徒然日記

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なんでIT系技術者は絵が描けないの?

2018-09-16 00:43:08 | イノベーション!

こんな記事がありました。

  コンピューターで設計するツール「CAD」ができる前、製図台で図面を描いていたエンジニアたち
  http://karapaia.com/archives/52264427.html

掲載されている写真を見て、懐かしいなあと思ってしまいます。

学生のころ、日経CGという雑誌を読んでいたのですが、その当時はドラフターとかがまだ普通に残っていて、それらがコンピューターのCADに駆逐されてゆくのをリアルタイムに見ていました。

その当時はあまり意識していなかったけれど、CADのすごいところは「絵を描く素養があまりない人」でも図面が描けるという点だと思います。 昔は全部手書きなので、エンジニア(というか設計者)になるためには、数学とか物理学とか工学のほかに、絵を描く技能が必要でした。 逆に言えば、その素養がないとふるい落とされてしまったとも言えるでしょう。

絵を描くという動作は一種の創造的な活動です。
特に「真っ白な紙に自身の構想を具現化する」というのは一番ハイレベルな創造活動です。
この行為を技術者は日常的にやらないといけなかったわけです。
  閑話休題
  設計者を英語で言うと「デザイナー」になるのはそういう理由です。
  ちなみに、英語の「エンジニア」は技能者であり、設計者ではありません。


これに比べると、CADは今まである既存のデザインを元に手直しが容易です(手書きだと一から書き直しだけど)。
これは、
  「真っ白な紙に自身の構想を具現化する」必要がなく
  「今ある絵に手を加えて新しい絵を描く」
という行為が可能になることを意味しています。


そして、この「今ある絵に手を加えて」という行為は「真っ白な紙に自身の構想を具現化」に比べると格段に要求される創造性のレベルが下がります。 つまりハードルが下がります。 
それゆえに、コンピューター化に伴って、技術者の創造性というものは統計的に見れば下がっていったのではないかなと思います。




これはものづくりの世界の話ですけど、ITの世界は? というと
ITは図面を描く必要性がほとんどありません。 ゆえにIT技術者には絵を描くのがうまくない人が多いです。
自分は、「技術者になるには絵がかけないと駄目」という時代と世界で育ったので、IT技術者が絵をかけないのにはじめは驚いたものです。



ソフトウェア系IT技術者やシステムエンジニアが設計しているのは、機械のような物理的な「モノ」ではなく、仕組み(機構とも)なので、その設計にあたっていわゆる絵を描くようなデザインセンスが必要ないのは当たり前といえば当たり前です。 これに気がついたのはずいぶん後になってだったけど。



ものづくりの世界で設計と言えば「図面」です。

ソフトウェアITの世界では「設計書」なのですが、設計書に書いてあるのはブロックダイアグラムと説明の文章です。 ほとんどが日本語の文章であり、「絵」といえるようなものは、正直ポンチ絵レベル以上のものは描いてありません。 アイコンを並べて矢印で結んだもの 程度です。 こんなもので澄むのだから、絵が描けるわけがありません。


ただ、その弊害がソフト産業やシステムエンジニアリング産業にはあるような気がします。
顧客の要件や自身が実現したいことを最初に「真っ白な紙に描く=グランドデザインを決める」ことが出来る人が少ないということです。 これはたぶん、絵がかけないからです。 絵が描けるという創造的能力がないので、グランドデザインが描けないのです。

文章がかけるじゃあないか! というご意見もあるかと思います。

しかし、

ソフト産業の設計書はたいてい以前からの使いまわしなので、一から書き起こすことが少ないのです。 それはIT産業がもともとITなので、ワープロなどデジタル化されたドキュメント作成環境をはじめから持っていたからです。 その点ではCAD普及後のものづくり業界を初めから実現してしまっていたのです。

つまり、文章が書けなくても、(既存の文章の焼き直しですむから)設計者になれる。 ということです。


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