あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

古典

2013-07-06 | 本(文庫本)
中町信さんの『模倣の殺意』を読みました。

この作品、昭和46年に書かれた中町さんのデビュー長編。最初のタイトルが『そして死が訪れる』で、江戸川乱歩賞に応募されました。その後、『模倣の殺意』として雑誌に、『新人賞殺人事件』『新人文学賞殺人事件』と改題されて書籍化され、さらに『模倣の殺意』と改題されたのが本書です。

7月7日の午後7時に、新進作家・坂井正夫が青酸カリで服毒死した。自殺として処理されたが、その死に疑問を持った2人がいた。出版社に勤める中田秋子とルポライター津久見伸助。それぞれが「坂井」の死の真相を調べていくうちに「坂井」の別の顔をそれぞれが知ることになる。そして服毒死した「坂井」の死の真相は……。

書かれたのが昭和昭46年で、発表されたのが48年。大阪万博の翌年とオイルショックの翌年かぁ~、って、そう考えるとはるか昔ですよね(でも私は大阪万博に行ったぞ! 月の石は見られなかったけど……)。その時代、まだミステリーを読むこともなかったので、今回「古典」に触れた思いで読みました。
「古典」という意味では、本作は日本における「叙述トリック」の先駆的作品なのだそうです。
叙述トリックとは、文章の仕掛けで読者のミスリードを誘う手法で、読者の先入観を利用してミスリードし、ラストで明かされる真実に衝撃をもたらすテクニック。この作品では「坂井正夫」と「時間」が該当しました。やられました。
でも、ラストに描かれていた「服毒死した坂井の死の真相」は、衝撃というよりも、やたら納得できました。「なるほどね」って。「そういうことだったのね」って。
そしてやはり、昭和46年ですから、仕事をする女性像とか、取り巻く環境とか、現在と比べると格段の違いを文章から感じることができます。そういう時代があって、今の恵みがあるのだと分かりつつ、生きていることも生活習慣も文章も、すべてが「生モノ」なのだと思わされた、そんな作品でした。

奇しくも明日は7月7日。本日関東甲信地方の梅雨明けが発表されました。早いぞ~。平年よりも15日、昨年よりも19日も早い梅雨明けです。
夏越の祓のときは「かかってこんかい、猛暑!」と息巻いていましたけど、早くも降参しそうな今日の気温&湿度……。これも早すぎだよ! 根性なしめ!
皆さん、ご自愛くださいませね。水分補給と適度な冷房の使用、ですよ。
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