出典:ポール・ティンゲン「エレクトリック・マイルス」pp.161-163
この曲は、マクラフリン、ヘンダーソン、コブハムの三人が「Eのキーのブギ」に乗ってグルーヴするところからはじまる。ここでマクラフリンはソロ・ギターに近い、的確な伴奏を弾いている。マクラフリンは一分三十八秒にボリュームを下げ、二分十一秒にはマイルスの参入を劇的に迎え入れるべく、Bフラットに転調する。しかし、ヘンダーソンはマクラフリンの転調に気づかず、Eのキーの演奏を続けた。このトーンのぶつかり合いの最中、マイルスが二分十九秒に入ってくる。彼の演奏は、Dフラット(Cシャープ)、Bフラットのマイナー・サード、Eのメジャー・シックスではじまる。このノートはどちらのキーにも有効であり、絶妙な選択と言える。続いてマイルスは、バンドを引っ張ると同時に、ヘンダーソンにBフラット調への転調を促すかのように、十二のBフラットのスタッカート・ノートをビートの上にフレージングして演奏した。この意図を察したヘンダーソンは、二分三十三秒にBフラットへと転調する。そこからマイルスは、高音域へと達する速い走句(ラン)と音量のある中身の詰まった力強いトーンで、彼の活動歴の中でも最も印象的なソロ演奏を披露する。
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