きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

訃報に際して

2024年08月07日 | 教育
大学時代の恩師の訃報が届きました。

1年生の時に物理学を教えていただいたK教授です。
とても穏やかで優しい雰囲気の先生でした。

K先生はホルン吹きでもあり、オーケストラ部の顧問も担当してくださり、学生らと一緒に演奏されることも多かったので、とても思い出深いです。

高校3年のときに、理科は物理、化学、生物、地学から2科目を選択する必要があり、私はなかばカッコつけて物理学と化学を選択したのですが、大学受験に際してとても苦労し、選択を後悔したことを覚えています。

受験勉強を一生懸命やったせいかどうか、医学部1年の時の物理学のテストはいつも満点近い点数をとっていたので、オーケストラ部で先生と顔を合わせても、機嫌よくいられました(笑)


先生の訃報に際して、お名前を検索してみましたら、偶然、私が在学中の頃に先生が書かれた論文を見つけました。

医学生に対する物理学の教育について書かれた論文です。

先生が、医学生に対する物理学教育についてどんなふうに考えていらっしゃったかが垣間見え、自分の心に留めておきたい文章を以下に引用させていただきます。

「ライフサイエンスのための物理教育とは、法則それ自身よりも(中略)日常身辺の現象、医学・生物学における現象を俎上にのせ(中略)物理学をなじみ易いものにしそして生体に対する物理的なものの見方を会得させることに重点をおいた教育を意味する」

「良医は何でもこなせるだけの度量が広くなくてはいけない。だから、物理学もこなせなくてはならない」

「法則、公式、定理の説明は、学生がなるほどと思い納得のいく解説をすることが重要になってくる。おなじ説明でも、学生のレベルによってはなるほどと思ったり、思わなかったりするので、学生のレベルを計って彼らに適した説明を選ばなければならない」

「丸暗記をすればすむような知識だけを教え込む類のありきたりの無味乾燥な議義は学生も教師も後味の悪いものでこれはさけなければならない」

「議義内容は、学生にとってはすべてが初めてのことなので学生の感動と興奮を引き起す議義が望ましい」

「解けない問題、条件の足らない問題、不備な問題が提出されると学生はしばしば思考を停止する。しかし、このような態度では何も得られない。学生は自ら問題を修正し、発展させて積極的に取り組んでほしいのである。(中略)問題は無視することによっては解かれない」

K先生のご冥福を心からお祈りいたします。



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