おしぼりと日本人 日本けなすのが国際感覚か

2006年05月17日 | メディア・芸スポ
[1999年08月21日]
 リンドバーグが大西洋の横断飛行に成功した前後から、いわゆる「旅客機」が登場し始めた。陸の鉄道、海の客船に加えた第三の輸送機関の登場である。
 豪華さも競われた。オランダ航空は「フライング・ダイニングカー(空飛ぶ食堂車)」と名付け、オリエント急行や五つ星のレストランに負けない料理を提供し、洗練された給仕がサーブした。
 これが今で言うスチュワーデスの発祥である。ただ、マキシムやトゥール・ジャルダンがそうであるように、接客する者は伝統的に男性の仕事とされていた。
 その性差別の壁を突き崩したのが新興の米国で、ボーイング・エアクラフト社は一九三〇年、初めて女性給仕をデビューさせた。
 もっとも、これもただの女性ではなく、資格を持つ看護婦で、飛行機酔いなどの乗客のケアもできるという口実で米連邦航空局(FAA)の許可を得ている。
 日本はというと、米国に看護婦スチュワーデスが登場した翌年の昭和六年、東京航空輸送社がエアガールを採用し東京-伊豆・下田線を運航した。機材は愛知AB型水上機で、客席数は五席。通路なぞといった余分のスペースはないから、彼女らは座席の一つに座って隣席の乗客に紅茶や食事をサービスした、という。
 面白いのは、この日本初代のスチュワーデスは看護婦でも医者でもない、当時のハイカラ学校だった白鴎高校のお嬢さんたちが務めていたことだ。普通の女性をスチュワーデスにしたのは日本が世界で初めてだったわけだ。
 その日本は戦後の空白期をはさんで昭和三十年代に世界の空に再デビューを果たす。国際線の黄金時代に当たり、各国航空会社は乗客獲得のために過剰なサービスをするのが当たり前のころだった。それを象徴するのがIATA(国際民間航空機関)のロビング・オフィサー(隠密監視官)だ。
 今では信じられないけれど、IATAは「機内食に出すステーキは二百グラムまで」という規定をつくり、過剰サービスに歯止めをかけていた。それでも平気で一ポンドのプライム・リブをふるまう航空会社も出てくる。それを摘発するのが隠密監視官で、「彼らは一般乗客を装って搭乗し、出されるステーキをこっそり天秤量りで目方を調べるといわれてた。天秤量りを持つ客を見つけるのもわたしたちの業務の一つだった」と、これは古手の元スチュワーデスがうちあけてくれた実話である。
 そういう過剰サービス戦争の中に加わった日本航空はどこもやっていないサービスとして「おしぼり」を思いついた。
 汗まみれで座席につく。やれやれと思ったところにあの冷たいおしぼりがでてきて、それで顔をふく。日本人ならだれでも知っているあの心地よい清涼感である。
 おしぼりサービスは当たった。とくに風呂に入ることのあまりない白人種系には最初は使い方も知らない乗客もいたが、その清涼感はやがて新鮮な驚きとして彼らに受け入れられていった。
 パン・アメリカン以下の各国航空会社が競って採用し、今は欧州の果てのブローテン航空などという小さな航空会社までサービスに取り入れている。
 日本航空幹部が「パテント登録をしておけばよかった」と後に残念がるほどの普及ぶりだが、ただ、それらは本来の冷たいおしぼりではなくて、国際的にアレンジされた「ホット・タオル」に変わり、パン挟みで提供されるところまで変形してしまった。
                  ◇
 世界で最も権威ある国際広告賞といわれるカンヌ国際広告祭で、ノルウェーのブローテン航空が出した「日本人」というCMが金賞を受賞した。
 ところがその中身。
 日本人乗客がスナックの菓子をおしぼりと間違えて顔をふき、ピーナツバターが顔にべっとり。次のフライトで同じ日本人がスチュワーデスからパン挟みで差し出されたおしぼりを見て、今度はスナックと勘違いしておなかがいっぱいだとゼスチュアで示して断る(八日付朝日新聞)。
 「日本人」を笑いものにする、かなり悪意ある作品だが、審査会場は大爆笑の渦だったといい、日本人審査員を含む約三十人全員が一致して金賞に推挙したそうだ。
 日本が世界に普及させたおしぼりを当の日本人が知らなかったという設定はかなり無理がある。あるいはこの広告の制作チームの無知からきたものかもしれないが、少し気になるのが、「海外で団体行動したり、辺り構わず写真を撮ったり。外国人の目に映る日本人の姿を事実として受け止めるべき」といった、わけ知り風な日本人審査員のコメントだ。
 おしぼりの沿革も知らず、自分を「いわゆる日本人」のらち外に置いて国際人的な顔でしゃべる。
 日本人を「得体の知れない滑稽な存在」にしているのは、こういう間違った日本人像を訂正できない「奇妙に国際人ぶった」日本人たちに負うところが大きいと思うのだが…。

【高山正之の異見自在】おしぼりと日本人 日本けなすのが国際感覚か [1999年08月21日 東京夕刊]
http://kaz1910032-hp.hp.infoseek.co.jp/110821.html



308 名前: マンセー名無しさん Mail: 投稿日: 2006/05/17(水) 14:24:05 ID: EPZAKh5T
人種偏見の強いノルウェー。そこのブローテン航空が「日本人」という題のCMを作った。
中身は日本人乗客がケーキをお絞りと間違えて顔を拭き、顔中べったりクリームをなすり付ける。
次に乗ったときは差し出されたお絞りをケーキと間違え、おなかが一杯のゼスチュアで断る。
「日本人」を目一杯笑い物にした人種偏見作品はカンヌの国際広告祭に出品され、
満場一致でグランプリを受賞した。

諸手を挙げた審査員の中に日本の電通社員も含まれていて、彼は
「外国人の目に異様に映る日本人の姿を事実として受け止めよ」と偉そうにコメントした。
彼はいわゆる帰国子女の一人で、英語をとても流暢に話す。
「だからボクは国際人」と思い込んでいるらしいが、自分の祖国・日本をまったく知らない。
お絞りは日本が生んだ文化ということも、それが風呂に入る風習もない、
顔を拭くことも知らなかったノルウェーについ先年になってやっと普及したことも彼は知らなかった。

ノルウェー人は、初めてお絞りを見て下等な日本人はきっと知らないはずだと思ったのが、
このCMの制作動機だろう。
しかし電通社員はその誤りも指摘できず、ただ日本を蔑んで喜んだのだ。

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