野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成24年4月30日 鳥首峠から武甲山

2012年05月02日 | 奥武蔵へようこそ
(尾根を彩るアカヤシオ)

武甲山は僕にとって思い出深い山だ。初めて単独行をしたのがこの山であったし、廃道に入り込んで事故を起こしたのもこの山だった。最初にこの山を登ったときはもう二度と来ないと思ったほどだったのに、もう6年も山歩きを続けているのだから、人間とはわからないものである。武甲山へ登るのは今回で6回目となる。一年に一回は登っている計算だが、昨年は登る機会がなかったから、随分久しぶりに歩くような感じがしている。しかもGWの時期に歩くのは初めて登った6年前のとき以来である。歩き慣れた山ではあるが、何か新しい発見を僕にくれるのではないか。そんなことを期待して僕はGW前半の終わりに武甲山登山へと出掛けた。

いつも通り飯能駅7時10分発のバスに乗り込む。座席が埋まるほどの混み具合に少し驚く。前回このバスに乗ったのは2月の蕨山でのことで、あのときは寒くて雪も積もっていて、乗客は少なかったからなぁ。見慣れた車内をぼんやりと眺めていると見慣れない張り紙に目が行く。それは国際興業バスが飯能営業所の全路線からの撤退を知らせる内容であった。この知らせには寝不足でぼんやりとしていた頭を金鎚で殴られたような衝撃を受けた。僕にとっての奥武蔵での歩みはこの国際興業のバスとともにあったと言ってもいい。それが失われるということは思い出の一部を喪失するのに近い。後継事業者を選定中とのことらしいが、何か靄のかかった今日の空と同じように先の見えないモヤモヤ感に包まれたような気分であった。

混みあうバスは珍しくさわらびの湯でも殆ど降りず、名郷で十数人の乗客が降りる。一部は蕨山へと向かっていったが、多くは妻坂・鳥首峠方面へと進んでいく。これも珍しいことだ。準備も整い、先行者の後姿を見ながら僕も鳥首峠を目指す。今日予定しているルートは2月に歩いたときと同じように、林道終点から鳥首峠へ登った後、昨年の秋に訪れた大持山から小持山を経由して武甲山に登り、長者屋敷尾根を経て秩父鉄道浦山口駅へと下山することにしている。

(スタート地点 名郷)

入間川に沿って設けられた大鳩園と呼ばれるキャンプ場には、デイキャンプらしきお客の姿も見える。小学生くらいなのか、小さな子供たちがテントを出入りしたり、宿題なのか絵を描いたり…。そうやって幼い頃から自然に触れることは良いことだと思う。以前はデイキャンプのような擬似自然体験的なものには批判的な考えを持っていたのだが、最近はあまり堅苦しいことは考えなくなった。自分の山歩きとて擬似自然体験的なものであることに変わりはないのだから。小学生くらいの女の子を連れた親子ハイカーの後姿を追いながらのんびりと歩く。妻坂峠との分岐である大場戸橋に差し掛かるとあの親子ハイカーを含め、皆妻坂峠へと向かっていく。鳥首峠へと向かうのは僕だけとなってしまった。

大場戸橋を渡ると後ろから大きなタンクを積んだトラックがやって来た。この先のJFEミネラルの工場でタンカルを運搬するタンク車だ。林道歩きの短さにもかかわらず、鳥首峠へ足を踏み入れる者が少ないのは、この鉱業所の存在と峠道の厳しさにあるのだと思う。大場戸橋から30分足らずで鳥首峠登山口であるJFEミネラルの工場前にやって来る。ここから先は2月にも歩いている所なので特筆すべきところはない。ただ今日は谷間を靄が漂い、眺望を得るのは難しそうだ。工場裏手を抜けて暗い植林帯を進む。この辺りいくらか道が電光形を描いていて峠道らしき雰囲気はある。最後に斜面をぐるりと回りこむと白岩の廃集落に出る。廃屋には全く興味はないが、集落の名残とも言える住民が植えた花々には興味がある。3月頃からミツマタ・椿と咲き、桜・山ツツジと続くのだが、今日は桜らしき花が見頃を迎えていた。

(白岩集落の桜?)

鳥首峠に関して毎回言及していることだが、白岩集落から峠まで3回沢を横切ることになる。2月に来たときも気になったことだが、この沢を横切る道はあまり状態が良くない。道が崩れて滑落の危険もあるほか、増水時は道が流されてしまう可能性が大きいのではないかと思う。3度目の一番穏やかな沢を過ぎると九十九折の登りだ。上が明るいのでついつい飛ばし勝ちだが、じっくりと登る。鳥首峠に出ると西側の雑木林には冬枯れの光景が広がっていた。いくらか芽吹いている木もあるが、期待していた新緑には程遠い。眺望も期待できず、新緑にも程遠いとなると今日の山歩きは随分と味気無いものとなってしまいそうだ。

(荒れた沢)


(鳥首峠)

鳥首峠からは檜の植林の急斜面を登っていく。鳥首峠から大持山まではこうした急登が3回続く。急斜面を登り切れば落葉樹との混合林となる。展望が開ける所があるが今日は薄っすら見える程度。1059のピークへは採掘の関係で迂回を強いられるが、以前感じたほどにはきつい登りではない。1059のピークから先は気持ちの良い落葉樹林が広がる。ここは冬枯れの光景も悪くない。ただ一度くらいは新緑の中を歩いてみたいものである。アップダウンも緩やかな道をのんびり歩いていると開きかけのカタクリの花に出合う。よく見ると花は付いていなくともカタクリの葉はそこかしこにある。今年は雪が多くてあまり鹿に食べられていないということもあるのだろうけれども、これだけカタクリの葉を見るというのは意外であった。次のピークに差し掛かると尾根が痩せて岩っぽくなってくる。岩場注意の標柱の先はやや危険に感じる岩場だ。ここを下りきるとウノタワの落葉松林が眼下に見えてくる。落葉松は葉が茂るのが早いのか新緑が靄の中に浮かび上がる。ウノタワに着いて休憩を取っていると鈴の音が聞こえてきた。登山者だ。あまり人の多い尾根ではないが、流石にGWともなると歩く人は多いらしい。

(展望の開けた所)


(1059のピークを越えた辺り 気持ちの良い雑木林が広がる)


(岩場の上部にて 本来標柱の上に武甲山が見える)


(ウノタワの落葉松林を見下ろす)

ウノタワからは二度目の急登。秋は紅葉の美しかった所だが、登りに採るとやはり辛い。急斜面を登りきると伊豆ヶ岳方面の展望が開けるが今日は真っ白。その代わりすぐ側にミツバツツジが紫色の花を付けていた。蕾となっているものも多く、これから多くの花を付けることだろう。ここから横倉山(1197)までは再び穏やかな落葉樹の尾根が続く。樹皮の白い木もあり、奥武蔵よりも奥山へと入り込んだ雰囲気がある。緩やかなアップダウンを繰り返し横倉山(1197)に着く。地味なピークだが、洒落た手彫りのプレートが掛けられている。横倉山から一旦下り、最後の急登に取り掛かる。感覚的にはここが一番傾斜が急な気がするのだが、上部が開けているのできつさはあまり感じない。登っている最中も終始鈴の音が聞こえ、妻坂峠から多くの人が大持山へと向かっているのだろうと想像できる。南東方面が伐採された大持山の肩に出る。普段なら展望が広がりのんびりするところだが、今日は越し方の尾根すら見えない。休憩を取らずにそのまま通り過ぎる。

(ミツバツツジ)


(伊豆ヶ岳方面の展望地)


(樹皮の白い木が生える)


(靄が出てきた)


(横倉山のプレート)


(大持山の肩)

大持山の肩から山頂へは5分ほどの道のり。その間にも点々と咲くカタクリを見かける。天候が天候なだけに花の開きは今一つだが、これだけ花を見かけるというのは当たり年と言っても良いのかもしれない。冬枯れの大持山頂上(1294.1)からは奥多摩側と武川岳方面の展望が得られるのだが、今日は遠望が利かない。それでも普段より多くの人が休憩を取っている。何故こんなピークで?と思ったのだが、その答えはこの先のピークでわかることになる。簡単に休憩を取って小持山を目指す。ここから小持山までは痩せた岩尾根が続く。鳥首峠から大持山までの穏やかな広い尾根との対比が良い。鳥首峠から小持山の間は奥武蔵で最も変化に富んだ尾根だと思う。斜面に点々と咲くカタクリを眺めながら次第に細くなる尾根を進む。太っていると通れないと噂の裂けた岩場を過ぎると奥多摩側に突き出した岩場が現れる。巻き道も付いているがここは眺めが良いのでいつも寄ることにしている。流石に遠望は利かないが、それでも高度感はたっぷりだ。そして岩場には…アカヤシオが咲いている。大持山から小持山の間の尾根に咲くとは聞いていたが、実物を見るのは初めてだ。ヤマツツジやミツバツツジに比べると花は小さく見栄えがするという感じはしない。だが岩場に淡い紅を差した花は遠くから良く目立つ。控え目な感じは女性の心を惹きつけるのではと思う。

(カタクリ)


(大持山頂)


(突き出した岩場)


(アカヤシオが咲く)


(岩場から覗き込む 高度感たっぷり)

この岩場を過ぎるとアップダウンのある厳しい道となる。この頃からやたらと登山者とすれ違うようになる。普段に比べると随分と多い。切り立った尾根は東側の展望が良いのだが、武甲山は山頂部までは見せてくれない。アカヤシオは人の手の届かない所に点々と花を付けている。冬枯れの尾根にその花は実に良く目立つ。東側に大きく傾いた一枚岩の上で女性グループが難儀している。ガイドらしき男性が一人居て、先へと促される。やがてこの尾根で最大の岩場が見えてきた。この岩自体は中段に上がると東側に巻き道が付いている。普段なら巻き道を進んでしまうところなのだが、今日は久しぶりにこの岩をよじ登って越えてみることにした。そこで先を譲られた先ほどの女性グループに先へ行ってもらおうとしたのだが、「遅いから…」と行こうとしない。うむ、ならば仕方が無い。女性グループの見ている前で岩に取り付く。巻き道があるのに…という視線を感じつつも登っていく。ふう、まるで羞恥プレイだな。これだから先へ行ってほしかったのだが。岩はホールドが多く取り付くのは難しくない。ただ枯れて折れた木が突き出しているのと傾斜がきついのとでなかなか上に這い上がることができない。三点支持を維持しながら少しずつ体をずらしていき、なんとか岩の上に這い上がる。岩の上からは大持山の伸びやかな尾根が大きく見える。女性グループは岩のすぐ下を歩いているのが見える。

(武甲山が少し見える)


(一枚岩の岩場)


(この岩場を直登 なかなか難しい)


(大持山方面を振り返る)

山頂手前で再び女性グループを追い越し、小持山の小さな頂上を目指す。頂上(1273)に近づくと何やら賑やかだ。山頂へ上がると山頂を取り囲むようにアカヤシオが咲き誇っている。中に一本色の濃いアカヤシオがあり、中高年のグループが入れ替わり立ち代り写真を撮っている。確かに綺麗だ。思わず「これは凄い」と独りごちた。ただここはあまり広い山頂ではない。ポットのコーヒーに一口付けたところで武甲山へと向かうことにした。





(色の濃いアカヤシオ)


(こちらは色の薄いほう)

小持山からシラジクボまでは実は僕好みの尾根。上部は痩せて展望の良い岩尾根で下部は穏やかな芝草の尾根になっている。岩尾根は冬場凍結しているとかなり難しくなる道だが、無雪期であればゆっくりと下れば難儀するような所はない。時折東側が開けて武川岳・蔦岩山の尾根が見える所がある。昼になっていくらか靄が晴れてきたようだ。急な岩尾根をひっきりなしに小持山へと向かう登山者が上がってくる。武甲山だけで帰らずに小持山へと足を延ばしてくれる登山者が大勢居ることは、奥武蔵を愛する者として素直に嬉しい。足元にはカタクリの花が点々と咲いている。しかし擦れ違う人でそれに目を留める人はいない。だからカタクリの葉が無残にも踏みつけられているのは仕方の無いことなのかもしれない。尾根の下部に近づくと武甲山の山頂部も見えるようになってきた。南側から見る武甲山は端正な三角形を描いている。岩尾根を下りきるとよく整備された芝草の道が延びている。道の両脇は檜の植林で展望はない。だが厳しい岩尾根を歩いてきた者には心休まる穏やかな道だ。やがてちょっとしたアップダウンを経て武甲山と小持山との最低鞍部であるシラジクボ(1065)に着く。道標には持山寺跡方面と浦山口方面が描かれているが、どちらも山慣れた人向けと言っていいだろう。エスケープとして使うのであれば、かつては浦山口方面のほうが安全であったが、現在は大雨などによって荒れ放題である。むしろ最近は持山寺跡への道が整備されたので、こちらのほうが道は明瞭になってきている。

(尾根上部の様子)


(左蔦岩山 右武川岳)


(武甲山がようやく姿を見せる)


(薄っすらと二子山)


(尾根下部の様子)




(カタクリが多い)


(シラジクボ)

シラジクボから武甲山へは広い防火帯の登り。天気が良いと日に炙られることになるが、曇り空の今日は楽なほうだ。一見すると厳しそうな傾斜の道も、実際に歩いてみるとジグザグを切ってあって比較的歩きやすい。芽吹いた落葉松の目に優しい薄緑色に癒されながら、着実に高度を上げていく。越し方を振り返ると大持山から小持山への岩尾根が靄の中に浮かび上がる。空気が澄んで明瞭に見えるときよりも厳しそうな尾根に見えるのが面白い。山頂へ近づくと地面が一面緑に覆われて見える。バイケイソウだ。毒草なので食害を免れて増えてしまったらしい。バイケイソウの繁殖に薄気味悪さを感じながらも、落葉松林が終わって落葉広葉樹が目立ってくると武甲山の肩に着く。ガイドブックなどでは十字の出合と称される所で、シラジクボ・山頂方面と生川・浦山口方面の道が交わっている。ここから山頂までは広い緩やかな斜面が広がり、大勢の登山者が憩っている。普段より若い登山者が多いあたりにGWなのだなと改めて実感する。

(武甲山の落葉松林)


(防火帯の尾根 意外と歩きやすい)


(小持山を振り返る)


(上部はバイケイソウに占拠されている)


(武甲山の肩)

檜林を抜けると秩父御嶽神社の社殿がある。大きな社殿の前には面長の冴えた表情をした二体の狛犬がある。この顔は犬かそれとも狼か。社殿の裏手を抜けると第一展望台と書かれた標識のある山頂(1304)である。初めて武甲山へ登ったときは社殿のある所が山頂と思い込んで展望台へと行かなかった思い出がある。フェンスで囲まれた岩場を抜けると綺麗に整備された展望台に出る。晴れていればフェンスの向こう、眼下に採掘場が見え、そして秩父盆地が広がる。近くは盆地をぐるりと囲む蓑山・大霧山・丸山・城峯山、そして冬場は白く雪化粧した浅間山が顕著なのだが…。今日はそれらを望むことは全くできない。

秩父御嶽神社)


(狛犬 狼?)


(山頂標識)

第一展望台で休憩を取った後、フェンス沿いに進んで第二展望台へ足を延ばす。展望台というほどの眺めは得られる所ではないのだが、ここから鉱山へ出入りできる点が大きなポイントなのだろう。武甲山の肩へと戻り、裏参道を通って下山に取り掛かる。長者屋敷の頭まで落葉松林の中をトラバースしながら下る道は少々歩きにくい。この道もカタクリの花が北側斜面に控え目に咲いている。発破の際の退避所となる小屋掛けを過ぎると、晴れていれば両神山が見える崖地をトラバースしていく。眼下には桜咲く長者屋敷尾根が見え、スゲ沢を挟んで高ワラビ尾根が靄で煙っている。旧西尾根(立入禁止)への分岐を見送ると退避所のある長者屋敷の頭に着く。樹林に囲まれたちょっとした小平地で、休憩にちょうど良い。ここからシラジクボへと向かうトラバース道を少し進むと岩の間にパイプを取り付けた水場がある。これまで水が枯れたのを見たことは無いが、今日はやや水量が心許無い感じではあった。この水場も足元が不安定なのだが、シラジクボへのトラバース道もかなり荒れているようだ。以前このルートは利用したことがあり、その頃は何とか歩ける状態だった。しかし地形図にも描かれているトラバース道からスゲ沢を下る道は完全に廃道となっている。僕はこの道を下り、転落事故を起こしているので、くれぐれも興味本位で入らないでほしい。入域の際はロープなどの登攀具があったほうがよいだろう。

(第二展望台)


(下り始めのトラバース)


(退避所)


(長者屋敷尾根・高ワラビ尾根の眺め)


(長者屋敷尾根には桜が咲く)


(水場)


(長者屋敷の頭)

長者屋敷の頭から先植林の九十九折に差し掛かるまでは長者屋敷尾根と名付けられている。尾根の北側には落葉松が植えられ、南側には檜の植林やツツジの潅木の間から小持山から高ワラビ尾根の展望が得られる。普段もここは気持ちの良い尾根なのだが、今日は下るにつれて先ほどの崖地から見えた桜並木が出迎えてくれる。散り際の桜の下を通ると、この尾根を整備した者による武甲山に対する深い愛情というものを感じる。尾根道が右に折れると桜並木も終わり、南側は暗い檜の林となる。ここからは一層緩やかな尾根となり、芝草茂る落葉松林を眺めながら高度を落としていく。

(長者屋敷尾根 落葉松林の気持ち良い道だ)


(伐採地の間にスゲ沢ルートが隠されている)


(ここにもミツバツツジ)


(桜)






(桜咲く長者屋敷尾根)


(下部は緩やか)

立入禁止のテープが張られた所で尾根を離れ、植林の中の暗い九十九折を下っていく。この長い九十九折は初めて単独行に挑んだとき、その辛さに泣きたくなった所だ。だがその後様々な山を歩くようになって、実はこの九十九折がとても整備されていて易しい道であることを知った。とはいえ久しぶりにロングコースを歩く身にはこの道は厳しい。じっくりと下っていくことにする。のんびりと林を眺めていて、九十九折の上部は檜で下部は杉となっていることに、今日初めて気が付いた。檜は乾燥した尾根筋に植えられ、杉は湿った沢筋に植えられていることはよく知られている。だがなかなか見分けは難しい。檜皮として利用されるように表皮が剥がれ易いのが檜、詰まっているのが杉という見分けもあるが、僕は落ち葉を見て、刺々しく痛そうなのが杉、そうでないのが檜というように覚えていることにしている。

(九十九折の下り)


(檜)


(杉)

九十九折から長いトラバース道へと変わると登山口である長者屋敷登り口に辿り着く。スゲ沢ルートとの分岐となっているが、スゲ沢ルートは沢沿いの道が崩壊していて危険度はかなり高い。ここまで来れば下山したも同じなのだが、少し寄り道しながら下山することに。まずは長者屋敷登り口から橋立川の河原へ下りると正面に小さな滝が現れる。規模は大きくないものの、何段にも分かれた滝は心落ち着く光景だ。次は一応地形図にも記載のある滝を見る。橋桁崩壊により迂回路の付けられた橋立川を渡ると道は左岸へと移る。すると川へ向かって小さな踏み跡がある。そこを少し下ると枝越しに滝が見える。展望地も崖の上にあるので落ち着いて見られないのが残念だ。この滝の後は車が乗り入れられる林道橋立線に出る。ここまで来ればほぼ安全といってもよいだろう。

(長者屋敷登り口)


(登り口近くの滝)


(迂回路)


(地形図に記載のある滝)

時折右岸の尾根に鉱山用の道路が走っているのを眺めつつ、林道終点から15分ほど歩くと橋立神社に着く。鳥居を潜り、釣り人用の木段を使って河原へ下りるとここにも数段に分かれた滝がある。右岸へと移った道の脇には桜が植えられている。今は葉桜だが二週間位前は満開だったのではないだろうか。道が舗装路となれば、旅の終わりも近い。右手に大岩壁が見えてくれば秩父札所の橋立堂だ。この大岩壁の中には縦穴式の橋立鍾乳洞がある。以前は下の茶屋で料金を払ったのだが、今はどうなのだろうか。浦山ダムへとつながる立派な橋を潜ると駅は近い。墓地を過ぎると高台を走る秩父鉄道が見えてきた。浦山口駅のホームへ上がるとここも人で一杯だ。登山者だけでなく、橋立堂への観光客も多かったようだ。御花畑駅で西武秩父線へと乗り換える。仲見世通りも客でごった返している。そういえば羊山公園の芝桜が見頃を迎えていたのだな。満席の西武秩父線に乗り込み、車内から武甲山を見上げる。傷つけられた山肌を見るのはやはり悲しい。でもその裏側にはまだまだ良い所は残っている。そう再認識させられた山旅であった。

(鉱山用道路を見上げる)


(前を行く若いカップル こういう光景が好きだ)


(橋立神社下の滝)


(桜並木)


(橋立堂の大岩壁)


(浦山口駅)

DATA:
飯能駅(国際興業バス60分)8:09名郷~8:23大場戸橋~8:47鳥首峠登山口~9:06白岩集落~9:44鳥首峠~10:20ウノタワ~10:44横倉山~
10:59大持山~11:39小持山~12:16シラジクボ~12:37武甲山の肩~12:43武甲山~13:24長者屋敷の頭~14:08長者屋敷登り口
~14:49橋立堂入口~14:59浦山口駅

国際興業バス 飯能駅~名郷 790円

トイレ 名郷バス停 武甲山山頂(冬季は閉鎖されます)

地形図 原市場 武蔵日原 秩父

奥武蔵では有数のアップダウンの厳しいロングルートです。ある程度の体力・経験があることが望ましいです。エスケープはシラジクボから持山寺跡方面、武甲山頂から生川方面で、双方とも一の鳥居から横瀬駅まで90分ほど。シラジクボから長者屋敷の頭へのトラバース道はあまりお薦めできません。小持山下から高ワラビ尾根・タワ尾根を経て武士平へと下りるルートは山慣れた人向き。タワ尾根分岐を見落とすと高ワラビ尾根は岩場の連続で危険度は高くなります。

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