『ティファニーで朝食を』
トルーマン・カポーティ/ 村上春樹訳
"Breakfast At Tiffany's"by Truman Capote(1958)
2008年・新潮社
奥さんがニューヨークに行ってて暇な間、別にNY繋がりって訳でもないけど、村上春樹が今年訳したティファニーを読んでいた。
長年親しんできたティファニーを、村上春樹が訳すとあんな世界かなぁと想像していた、そのままの読後感。
ホリー・ゴライトリーと過ごした日々を語る僕(カポーティの自伝的要素が強いと言うが)の切なく、青く、相手に対する感情が愛憎どちらか自分でも判別できない感じが、とっても丁寧に描かれている。
自分の人生で起こり、そして過ぎ去った大事な出来事。
青年期を経て、その出来事を思い返して見るけど、それとどう距離を取って良いか分からない。
分かるよね。
そんな、「青春のちょっと後」みたいな感じをこんな風に上手く表現できるのって凄いと思う。
しかし。
今回は敢えて、残る3編を讃えたい。
「花盛りの家」
「ダイアモンドのギター」
「クリスマスの思い出」
「花盛りの家」は1枚の美しい絵画のような、夢心地な1編。
「ダイアモンドのギター」には、映画でいうと、まあ「ショーシャンクの空」一本分くらいの価値がある。
そして、「クリスマスの思い出」。
90年に同じく村上春樹の訳で文藝春秋から単行本が出ており、何度も読んでるが、今回少し手が入った。
訳に手直しが入るのって、ちょっとずつ良いものになっていく感じで嬉しい。
村上春樹はニューヨーク物中心かと思いきや、これはカポーティのアラバマ物の典型。
子供の頃、優しく接してくれたお婆ちゃんや、仲良しだった犬。
そんな誰の心にも眠る記憶が、じんわりと溶け出してきて、しばらく何も言えなくなる。
そんな話。
追伸:
この本、製本がとても変じゃない?ペラペラで。
なんでこんな売れ筋の本で(?)、ここまで思い切ったコスト削減をッ。
と2月からずっと思って毎日眠れなかったけど、「クリスマスの思い出」が良いので、水に流そうじゃないか。
■トルーマン・カポーティ関連
(1)カポーティの著作
・『ローカル・カラー/観察記録』(小田島雄志訳/ 1988年・早川書房)
・『夜の樹』(川本三郎訳/ 1994年・新潮文庫)
・『誕生日の子供たち』(村上春樹訳/ 2002年・文芸春秋)
・『ティファニーで朝食を』(村上春樹訳/ 2008年・新潮社)
(2)映画 de カポーティ
・映画 『カポーティ』
(3)絵本 de カポーティ
・『ヌレエフの犬』 エルケ・ハイデンライヒ & ミヒャエル・ゾーヴァ
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