『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『ティファニーで朝食を』 トルーマン・カポーティ

2008-06-03 | Books(本):愛すべき活字

『ティファニーで朝食を』
トルーマン・カポーティ/ 村上春樹訳
"Breakfast At Tiffany's"by Truman Capote(1958)
2008年・新潮社



奥さんがニューヨークに行ってて暇な間、別にNY繋がりって訳でもないけど、村上春樹が今年訳したティファニーを読んでいた。

長年親しんできたティファニーを、村上春樹が訳すとあんな世界かなぁと想像していた、そのままの読後感。


ホリー・ゴライトリーと過ごした日々を語る僕(カポーティの自伝的要素が強いと言うが)の切なく、青く、相手に対する感情が愛憎どちらか自分でも判別できない感じが、とっても丁寧に描かれている。


自分の人生で起こり、そして過ぎ去った大事な出来事。

青年期を経て、その出来事を思い返して見るけど、それとどう距離を取って良いか分からない。


分かるよね。

そんな、「青春のちょっと後」みたいな感じをこんな風に上手く表現できるのって凄いと思う。


しかし。

今回は敢えて、残る3編を讃えたい。


「花盛りの家」
「ダイアモンドのギター」
「クリスマスの思い出」


「花盛りの家」は1枚の美しい絵画のような、夢心地な1編。

「ダイアモンドのギター」には、映画でいうと、まあ「ショーシャンクの空」一本分くらいの価値がある。

そして、「クリスマスの思い出」。

90年に同じく村上春樹の訳で文藝春秋から単行本が出ており、何度も読んでるが、今回少し手が入った。

訳に手直しが入るのって、ちょっとずつ良いものになっていく感じで嬉しい。


村上春樹はニューヨーク物中心かと思いきや、これはカポーティのアラバマ物の典型。

子供の頃、優しく接してくれたお婆ちゃんや、仲良しだった犬。

そんな誰の心にも眠る記憶が、じんわりと溶け出してきて、しばらく何も言えなくなる。

そんな話。


追伸:

この本、製本がとても変じゃない?ペラペラで。

なんでこんな売れ筋の本で(?)、ここまで思い切ったコスト削減をッ。

と2月からずっと思って毎日眠れなかったけど、「クリスマスの思い出」が良いので、水に流そうじゃないか。


■トルーマン・カポーティ関連

(1)カポーティの著作
『ローカル・カラー/観察記録』(小田島雄志訳/ 1988年・早川書房)
『夜の樹』(川本三郎訳/ 1994年・新潮文庫) 
『誕生日の子供たち』(村上春樹訳/ 2002年・文芸春秋) 
『ティファニーで朝食を』(村上春樹訳/ 2008年・新潮社) 

(2)映画 de カポーティ
映画 『カポーティ』

(3)絵本 de カポーティ
『ヌレエフの犬』 エルケ・ハイデンライヒ & ミヒャエル・ゾーヴァ  



<Amazon>

ティファニーで朝食を
村上春樹
新潮社
ティファニーで朝食を (新潮文庫)
Truman Capote,村上 春樹
新潮社

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