つらつら日暮らし

沙弥の分類について(備忘録)

曹洞宗の場合、正式な僧階などからいっても、沙弥が存在しないので、この辺はとても漠然としていると思う。よって、備忘録的に、沙弥にも色々な種類があるということで、記事にしておきたい。

 沙弥に三品有り、
 一つには七歳より十三に至る、名づけて駆烏沙弥と為す。
 二つには十四より十九に至る、是を応法沙弥と名づく。
 三つには二十より上み七十に至る、是を名字沙弥と名づく。
 是の三品、皆な沙弥と名づく。
    『摩訶僧祇律』巻29「雑誦跋渠法之七」


このように、『律』の段階で、三種類の沙弥が指摘されている。なお、内容は年齢で分けられており、7~13歳が駆烏沙弥といって、その辺に来た鳥(烏)を追い払うという最低限の仕事さえ出来れば、教団にいて良いと認められた者だとされている。この件について、例えば、以下のような定義が知られている。

 諸比丘、既に二りの小児を度し已りて、恒に教えて食上の烏を駆せしめ、而も正食を与えず。
 諸もろの居士見るに、「此の諸もろの沙門、常に平等の食を施すことを讃歎するも、而今、二りの小児を度して、但だ烏を駆せしめ、正食を与えず」と。
 諸もろの長老・比丘聞きて、是を以て仏に白す。
 仏言わく「上座の所得の食分の如きは、亦た応に此を以て沙弥に与うべし。駆烏の小児なれども、亦た応に等しく与うべし」。
    『五分律』巻17「第三分初受戒法下」


このように、厳密な語句として、「駆鳥沙弥」とあるわけではないが、文脈からはそう判断されるものである。要するに、比丘達が2人の小児を「度」とあるので、出家させたことを意味する。この時は、まだ20歳を満たしていないので、沙弥になる。そして、その沙弥達を使って、食事を狙ってくる烏(鳥)を追い払っていたので、これを仕事と認め、釈尊は上座達が得ている食事について、沙弥や駆鳥の小児(駆鳥沙弥)に対しても、等しく分けるように説いたのである。

ただし、ここからは年齢的なことは分からないけれども、敢えて「駆鳥の小児」とあるのだから、余程年齢が若かったと見るべきなのだろう。なお、『摩訶僧祇律』では「駆鳥沙弥」についての定義が無く、これ以上は分からない。

続く「応法沙弥」については、以下の定義が知られている。

善男子、五戒を法に入るの初因、三塗を出づるの元首と為す。次に沙弥十戒を受けて、即ち形、法儀を備う。此に勤策と称す。師に依りて而も住し、利を受くること僧と同じ。是を応法沙弥と為す、応当に頂受すべし。
    『禅苑清規』巻9「沙弥受戒文」


律典には、満足な定義が見出せない。もちろん、拙僧の調べ方が悪いとは思うのだが、無いものは無い。よって、中国成立の文献であるが、以上の通り示させていただく。ここで「応法沙弥」とは、沙弥十戒を受けつつ依師する者であり、仏道を学ぶ際の利益は、僧(僧衆・僧伽)と同じだとしているのである。よって、「応法沙弥」と名づけられた意味が理解出来よう。

最後の「名字沙弥」については、以下の定義を見ておきたい。

 下に品位を分かつこと有り。
 駆鳥とは、律に因らば小児の出家、阿難、敢えて度さず。仏言わく、若し能く食上の烏を駆する者、度を聴すと。
 応法とは、正に沙弥の位に合するなり。五歳を以て、師に依りて調練純熟して具に進むことに堪う。
 故に名字とは、本と是れ僧位の縁未だ及ばざるが故に。
    霊芝元照『四分律行事鈔資持記』下四「釈沙弥篇」


これは著者である霊芝元照(1048~1116)の生没年などからすれば、『禅苑清規』に比べてほぼ同時期の成立ともいえる文献になってしまう。よって、後代の一解釈でしかないが、「名字沙弥」については、僧位への縁が未だ及ばないものとされている。これは、『摩訶僧祇律』の通り、「名字沙弥」とは20歳以上を指す。年齢的には、具足戒を受けられるため、後、受けていないのは本人か、或いは師僧の問題となる可能性がある。或いは、中国であれば、諸制度との兼ね合いも考えられる。その辺を、元照は「縁」と表現した可能性のみ指摘しておきたい。

以上のように、『摩訶僧祇律』では、3種の沙弥を示すのだが、同律からはその語意などが知られなかったため、他の文献をもって把握してみた。もちろん、正確であるかどうかは分からないが、沙弥と一言で言っても、その年齢などで区分が行われていた可能性について考えてみた次第である。中国の『釈氏要覧』とかだと、当たり前のように扱うのだが、典拠が『摩訶僧祇律』のみなので、何とも難しい。

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