日本を戦前に戻していいのか
「天皇は、いにしえより国をしらす(統治なさる)こと悠久であり」(前文)「天皇は、国民の幸せを祈る神聖な存在として侵してはならない」(第1条)―参政党がつくった憲法草案です。
「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」と定めた戦前の大日本帝国憲法(明治憲法)そのままです。
■天皇に法律拒否権
参政党は、参院選の公約として「創憲」を掲げています。この中で、「どんな国を目指し、どんな社会を築きたいのか」という「日本の国柄」を定めたものとして同党の憲法草案=「新日本憲法(構想案)」が示されています。
天皇は「元首として国を代表」するとされ、「内閣の責任において」としつつ、憲法や法律、条約の公布などを「裁可することができる」と規定しています(第3条)。注釈では「裁可とは君主の裁量で許可すること」で「拒否は一度に限られる」と説明しており、天皇は拒否権を持つことになります。
主権についても「国は、主権を有し」(第4条)とする一方、国民に主権があるとはどこにも書いていません。国民主権を制限し、天皇に政治的権限を持たせるもので、戦前への回帰を志向する復古主義にほかなりません。
人権についても、「国民は、健康で文化的な尊厳ある生活を営む権理(注・参政党の造語)を有する」という規定があるだけです(第8条)。現行憲法にある個人の尊重、法の下の平等、表現の自由や学問の自由など個別の権利は書かれていません。
逆に「権理には義務が伴い」と強調されます。「報道機関は、偏ることなく、国の政策につき、公正に報道する義務を負う」(16条)とし、「報道の自由」を脅かす規定もあります。
「婚姻は、男女の結合を基礎とし、夫婦の氏を同じくする」(第7条)と、同性婚を否定し、夫婦同姓を憲法上強制していることも重大です。
「教育を受ける権理」には触れているものの、その内容は、日本の「神話」や「修身」(戦前の道徳教育)を必修にし、「教育勅語など歴代の詔勅」や「愛国心」の尊重を義務付けるというものです(第9条)。国民を侵略戦争に駆り立てた戦前の教育への反省はまったくありません。
■「非国民」にされる
侵略戦争への反省から生まれた現行憲法の「戦争放棄」の章も存在せず、「国は、自衛のための軍隊(自衛軍)を保持する」と明記(第20条)し、海外での武力行使につながる集団的自衛権の行使も否定していません。
「国民の要件」として「日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める」「国民は、子孫のために日本をまもる義務を負う」(第5条)としており、これに反すると判断されれば「非国民」にされてしまいます。
現行憲法は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」し、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を三大原則にしています。これをことごとく踏みにじる国づくりを許してはなりません。
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