毎朝、出勤途中ですれ違うおばあさんがいます。
こちらは車、あちらは自転車なので、すれ違う時間は一瞬。
ですが、シワが深く刻まれ、日に焼けて真っ黒なお顔がとても印象的な方なのです。
自転車の荷台には何を入れて運んでいるのか、大きなボックスが取りつけられており、おばあさんの痩せた小さなからだがよけいに強調されて見えます。
雨の日も風の日も、果敢に自転車をこいでいる様子から、彼女にとって「出勤」であることは間違いありません。
「あ、あのおばあちゃんだ。今日も元気だな」
「いったいどんな仕事をしているのだろう?」
すれ違うたびに、私は心の中でつぶやいています。
しっかりと前を見据えている目からはとても強い光が赤いビームとなって放たれており(そういう風に見える)、情熱を持って仕事をしている方なのだろうと勝手に想像しています。
あの年齢で、毎日自転車をこいで通っている彼女の職場は、いったいどんなところなのか、車をUターンさせて彼女の後をついていって、のぞいてみたい気がします。
すれ違うときはいつも同じ表情をしているので、もしも話しかけたら、どんな風にその表情が変化するのか、とても興味があります。
ひとり暮らしなんでしょうか?
家では犬か猫が留守番をしているのでしょうか?
一見とても健康そうですが、持病があったりするんでしょうか?
色々と興味はつきません。
そしてある朝、彼女とすれ違いながら、ふと思ったのです。
人生というのは、こんなふうに同じような毎日の繰り返しで、それが積み重ねられて形成されているものなのだなと。
当たり前のような、当たり前ではないような····