極私的お葬式

父の葬儀の話です

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2009-05-18 21:47:50 | 日記
母はここ数日、調子が悪く、臥せっているようだった。
「一度、かあさんのとこに寄ってから、病院に行けばどうか」と伝えた。
いつも妹が車で母を乗せて病院に行く。実家から病院は車で30分ほどかかる。

「血圧の低下」はこれまでになかった。とりあえず、一番早い方法で行こうと思った。
新幹線のぞみ号が停車しない駅に一番早く到着するのは、6時33分東京発のこだま号だった。
その後、7時03分初のひかり号でもそれほど変わらないことがわかり、それに乗るように、家を出た。

駅まで歩いている時、携帯が鳴った。妹からだった。

「着いたらもう心肺停止になってて、、、死んじゃった」と、妹は子供のように言った。

家に戻り、背広を持ち、再び出発する。

7時26分初のこだまに間に合った。

ゴールデンウイークが始まっていた。野球が好きになった息子と、
毎日キャッチボールをする約束をしていた。5月6日には大好きなチームの試合を観戦する予定だった。
ああ、行けなくなっちゃったなあと思った。
自分の父が死んだのに、不謹慎だと思ったが、そんなことを考えた。

悲しみは湧き上がってこなかった。しかし、車内で何かをするわけでもなく、ボーっとしていた。
デッキで何度か電話連絡をする。遺体は自宅に戻さないで、通夜告別式をする会館に直行する
とのことだった。母が前々から希望していたことだった。

この地方では、「自宅で通夜、葬儀告別式を別会場」で、という形が一般的だ。
通夜に来るのはもっぱら近所の方々となる。母はこれを嫌った。
「通夜も告別式も別会場でやる」と主張していた。死去したことを連絡するのは、葬儀が済んでからでよい、
とのことだった。実際に同じ隣保でそのようにされた人がいて、「簡単でいいねえ」と言っていた。

派手にしたくない、できれば誰にも知らせたくない、こそこそっとひっそりやりたい、
というのが彼女の希望であり、他者の意見を聞こうとはしなかった。


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