていたら・・・。怪人二十面相は、高価な宝石や美術品を盗むが、決して人を傷つけない。芸術的に、そして魔法のように盗みを完結する。明智探偵と同様に大ヒーローでした。

中学に上がって、何かの授業で紙を配られ、先生に「尊敬する人の名前を書きなさい」と言われました。私は、まだ想像界に浸る幼少さが抜けず、「小林秀雄」と書きました。少年探偵団の団長です。明智探偵は、小学生の探偵団員を立派な大人として扱い、事件解決にも協力させたのです。その団長です。今なら、ちょっと危険に思えることでも(実際は危険でもなんでもなくても)、危険な目に子どもの身を晒すなんて、と明智探偵に親が目くじら立てるでしょうね。

そのうち、自分の尊敬する人物が「探偵小説に出てくる架空の探偵団長だなんて、中学生にもなって、あまりに子どもっぽすぎやしないか」、と日がたつにつれて、だんだん恥ずかしくなってきました。大人になって、だいぶたってから思い出したところ、私が書いた「小林秀雄」という名前は、少年探偵団の団長「小林芳雄」の間違いでした。

小林秀雄といえば、日本文学界最高の批評家・文学者だったのです。えっ、と思い返したとき、顔が紅くなりました。中学に上がったばかりの小僧が、大学文学部の学生でもあまり読んだことのない偉い文学者の名前を「尊敬する人物名」として書いていたなんて。あの時の先生は私のことを、「小林秀雄だなんて、読んだこともないくせに生意気な」と、思ったことだろうか・・・。


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