『誕生日の子どもたち』
トルーマン・カポーティ(米・1924-84)
村上春樹訳
”Children on Their Birthdays” by Truman Garcia Capote(1949)
2002年・文藝春秋
2009年・文春文庫
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家では朝食がいちばん充実した食事であり、昼食(日曜日はべつにして)と夕食はむしろ簡素なもので、朝食の残り物で間に合わされることも多かった。
朝食はきっかり五時半に用意され、量は常に食べきれないくらいたっぷりあった。
今でも僕は、あの未明の豪勢な料理のことを思うと、ノスタルジックな食欲を身のうちに感じることになる。
ハム、フライド・チキン、フライド・ポークチョップ、なまずのフライ、リスのフライ(季節が限定される)、目玉焼き、グレイヴィー・ソースをかけたとうもろこしのグリッツ、ササゲ、煮汁を添えたコラード、それをはさんで食べるコーンブレッド、丸パン、パウンド・ケーキ、糖蜜つきパンケーキ、巣に入ったままの蜂蜜、自家製のジャムとゼリー、甘いミルク、バターミルク、チコリの香りのする地獄みたいに熱々のコーヒー。
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カポーティの、ニューヨークでの実生活のどうしようもない軽薄さと、透き通るようなアラバマ時代のイノセンスというのは、相反するようでいて、相容れるものと思う。
相容れるっていうより、ただ同居するっていうか。
俺はこの二つの要素、軽薄さとイノセンスだけで出来ている人間なので、カポーティの苦しみが良く分かる。
銀座とかで飲んでて、なにげなく竹原慎二の大盛りランキング(現:B級グルメランキング)の物真似を始めてしまい、止められなくなる時がある。
その後、自分の軽薄さの呪いでしばらく具合が悪い。
カポーティもカクテル・パーティでセレブリティたちと戯れた朝方、自宅の台所あたりで苦しんだんじゃなかろうか。
アラバマ物の中でも『誕生日のこどもたち』はカポーティの語り手(嘘つき)としての才能が弾けた一作。
そして、『感謝祭のお客』は、誰しもの奥底をくすぐる一作と思う。
この2本は『夜の樹』(川本三郎訳、新潮社)でも読める。
『クリスマスの思い出』は本訳に少し手を入れて『ティファニーで朝食を』(村上春樹訳、新潮社)に再録された。
この辺は、誰の訳で読んでも、良いものは良い。
■トルーマン・カポーティ関連
(1)カポーティの著作
・『ローカル・カラー/観察記録』(小田島雄志訳/ 1988年・早川書房)
・『夜の樹』(川本三郎訳/ 1994年・新潮文庫)
・『誕生日の子供たち』(村上春樹訳/ 2002年・文芸春秋)
・『ティファニーで朝食を』(村上春樹訳/ 2008年・新潮社)
(2)映画 de カポーティ
・映画 『カポーティ』
(3)絵本 de カポーティ
・『ヌレエフの犬』 エルケ・ハイデンライヒ & ミヒャエル・ゾーヴァ
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