極個人的発言録Blog

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「土の中の子供」 中村文則

2010-05-27 13:27:51 | 読んだ本
非日常的な、あまりにも過酷な境遇の中に育った人間の精神状態を想像するのは簡単ではない。

ただ、現実としてこの主人公と似たような、あるいはもっと厳しい現実の中に生きている子どもは確かにいる。
それは時々不幸なニュースとして私達の耳に届く。
おそらくはこの芥川賞作品を読んだ多くの人の中にもそんな境遇に育った人がいたのではないだろうか?
そんな人はこの作品をどんな気持ちで読んだのだろう。共感? 憤り? 哀しみ?

読後1日がたった今、この作品から残る印象は「生への執着・渇望」だ。

どんな過酷な状況の中でも生き続けた。
目的があったわけではない、ただ「生きたい」だけ。本能的な生きることへの執着がそこにあったのだと思う。

生き埋めの土の中から「生まれ」、野犬をすら圧倒する根源的な力がそこにはあった。
おそらくそれは、「命の他に何も無い」状況の中でのみ発現する力なのだろう。

そんな力は穏やかな日常の中で暮らせるようになった彼の中には感じられない。
彼が刹那的になったり自棄的になったりするのは、あるいはそんな自分の根源を再確認したいからではないのだろうか?
自分が「生きたい」のだということを再確認したいのではないだろうか?


今日も生きている。意味も無く生き続けている。目的も無く生き続けている。

それを肯定したいのだ。

生きることに「意味」なんて必要ない。生きることに「目的」なんて必要ない。


詳しく「土の中の子供」をチェック!



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