時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

JNR編集「時刻表」

2023年10月08日 | 書棚の肥やし

多摩爺の「書棚の肥やし(その8)」
JNR編集「時刻表」(弘済出版社)

遡ること36年前(1987年)の4月、日本国有鉄道(通称・国鉄)が民営化され、
六つ(東日本・西日本・北海道・東海・四国・九州)の旅客鉄道会社と、
一つの貨物鉄道会社で構成される、JRグループが・・・ 民間会社としてスタートした。

その前の月、電車に乗ることが好きだった・・・ 頑固な鉄道マンが、
誇りにしていた、白い乗務員の制服に別れを告げるとともに、
旅を仕事にしている人たちか、よほどマニアックな人たちしか手にすることがない、
表紙に「時刻表」と記された一冊の月刊誌が・・・ 書店で販売されていた。

頑固な鉄道マンとは・・・ 1987年3月に寝台特急「あさかぜ」に乗務して、
東京駅から下関駅までの勤務を最後に、鉄道マンとしての人生を終えた、いまは亡き父のことだが、
父の最後の乗務を、まさか東京駅で見送るとは思いもしなかったものの、
前々年に東京勤務を命ぜられ、運良く立ち会えたことは・・・ 今尚、鮮明な記憶として残っている。

父の最後の乗務を見送った後、当時住んでた市ヶ谷に戻ると、ふらりと立ち寄った駅前の書店で、
ふと目に付き、購入した時刻表は・・・ JNRが編集した最後の時刻表(740円)で、
翌月から民営化され、JRとなる予定の・・・ JR最初の時刻表だった。

時刻表を手に取り・・・ ふと、脳裏をかすめたのは、
毎月発刊される時刻表だけど、国鉄(JNR)が編集したJRの時刻表は、
後にも先にも、1987年の4月号しかないことだった。

偶然だったのか、必然だったのか・・・ それは分からないが、
これは思いでになるし、ひょっとしたらお宝になるかもなんて、ちょっとしたスケベ心もあって、
帰省するとき、父への土産にしようと思って購入したものの・・・ 以来36年、
836ページに全国各地の路線と、駅名と、列車が網羅された時刻表は、文句一つ言わず、
書棚の肥やしとして、次に手に取られる日がくるのを書棚の隅っこで待つことになってしまった。

なにが凄いって、全国各地の本線のみならず、小さな支線まで分単位で乗ってるし、
周遊コースに含まれる、全国の私鉄やバスまで網羅されてるし、
いまは廃線となってるかもしれない、ローカル路線もあるんだから、
これさえあれば、当時の国内の交通網と移動時間のほとんどが把握できるのである。

因みにJNRとは「Japanese National Railways」から
頭の一文字をずつ取った、日本国有鉄道の英語表記の略称であり、
いまのJRの略称は、国有を意味するN(National)の1文字が除かれている。

そんな私の宝物というか、書棚の肥やしが・・・ 昨日、危機に瀕することになった。
断捨離に精を出していた女房の目に留まり、
あろうことか「捨てても良いか?」・・・ と、私に声を掛けてきたのである。

女房が書棚の片付けをしてたのは知ってたが、
なんの本か、確認もせずに「ええよ。」と・・・ ついうっかり、返事をしてしまったのだ。

捨てられずにすんだのは、捨てる物として整理され、玄関に置かれていた、
新聞紙や雑誌の一番上に・・・ 「時刻表」があったことと、
古紙や段ボールなどを、マンションのゴミ置き場に持っていくのは私の役割だったことから、
偶然だったのか、必然だったのか、それは分からないが、
そういえば出会いもそんな感じだったから、この時刻表とは赤い糸で結ばれているのかもしれない。

慌てて「ダメダメ、これはお宝だから・・・ 。」と私
「なにがお宝よ、捨てて良いって言ったじゃない?」と女房
価値観の違いだけは、如何ともし難いが、
JNR編集のJR最初の時刻表は、危うくゴミとなる寸前で、最大の難を逃れたのであった。

そんな1987年4月の時刻表を、1ページめくってみると、
そこにあったのは・・・ 「春、だから滋賀」と記されたページに、
旅へと誘う、次のようなメッセージがあった。

 まるで海のような琵琶湖の湖面に、たおやかな春の風が通り過ぎる。
 かつて広重の絵できらびやかに喧伝された近江八景
 いま心ときめく近江路で あなただけの八景を見つけるために、
 春風に吹かれて旅にでる。 

ここ最近、旅といえば・・・ いつも車で出かけているが、
かつては時刻表をめくりながら、旅のプランを練り、観光地に想像を膨らませていたころもあった。
歳も歳だし、お金はないが、時間だけは十分すぎるほどあるんだから、
たまには時刻表を片手に、列車に揺られる旅に再チャレンジするのも・・・ 良いんじゃなかろうか。


740円の宝物は・・・ JNRが最後に編集し発刊された、JR最初の時刻表である。

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15 コメント

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Unknown (keiko(けいこ))
2023-10-08 06:17:22
おはようございます。
東京勤務を拝命されたからこそ!
良かったですね。
運命というか 様々な出会い 出来事は偶然と思いつつ 振り返れば必然なことも多々ありますよね。

奥さまとの会話にクスッとしました(笑)

時刻表 懐かしい。
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Unknown (cobamix)
2023-10-08 06:19:51
おはようございます
いつもフォロワーさんのブログを訪問するのは基本、寝る前の楽しみなんですけど、時刻表の画像に反応してしまいました😙
マニアという言葉は偏執狂という意味があるので嫌いなんですが、かつての私は時刻表マニアと言ってもいいぐらいでした
時刻表をめくって空想旅行に何回も出かけていましたもの
今は1年に1冊、買うか買わないかですけど横濱 JAZZ PROMENADE 2023

どこへやってしまったんでしょうねぇ
まだお持ちの多摩爺さんが羨ましいです〜😁
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Unknown (cobamix)
2023-10-08 06:25:33
追伸
先ほどのコメントに関係のない言葉が混じってしまいました
「横濱 JAZZ PROMENADE 2023」
申し訳ありません
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Unknown (多摩爺)
2023-10-08 06:38:46
けいこさん、おはようございます。

私もつくづくそう思います。
いつもなにかしらの因があって、良かろうが悪かろうが、それが果に繋がる。
そんなことが感じられるって、やっぱり年寄りなんですよ。
古希まであと10ヶ月・・・ 元気で頑張ります。
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Unknown (多摩爺)
2023-10-08 06:41:30
cobamixさん、おはようございます。

出会い頭と言いますが・・・ ホントに捨てられなくて良かったです。
色あせた時刻表ですが、思い出がたくさん詰まっていたし、
また新たな想像も膨らませてくれました。
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Unknown (yoko-2-1)
2023-10-08 07:50:02
おはようございます。
740円というお金では買えない価値が在りますね。
素敵な話をありがとうございます。
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Unknown (多摩爺)
2023-10-08 13:27:56
yoko-2-1さん、こんにちは

たかが740円、されど740円でしょうか。
紙の色が変った古びた雑誌ですが、思い出が詰まった1冊なので、
いましばらくは処分出来ないと思います、
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Unknown (なおとも)
2023-10-08 17:31:42
こんにちは!
素敵なお話本当に有り難うございました!
お父さまの思い出にロマン溢れる時刻表の文章。
大切なお宝がご無事で何よりでした。
私、時刻表を見るのが大好きでした。鉄道旅が一番好きです。ディスカバージャパンの頃、本当によく旅をしました。懐かしく思い出しました。なおとも
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Unknown (多摩爺)
2023-10-08 19:17:23
なおともさん、こんばんは

若いころは、思い出に浸る事なんてほとんどなかったのに、
歳を取るとあれもあった、これもあったと、思い出に浸ることが多くなりました。
女房に言わせれば、思いでを覚えているから、まだ認知症じゃないよでした。
なんのこっちゃですが、その言葉・・・ 妙に説得力があると思いませんか?
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Unknown (eowyn)
2023-10-08 23:09:34
是非とも青春18きっぷと時刻表を手に、
のんびり列車の旅を♪(=^ω^=)ノ
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