「たにぬねの」のブログ

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textotext_04_いそげ !!_part i

2020-04-22 19:18:08 | texto
いそげ !!_part i

 何もおこらないはずのドライブだった。
 
 自動運転自動車は、数日前に我が家にやってきた。お母さんが車の移動中も仕事をするためと言うのがおもな理由。あろうことか、お兄ちゃんは新しい自動運転自動車のコンピューターをハッキングして、子どもだけでも乗れるようにしてしまった。
 してしまえば、乗りたくも乗せたくもなるのが、にんじょうってものなのか、最近は、あまりあそんでくれなくなったお兄ちゃんがドライブにさそってくれた。
 さそったくせに、本当は一人でこっそり出かけるつもりだったんだぞー、なんて、いやみなこともいう。
 自まんしたいことがバレバレだし、一人でドライブする不安もあるみたいだし、でも、妹への思いやりも少なからずだし、なにより、わたしも乗りたかったから、素直に連れてってくださいの気持ちでお願いします、ということになる。

 そもそも、お兄ちゃんが、こそこそしだしたのは二、三日前。週末である今日の夕方からお母さんが、しゅっちょうで家を空けるから。
 お母さん一人でお兄ちゃんとわたしを育てることになって、仕事の量を増やしていたから、年に何回か、そんな週末がある。
 しゅっちょう前日である昨日、お兄ちゃんは自分のケータイたんまつから自動車のせいのうがよいコンピューターにアクセスして、好き勝手していた。
 そのことに気づいていないお母さんは、ながいことペーパードライバーという家事代行のお姉さんを自動運転自動車の運転席に座らせ、駅まで送ってもらい、しゅっちょうへ。
 一人なったお姉さんはお買い物して、まったく、ハンドルにふれることなく無事に帰ってきた。自動車のコンピューターにアクセスしているお兄ちゃんによると、はじめはおっかなビックリだった家事代行お姉さんも帰り道はすっかり自動運転に安心していたらしい。

 実はお母さん、念には念を入れて、家事代行のお姉さんに自動運転自動車でお姉さんの自宅に帰って、来週くるときに、また乗ってきてくれるようにたのんでいた。週末、車をあずかってくれということだ。おもにお兄ちゃんを怪しんでのことだと思う。
 たいしてお兄ちゃんの作戦はお姉さんが帰るとき、自動運転自動車を動かないように命令して、メカのたぐいにつよくない家事代行のお姉さんに週明けに自動運転自動車専門の修理の人が家に来るまでなおらない=動かない車を家に置いていくとことになると信じこませること。
 作戦のミソはお姉さんがお母さんのあずけたい理由を大人どうしとして、しょうちしているけど、本当のところは新車の自動運転車をあずかることに、ていこうがあること。

 いつものように帰るお姉さんを見送って、しばらく、ふだん通りに過ごしたから、活動を開始した。
 妹であるわたしは食べ物かかりなので、作りおきしてもらったデザートや明日のごはんの一部と飲み物をクーラーボックスにキレイに入れた。もちろん、スナック菓子をリュックに詰めることも忘れずに。
 お兄ちゃんは動かない命令をしておいた自動運転自動車の命令をかいじょして、運転席に大きな人形をすわらせたあと、クーラーボックスやリュック、水筒を運ぶのを手伝ってくれた。
 わたしたちは自動車が我が家に来た、よく日にお母さんとドライブに行ったときと同じように、後ろの席にならんですわって、自動運転自動車に行き先をつげる。これからは自動車におまかせだ。

 後ろの席でおしゃべり。まずはお兄ちゃんの自まん話だけど、こうしてドライブができる、いきさつなので楽しく耳をかたむける。気の利いた相づちも打てて、いい雰囲気。
 セキュリティをどのようにかいじょし、ハッキングを成功させたかの話の中に自然とお母さんが自動運転自動車に付けたオプションの話がまぎれる。
 なんでも、仕組み的に時速七十キロ(メートル)をこえないようにしてあったり、人にやさしく、繰り返し使えるエコなエアーバックが付いているらしい。
 最高時速のリミットはコンピューター上ではなく、こうぞう上で本当に出ないようにしてあるので、いじることができなく、お母さんらしい、てっていぶりと兄妹で結ろんづけた。
 エアーバックは、最高ほうの自動車レースでも問題なく使える安全性とかで再びお母さんらしいてっていぶりと結ろんづけ、二人で笑ってしまった。

 新しい自動運転自動車を買う前にも、さんざん聞かされた話だけど、お母さんは昔から、どうして自動車をつくる会社は、せいげん速度をはるかに上回る速度が出る自動車をつくって売っているか分からないと言っている。 高学年になったお兄ちゃんがほしい人がいるからとか、国によってルールがちがうとか、私道とか個人の敷地内とかは自由でしょっ、とか反ろんというか逆の見方もあるじゃないといった、どっちが大人か分からない落ち着いた物言いをしても、今回の自動運転自動車を買うときのように、速く走れない方がオプションになるのではなく、速く走れる方をオプションにすべきよ!とか、法律を変えるべきとか、お母さんは引き下がらない。
 じつは、お兄ちゃんもわたしもそういったお母さんの熱い部分も嫌いじゃないので、かたちだけでも、うなずいてあげる。

 だからと言って、お兄ちゃんのいたずら精神が減るなんてことはなく、こうぞう上の最高時速はいじれなくとも大人しい運転モードをアグレッシブモードにかえるに止まらず、数々のへんこうの上乗せをこころみたことを自まんげに話している。お母さんとお兄ちゃんをみていると、きょういくが、かんたんではないの実例かな?って思う。
 目的地は、ひかく的低速でもアクロバチックな走行を楽しめる、学校近くにある町外れの裏山の道。夜は車が入らないように、ふもとの二つの門は閉じられる。
 でも、道に面する小さな公園から車一台くらい通れる、すき間があることは小学生の間では有名。それほど大きくない我が家の自動運転自動車なら、らくしょうで通れるだろう。 山のちょうじょう近くにある駐車場を目的地に、せっていし注意すべき前もっての情報として、小さな公園のすき間を与えただけで、速やかな運行を実施できるか自動車メーカーの実力を試験してやるとお兄ちゃんは息巻いている。

 お兄ちゃんの情報入力の仕方もよかったから裏山の道に自動運転により何事もなく、しんにゅうできたと、わたしは思うのだが、失敗する期待を裏切った自動運転自動車に少しがっかりしているお兄ちゃんがおもしろくて笑える。
 さて、山道における時速七十キロマックスのアクロバットな走りは小学生二人には十分、怖いものだった。目的地につく前だったけど、わたし・妹のためと言い張ってソフト上の最高時速を三十キロにせっていしなおすお兄ちゃん。
 実際、怖かったので、かわいい妹のためといいはる、ちょっと年上をたてるため、にっこり笑って、こたえておく。
 やがて、目的地に、せっていした、ちょうじょう近くにある車二、三台分の駐車場に到着するとクーラーボックスに入れてきたメインをふたりなかよく食べ、今宵のアドベンチャーの成功を兄妹でいわった。だとすれば、えんちょうせんである。
 それから、新たな入力をして、きれいな夜景を何周もする。走った距離をあらわすメーターをどうごまかすつもりか不安になってきたが、お兄ちゃんもお母さんもその辺りは、あんがいルーズなので今日のところは何もいわないことにする。
 やがて、お兄ちゃんの新たなくわだて、男の子の友達や、あこがれのクラスメートの女子をさそうぞ!的な話になったので、いつもなみに相づちの回数は減らしてやった。気づいてないだろうけど。

 そのような、何もおこらないはずのドライブだった。
 裏山の道にカーブが連続する場所がある。今のぐるぐるする向きは連続するカーブをのぼる方向。
 何度目かのカーブにさしかかったころ、カーブ向こうから放たれた、まぶしい光を見たと思ったら、反対側の車線に曲がって来たばかりの一台の自動車がとつぜん、姿をあらわした。
 向こうは、くだりだ。勢いそのまま中央の線をオーバーランして、わたしたちの乗っている自動運転車にせまってくる。
 正面しょうとつをさけることはできても、ぶつかることは、さけられないと判断した自動運転自動車は乗っている人が受ける、しょうとつ時のしょうげきを最小限というかゼロにするためのパターンの形にエアーバッグをふくらませる。
 実際、二台の車は激しくぶつかり、そうほう共に円を描きながらスリップした路上に、あっちこっちの向きでそれぞれ止まった。
(05へ)つづく


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