18世紀末から19世紀初めにイギリスなどで流行したゴシック小説と呼ばれる神秘的な内容を特徴とする文学のジャンルがあります。その一つが、有名な『フランケンシュタイン』です。
同書はフランケンシュタインという科学者が造り出した怪物の物語です。人工的に人間をつくろうとしたフランケンシュタインは、みにくい怪物を生み出してしまい、恐れをなして打ち捨てました。怪物はフランケンシュタインに復讐(ふくしゅう)しようとします。
単なるホラーではなく、当時の最先端の科学が盛り込まれ、SFの先駆けとも評されるこの作品は、1818年にメアリー・シェリーという女性が世に出しました。書き始めたのは18、19歳のときだといいます。
当初、『フランケンシュタイン』は匿名での出版でした。多くの人はメアリーの夫の作品だと思っていたそうです。そのときの彼女の葛藤は近年、映画にも描かれて、知られるところとなりました。
異質な者として創造者からも見捨てられた怪物と、女性であるがゆえの困難をかかえながら、作家として生き続けたメアリー・シェリー。両者のありようが重なることを、文学研究者の小川公代さんの著書『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』が気づかせてくれます。
愛情を求めながら拒絶され、苦悩する怪物。『フランケンシュタイン』はケア実践や非暴力の力を肯定した物語だと小川さんは述べます。100年前に書かれた小説を現代の視点でとらえ直すことで新鮮な感覚が生まれます。
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