音と美と文と武と食の愉しみ

自己参照用。今まで紙に書いていたものをデジタル化。
13歳でふれたアートが一生を支配するようです。

20240623 クラーク「幼年期の終り」

2024-06-23 07:44:35 | 日記

ぼくのまわりの建物、地面、遠くの山々――すべてがガラスのようだ―ぼくはそれを通して見ている。地球は溶解しつつある。ぼくの体重はもうほとんどなくなってしまった。あなたのいったとおりだ――彼らは玩具をもてあそぶ時期を卒業したのです。
おそらく、もうあと何秒もないのだ。ああ、山がなくなっていく、さながら一筋の煙のように。さよなら、カレルレン、ラシャヴェラク――ぼくはあなたがたを気の毒に思います。たとえ理解はできないにしても、ぼくはぼくの種族が到達したものを見た。ぼくらがこれまでに達成したことは、すべてあの星々の中へ昇っていったのです。あるいはこれが、かつて多くの宗教の秘密だったのかもしれない。しかし彼らは、完全にそれを誤解していた。彼らは人類をひどく重要なものに考えていた。だがぼくらは、たんなる一種族でしかなかった。多くの種族――あなたがたはそれがいくつあるか知っているのか?けれどもいま、ぼくらはあなたがたが決してなれないものになったのです。
河がなくなっていく。しかし空にはなんの変化もない。もうほとんど息ができない。月がいまだにあそこで輝いているなんて、なんだか変な気がする。彼らがあれを残していってくれてよかった。これからは、あれも淋しくなるだろう――
光だ!ぼくの下から――地球の内部から上へ向かって噴きあげてくる――岩も、地面も、何もかもを貫いて――だんだん明るくなる、明るく、ああ、目がくらむ――


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