CDをケースに戻してから、バラッドとは良くできたフィクションではないか、と圭子は考えた。その終わりの部分の演奏のしかたは、良くできたフィクションをまとめ上げる部分であり、全体がそこへながれこむ。自分でもそれを作るほかない、と圭子は考えた。
八曲の楽譜を彼女は観察した。You Don't Know What Love Isがいいのではないか。この題名を自分は、『失ってわかるもの』という日本語にした。原語での題名はこうであり、それは題名であると同時に、曲のいちばん初めに登場する主題でもあり、曲が終わるときのひと言でもあった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます