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前々から狙っていた「十勝幌尻岳」にとうとう挑む日がやってきた。
今回で自分は2度目となるのだが、タカシとタツは初、期待と不安に包まれているだろう。
自分がいるだけで彼らにはあまり心配はないのかも知れない。
なんせここをピーク直下から滑った経験があるのだから。
ヘッデンで出発。
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といっても、前回は災害直後で林道は崩壊、除雪は最終民家までだったが、今回はオピリネップ林道まで除雪してあるし、その先も除雪が入っている。
災害の復旧工事か新設の対策工事が行われているためだろう、楽に出発。
(このことも情報を得ていた)
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今回は川の様子を見ながら、ほぼ夏道で行くことにしている。
当然尾根に取りついてからの登りがきついのを十分承知の上で。
なぜなら、前回の稜線に続く果てしなく感じる雪庇を行くのはどうにも心が折れるからだ。
川から行くことにより、どこまで滑れるのか?
帰りの渡渉もわかり楽だろうという判断の元に。
案の定、板を外しての渡渉は1回のみ。
板のままの渡渉が1回と意外に心配することはなかった。
そして最終の滑走場所まで把握したあと尾根に取り付いた。
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ラッセル自体はさほどではないが、雪がフレッシュというか結晶がバリバリ残っているためにシールが滑り、ズリズリしながらの登行となる。
上に行けば行くほどサラサラというよりフワフワな雪質となっていた。
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今回は雪庇が思ったほどは大きくなく、取り付いた尾根からも容易に乗り上げることができた。
さすがに稜線に上がると風があり、一気に寒くなった。
それを予測して稜線に乗る前に耐寒装備をして上がった。
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行けるところまでクランポン装着のシールの予定だったが、すぐにシートラ、アイゼンに換装。
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板を担いでピークに立った。
どうせ最後は担がなければならないからだ。
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期待していた日高の山並みは今回もお預けのようだ。
さっぱり周りは見えなかった。前回よりも眺望はなし。
心配事はそれよりピーク近辺の雪は異常に硬い。
風を避けるためにピーク直下の雪庇の横に隠れたが、アイゼンでなければ下りて行けないほどだ。
前回のことを考えれば、ほんの少し落とせばすぐにバフバフになるはずだが、視界が悪く全く雪面を捉えることができないので正直心配になった。
みんな自分を信じてここまで来ているからだ。
責任を持って自分がファーストを行く。ダメならすぐに伝えるためだ。
だが、ほんの数メートル落としただけでバフバフになった。
「大丈夫そうだわ!」
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正直ホッとしたのが本音。
自分だけならどうにでもなるのだが、タツのことを考えると・・・
タカシは自分と鍛えているから心配はいらないが・・・
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バフバフ、サラサラ、まるで雪に羽が生えてるように舞い踊る。
へたしたら前回よりもさらにいいようだ。
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舞い上がる羽雪で前が見えなくなり、ゴーグルの雪を払うのに忙しい。
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みんなも喜んでくれたようだ。
良かった。
広くはないので、雪が舞い上がりすぎたら安全運転を強いられるけど。
最終地点まで滑走してみんな満足そうだったのがなんとも嬉しい。
タツがもう足がパンパンだという言葉を聞いて、密かに「自分もパンパンなんですけど」と聞こえない程度に呟いた。
標高差約1,000m。
滑った感が半端ない。
登りも含めてやりきった感も半端ない。
タツに雪が舞い上がりすぎて、息が苦しくなかった?と聞いたら、苦しくなったと言っていた。
ねぇ嘘じゃなかったしょ!
シールを貼って川をトコトコと林道に出て自動運転で車まで戻る。
天気はいまいちながら、良き冒険チックな1日となった。
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