野鳥にまつわるお話

野鳥に関するいろいろな情報を個人的に調べ、掲載しています。

アオバトの民話(秋田県・遠野物語)

2017年09月17日 | 野鳥
アオバトの民話 (秋田県)

 昔々、ある長者の家に働き者の牧童がいました。朝早く山に馬を連れて行き、夕方には長者の屋敷に帰ってくるという真面目な仕事ぶりが際立っていました。
 しかし、ある日のことです。「アオ」と呼ぶ青毛の馬が見えなくなってしまいました。「アオ」は、長者がとても大切にしていた馬だったので、牧童は狂ったように「アオー、アオー・・・」と叫びながら探し回りました。身体は傷だらけです・・・。そのうち責任感の強かった牧童は力尽きて倒れてしまい、彼の魂は「マオウドリ(魔王鳥)」になって「アオー、アオー・・・」と今でも探し続けているのです。

 これは、秋田県に伝わる民話ですが、「アオー、アオー・・・」と鳴く鳥、こ
れが「アオバト」だというのです。秋田地方では、アオバトが鳴く時期がちょうど田植えの時期にあたり、田掻きに使った「馬」を山の放牧場に連れて行く時期と一致するので生まれた民話だろうと言われています。
 さて、諺に、「マオが鳴くと必ず天気が悪くなる」と言うのがあります。この「マオ」と言うのが「アオバト」のことで、鳴き声は、「アオアーアオー・・・」とか「アオーオー・・・」「ワオーワオー・・・」などと、寂しげに鳴くので「マオウドリ」などと呼ばれてきたのです。
 「マオが鳴くと必ず天気が悪くなる」と言うのは、青森県・愛媛県・大分県などに残っていて、和歌山県では「雨が降るから青鳩を鳴かすな」と伝承されています。
 この時期が「梅雨」に入るころなので、「アオバト」も良く鳴くのです。
【「蝶・チョウ・ゆっくり歩き」ホームページより】

アオバトの話 『遠野物語』

 馬追鳥は時鳥に似て少し大きく、羽の色は赤に茶を帯び、肩には馬の綱のやうなる縞あり。胸のあたりにクツゴコのやうなるかたあり。これも或長者が家の奉公人、山へ馬を放しに行き、家に帰らんとするに一匹不足せり。夜通し之を求めあるきしが終に此鳥となる。アーホー、アーホーと啼くは此地方にて野に居る馬を追ふ聲なり。年により馬追鳥里に来て啼くことあるは飢饉の前兆なり。深山には常に住みて啼く聲を聞くなり。

 昔、山へ木を伐りに行った夫が、道に迷ったか、木に打たれたかして帰らないので、哀れな妻が泣き泣き山を探し歩いて、ついに死んでしまった。それを可哀想に思って神様が鳥にしたので、今も青鳩の姿をして山の中を泣きながら探しているのであるという。

「アーホー、アーホー」という鳴き声を「野に居る馬を追ふ聲」に聞きなすことによって、馬放し(馬飼い)の奉公人の死と「馬+追ひ+鳥」という鳥の名との繋がりを緊密にした伝承に仕立てられている。その馬追鳥は、高橋喜平や武藤鉄城がいうように、アオバト(緑鳩/青鳩)を指しているとみて間違いない。アオバトは、種子島以北の日本列島全体の山林地帯に広く棲息する。また、武藤鉄城によれば、馬追鳥のほか、マオー・アオー・オエオ・魔王鳥などの別名を持つといい、それらはいずれもアオバトの鳴き声によって命名されていることがわかる。
 そして実は、このアオバトの由来譚は東北地方の一部に濃密に伝承され、一方で、アイヌにもアオバトを語る神謡(カムイユカラ)が伝えられているのである。


コメントを投稿