22日から韓国で主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。輸出を促進すよう自国通貨を切り下げる「通貨安競争」を回避するための枠組みづくりが焦点となるが、先進国と新興国の間に生じた亀裂は深まるばかり。先進国は中国に人民元切り上げを迫り、貿易黒字を抱える新興国が通貨安誘導をすべきでないと主張。一方、新興国側は金融緩和を強化する米国などからの資本流入が通貨高を招いていると反発しており、協調へ向けた具体策づくりは難航しそうだ。
◆米国へ抗議か
「カレンシー・ウォー(通貨戦争)」。現在の為替相場をこう呼び、ドル安を事実上放置している米政府を痛烈に批判しているのがブラジルのマンテガ財務相。そのマンテガ財務相が今回のG20を欠席することが20日(日本時間)、明らかになった。欠席理由は諸説あるが、突然のボイコットは米国への抗議とも受け取れる。
新興国の通貨高の原因の一つが、日米など先進国で相次ぐ金融緩和だ。投機筋が市場にだぶついたドルなどの資金を高利回りの新興国の資産で運用する動きがあるからだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が景気の二番底回避に向けて、国債購入拡大による追加緩和に乗り出す意向を示したことで、こうした動きはさらに加速している。
このため、ブラジルやタイなどの新興国は一段の通貨高やインフレを避けるべく、過剰な資本流入への直接規制に動き出した。
一方の先進国は中国の人民元政策をはじめとする新興国の通貨安競争を批判する。ガイトナー米財務長官は18日の講演で「米国も世界のどの国も、繁栄や競争力を強化する方法として自国通貨の切り下げはできない」と強調した。この発言には「米国がドル安を誘導している」という批判を打ち消す狙いもあり、G20では財政拡大余地の乏しい先進国は金融緩和に頼らざるを得ないと、新興国側の理解を求めるとみられる。日本も「通貨安競争をやり合えば世界経済にとってマイナスになるのが世界の教訓だ」(野田佳彦財務相)としており、米国に同調する見通しだ。
◆1930年代の悪夢
このまま保護主義的な動きを放置すれば、世界経済の回復は遅れ、各国の経済に跳ね返ってくる。通貨安競争が世界大恐慌を一段と悪化させた1930年代の悪夢がちらつく。
ブラジルの財務相欠席で今回のG20は米中の「直接対決」の色合いが濃くなってきた。両者の対立は根深い上、双方とも中間選挙や次期体制づくりなど政治問題を抱えており、二国間での決着は容易ではない。議長国の韓国が「通貨戦争の収拾案を講じる」(中央日報)など先進国と新興国の亀裂を修復しようという動き始めたが、G20による国際協調の枠組みが揺らげば、世界経済全体の下押しリスクになりかねない。(田端素央)
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