つらつら日暮らし

「三衣一鉢」の大切さは別紙参照

以下の一節を学んでおきたい。

但、詳らかに三衣一鉢及び自余の道具受用の儀を挙似せざるは、繁を恐るるなり。須く、正法眼蔵袈裟功徳巻、鉢盂巻及び禅苑規中弁道具等篇を熟閲し、頂戴護持して一一如法に準承すべし。
    玄透即中禅師『永平寺小清規』巻下「新学須知」項


本書「新学須知」項は、出家して修行の道に入った新人向けの教えを集めた項目であり、以下のような内容となっている。以下に、各項目名を列挙しておきたい。

新学須知
・合掌法
・叉手法
・問訊法
・揖法
・互跪法
・長跪法
・礼拝法
・読誦法
・経行法
・披袒并帯坐具法
・出班焼香法
・濾水法
・浄髮法
・入浴法
・用手巾嚼楊枝并洗面法
・入厠并洗浄法


以上の項目について、江戸時代末期に永平寺でどのような作法を構築しようとしていたのか、その理想的状態を知ることが出来る。それで、先に示したのは、末尾の部分である。内容としては、袈裟や鉢盂についての教えは非常に煩雑であるので、『正法眼蔵』「袈裟功徳」「鉢盂」巻を読み、他の修行のための法具については、『禅苑清規』巻1「弁道具」篇を見るべきだという。

よって、重要なことは「別紙参照」ということなのだが、個人的に「三衣一鉢」といえば、「僧ハ三衣一鉢ノ外ハ財寶ヲモタズ」(明和本『正法眼蔵随聞記』)が気になるところだが、作法面というよりは、理念としての法具であるか。それから、軌範としては『赴粥飯法』が気になるところだが、少なくとも上記一節には見られない。玄透禅師は『小清規』巻上「日資(日分行持に同じ)」で「赴粥飯法」という項目を立てておられるので、鉢盂を用いた行鉢作法はそちらということか。

『小清規』は、少なくとも僧堂行持としては、江戸時代の古規復古運動の完成を見た内容である。それは、極力、中国禅宗や道元禅師が示された古規を踏襲しつつ構築された。ただ、僧堂行持を中心にしたが故に、例えば葬儀法などは示されず、いわゆるの「臨時行持」に相当する項目が少ない。

そのため、後には黄泉無著禅師『永平小清規翼』も示された。『翼』の例言で「高祖の大規、猶お春秋経の如し。空華の小規、左氏伝に似たり。蓋し祖訓を昭明し、後進を誘引するなり。今、此の翼規は復た杜癖を出す。庶くは叢林を小補するなり」とある通りである。ただ、当時、それこそ地方の寺院などでは、文献が十分では無かった可能性もあり、『翼』では以下の指摘もある。

一 小規、開堂・入院・得度・津送等の法を載せず。是の故に事に臨んで、諸規を捜索せざるを得ず。寒郷の村院、或いは其の書に乏しく、此を撰する有る所以なり。
    「例言」、『永平小清規翼』


つまり、開堂や入院(寺院住職交代に因む行法)や、得度(出家作法)や津送(葬儀作法)について、『小清規』に載っていないため、もし実施しようとすれば他の文献を見るしかないが、地方の村院ではそれも難しいため、『翼』に載せたという。そういえば、先に挙げた「袈裟功徳」「鉢盂」巻などはどうだったのだろうか?玄透禅師のご意向を継いで、大本山永平寺では本山版『正法眼蔵』の出版事業を進めていくが、地方寺院にも出回ったと思いたいところである(拙寺には無く、だいぶ後の再版本を納めている)。

江戸時代、各種文献が出回ったが故に、それに基づく正しい行持作法の構築も可能になった。その様子の一端を見た次第である。

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