大企業優遇 暮らしは圧迫
敵基地攻撃兵器の配備へ
石破茂政権が27日に閣議決定した2025年度の政府予算案は、大軍拡と大企業優遇をおしすすめる一方、社会保障を抑制する内容となりました。
社会保障
国民負担増で経費を圧縮
25年度予算案の社会保障関係費は、24年度より5585億円増え、38兆2778億円と過去最高です。高齢化などにより当然増える「自然増」は6500億円程度の増加を見込みましたが、薬価改定や「高額療養費制度」の改悪など、制度改定や国民負担増により1300億円程度を圧縮しています。
国民負担増が毎年続く医療では、25年度に高額療養費制度の自己負担上限額を収入に応じて決める所得区分を細分化し、8月から2年かけて段階的に引き上げる方針です。政府は「現役世代の保険料負担の軽減」を口実にしていますが、保険料負担の軽減効果はわずか。現役世代も含む全世代が、大きな病気やけがの際に重い負担を強いられ、セーフティーネットの機能が形骸化します。
薬価改定では、安定供給が求められる医薬品について臨時に不採算品の再算定を行い、デフレ突入以降初めて最低薬価を引き上げます。一方、特許切れ後の医薬品の価格を引き下げます。
24年度に訪問介護報酬の引き下げが行われ、介護事業所の休廃止が急増していますが、こうした厳しい環境を打開する手だても打っていません。他方、介護施設での介護ロボット・ICT機器の活用により人員配置基準を特例的に柔軟化するなどの小手先のごまかしに躍起です。
また介護保険の利用者2割負担のさらなる拡大も、26年度予算編成に向けて検討していく構えです。
年明け1月に決まる公的年金額は1・9%引き上げる見込み。物価高騰に届かない実質削減です。
生活保護のうち食費や光熱費などの日常生活に充てられる生活扶助費は、物価高騰などを受けた特例加算(23~24年度月1000円)を1500円に引き上げます(25~26年度)。
こども・子育て政策では、24年10月から始まった児童手当の抜本的拡充が通年度化。所得制限を撤廃し、支給期間が高校3年生まで延びます。「こども誰でも通園制度」(126億円)を創設。月一定時間までの利用可能枠のなかで、就労要件を問わず時間単位で柔軟に利用できます。
軍事費
大軍拡 文教予算の2倍に
石破政権は2025年度予算案で、軍事費(防衛省予算)に、初の8兆円超えとなる8兆7005億円を計上しました(グラフ)。24年度より約7500億円(約9%)増え、11年連続で過去最大を更新。安保3文書が策定された22年以降の3年間では約3・3兆円増え、約1・6倍に膨れあがっています。
政府は安保3文書の一つ「防衛力整備計画」に基づき、5年間で総額43兆円を投じる方針。今回の予算案でそのうち約27兆円(62%)を積み上げました。軍事費の規模は、文教関係費(4兆1275億円)の2・1倍、中小企業対策費(1695億円)の約51倍に達します。大軍拡が暮らしを支える予算を圧迫しています。
長距離ミサイル整備突出
敵基地攻撃に使用可能な長射程ミサイルの整備が突出しています。米国製の巡航ミサイル・トマホークの配備を当初予定の26年度から25年度に前倒し、日米一体で違憲の敵基地攻撃態勢に着手します。射程を1000キロ程度に延ばす「12式地対艦誘導弾(12SSM)能力向上型」の地上発射型も配備します。
12SSM艦船発射型の取得費(168億円)、潜水艦から発射する誘導弾の取得費(30億円)を初めて計上。潜水艦からの長射程ミサイル垂直発射装置の研究費297億円も盛り込みました。射程が3000キロに及び、音速の5倍以上で飛ぶ「極超音速誘導弾」の生産・量産体制の準備に2391億円を充て、24年度比で約28倍に急増しました。
敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させる「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」を強化するため、各部隊を一元的に指揮する、次世代「自動警戒管制システム(JADGE)」の整備に119億円を計上。米軍システムと連携するため米軍のIAMDに組み込まれる恐れがあります。「イージス・システム搭載艦」の試験費用に865億円を充てます。中国やロシアなどの極超音速兵器に対処するため、小型の人工衛星を多数展開し、ミサイルの標的を捕捉する「衛星コンステレーション」整備に2832億円を盛り込みました。
辺野古などの基地建設費
米軍再編経費は2146億円(16億円増)でした。このうち沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に735億円(歳出ベース)と、24年度に続き700億円台を維持。軟弱地盤が広がる大浦湾側の工事を、民意を無視して進める狙いです。
米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)を移転する馬毛島(鹿児島県西之表市)の整備費は531億円(28億円減)。日米地位協定上も支払い義務のない「思いやり予算」は2274億円と150億円増加しました。
イスラエル製兵器導入も
自衛官の定員割れや採用数の激減が続く中、「自衛官の処遇・勤務環境の改善、新たな生涯設計の確立」のために計4097億円を新たに計上しました。自衛官として一定期間勤務すれば返還が免除される奨学金制度「自衛隊奨学生制度」について、貸与額を月5万4000円から月8万円に拡充。高学費に苦しむ学生を自衛隊入隊に促す“経済的徴兵制”を強める動きです。SNSやターゲティング(対象を絞り込む)広告を使った自衛官募集を推進します。
英国やイタリアと共同開発する次期戦闘機について開発費1087億円、次期中距離空対空ミサイルの開発費59億円、無人機の研究費128億円を計上。無人機用の戦闘システムの研究に38億円を新たに充てます。
軍事用の無人機について、「攻撃用」「戦闘支援用」「ISRT(情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング)」の3種の取得を進めると表明しました。小型攻撃用ドローンの取得費に32億円を初計上。一般競争入札で取得するとしますが、パレスチナ・ガザ地区で虐殺に使われているイスラエル製を有力な選択肢にあげています。
宇宙領域での能力強化に全体で約5403億円と約3・8倍に急増。「宇宙作戦団」(仮称)の新編や、次期防衛通信衛星の整備費1238億円を盛り込みました。
先端軍事技術を開発する「ブレークスルー研究」に201億円を計上。10月に創設した「防衛イノベーション科学技術研究所」で、民間の研究者や企業を動員して軍事研究を行います。武器・装備品開発につながる研究を委託する「安全保障技術研究推進制度」に114億円(10億円増)を充てます。同制度について、新たに補助金で支援する制度を創設し、10億円を計上。大学の軍事動員への批判を回避し、軍事研究に税金を回すことが狙いです。
兵器ローン返済で5割超
兵器ローンの返済額が膨らみ、財政のゆがみが深刻化しています。過去に購入した兵器の支払い分である「歳出化経費」が約4・5兆円と、初めて軍事費全体の半分を超えました。最大の要因は、米国製の高額兵器の購入などによる軍事ローン「後年度負担」の膨張です。
大企業
AIと半導体に厚く支援
国民の願いには冷たく背を向けながら、大企業支援を求める経団連には満額回答の予算案となっています。
人工知能(AI)と半導体分野の技術開発、設備投資計画への支援として3328億円を計上しました。補正予算と合わせて1・9兆円もの大企業支援となります。これは石破政権が11月に決定した総合経済対策で創設を打ち出した「AI・半導体産業基盤強化フレーム」の一部です。
同フレームは、AI・半導体分野について、30年度までの7年間で10兆円以上の公的支援(そのうち金融支援は4兆円以上)を行うものです。
3328億円のうち、次世代半導体の量産化に向けた金融支援として1000億円を半導体の国産化を目指すメーカー・ラピダス(東京)への出資に充てます。政府はこれまでに研究開発に必要な予算としてラピダスへ最大9200億円の支援を決めています。特定企業に対する異様な肩入れです。
出資は経産省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施。政府は、支援を可能にするための関連法案を来年1月召集の通常国会に提出する予定です。
半導体の量産までには5兆円程度の資金が必要となります。政府出資で民間資金の呼び込みを狙う考えです。
このほか、新興企業が共同利用できる先端半導体設計等の拠点整備に318億円、革新的AI半導体の基礎研究400億円などを計上しています。
企業・団体献金に固執する自民党の金権腐敗体質が一部大企業への大盤振る舞いとなって表れています。