長芋は美味しい。
そして今は戻り鰹の季節。
この二つを合わせて、コチュジャンとニンニクと醤油と卵黄で味付け。
美味しくないはずのない一品。想像以上。
賽の目に切ったアボカドやきゅうりを加えてもいける。
長芋は美味しい。
そして今は戻り鰹の季節。
この二つを合わせて、コチュジャンとニンニクと醤油と卵黄で味付け。
美味しくないはずのない一品。想像以上。
賽の目に切ったアボカドやきゅうりを加えてもいける。
「・・・・頭巾を?・・・・」
凶悪な孫兵衛を討ち止めるとともに、ふと、剣山での父の死を目にうかべて、熱い涙がにじみだしてくるのを感じていたお綱は、どこかで、こういう声にささやかれた。
「孫兵衛の頭巾を?・・・・」
それは、世阿弥(よあみ)が、死のまぎわに、口に洩らしかけてこと切れた謎のことばであった。このことは、桃谷の家で、弦之丞にも万吉にも話してあった。で今、弦之丞は止刀(とどめ)を刺した後に、孫兵衛のその頭巾をさし伸べた。
鴻山も一種の猟奇心に駆られてジッと立っている。今は、解かれることを拒み得ないお十夜頭巾。
めくりだされるものはなんであろうか?一同、思わず固唾をのんで、弦之丞の手に解かれてゆく黒布に眸(ひとみ)を吸われていると、
「しばらく」
と一同の後ろから、ゴソゴソと草むらをかき分けて、そこへ、這いかがんだものがある。
「?・・・・」
甲虫のように、手をついた男を見ると、かつて見かけたことのない、町人とも武士ともつかぬひとりの侏儒(こびと)だ。
だしぬけに風態見当のつかぬ侏儒が、「しばらく!」といってそこへかがまったので、この場合ではあったが皆、思わずいぶかしげにふりかえると、
「私の役目は今日をもって終りました。それについてお願いの儀、お聞き届け願いとうございます」
と、ばかにていねいな切口上で、その侏儒がまたいった。
「そちはいったい何者であるか?」
こう訊ねたのは鴻山である。
侏儒はやや怖るような目色をしたが、
「はい、私は阿波の者でござります」と悪びれずにーーー「ご承知でございましょうが、原士の長、龍耳老人とおっしゃる方の飛耳張目に使われまする者で、永年の間、私のいいつけられていた役目は、関屋孫兵衛の頭巾を監視することでございました。ーーー関屋孫兵衛をご承知のお人でも、私の影を、きょうまで見たお方はございますまい、けれど手前はここ数年来、かれが江戸へまいれば江戸へ、上方へくれば上方に、寸刻も離れることなく、影と形のように、つきまとうていたのでございます」
侏儒は、その隠身(おんしん)の働きぶりを、やや自慢らしい顔で話しつづける。
「ーーーで手前は役目としまして、月に一度は某所某時刻で、きっと孫兵衛の頭巾のうちをあらためることになっておりました。そして、龍耳老人に別状のない儀を知らせてまいりました。けれど、その関屋孫兵衛も、ここに最後を遂げましたからには、自然、手前の役目も終わったわけで、もう用のない体、阿波へ立ち帰ろうと存じまする」
万吉もお綱も、かれの頭巾と侏儒の関係が、今は明らかにうなずけて、鴻山に代って一歩前へ出た。
「龍耳老人、あの方なら拙者も存じておる。してそちが今、吾々に願いがあるといったのはどういうことであるな?」
「ほかでもございませんが」
「うむ、申してみい」
「関屋孫兵衛の首をお貰い申したいのでございます。かれの首を持って、阿波へ立ち帰りたいと存じますので」
「孫兵衛の首をくれろというのか」
「役目を終りました証として、頭巾ぐるみ、川島郷へ持って帰りたいのでございます」
「しかし、待て、一応は、彼の頭巾を検(あらた)めてみねば」
というと、侏儒(こびと)は心得たさまで、
「もう徳島城の御陰謀も、幕府のほうへ知られました今日、ほかの、小さな秘密を固持する必要はございますまい。ーーーといったところで、それはこのたびの事件とは、まったく縁のない、別のものでございますが」
「おお、ではそちの手であれを解くか」
「明らさまに申し上げましょう、しばらく、そこにお待ちを願います」
こういうと侏儒は、矮短(わいたん)な身を起こして、孫兵衛の死骸のそばへ歩いていった。
その酸鼻に、面をそむける様子もなく、孫兵衛の頭巾の上からもとどりをつかみ、胸をもって押しつけるような形をしていたかと思うと、ぶっすり、首を切り離して草の上へ置き、短い刃物の血糊を拭いて、ニヤリと意味のない、不気味な笑みをこちらへ向けた。
(後略)
講談社「吉川英治歴史時代文庫4『鳴門秘帖(三)』」pp.389-392
1973年のビルボード年間アルバム1位だったらしい。
エリック・バードンが抜けて無名のメンバーが残り、どんな音楽をやるのかと思われていたことへの回答がこれ。
サウンドは多少、古びたかもしれないけど(それでも十分に楽しいファンク)、歌詞は今の世界にこそふさわしい。
まさか処女航海のピアニストがファンクのアルバムを出すに至るとは。
そしてそのサウンドが世界を席巻するとは。
と古い古いファンは感慨に耽るアルバム。マイルスも驚いただろう。
全て名曲だが、自分はこの曲のイントロとエレピのサウンド、とぼけた曲風が一番頭に残っている。