takubonpapa blog

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強いられる死~自殺者三万人超の実相~ 斎藤貴男

2009-11-28 11:25:12 | 最近読んだ本
 10年間連続で年間3万人を超える自殺者を出していることについて慣れてしまったというか、マスコミも取り上げないこともあり、自分で望んで死んだのだという「自己責任」で片づけていた気がする。一方交通事故死者数は2000年から1万人を割り込み08年は5,155人であったが、その6倍もの自殺者を出していることが社会的に問題にならないことは異常であるとかすかに考えていた。そんなところに斎藤貴男氏が自殺者の問題を取り上げた本を出したと聞いたので購入してみた。

 本にはたくさんの自殺者の事例や自殺防止に取り組む団体が取り上げられている。職場のパワハラ・郵政民営化後の郵便局での過労死や過労自殺、多重債務者、中小企業経営者、学校のいじめ、自衛隊の中のパワハラ、障害者自立支援法施行後の無理心中、新銀行東京の石原的企業体質の中で起こったモビング(集団による心理的暴力)事件など、読んでいて気分が悪くなるほど醜いいじめの実態を浮き彫りにしている。

 10年前といえば故橋本龍太郎元首相が社会保障費をたしか9兆円規模だったか大幅に削減した頃と重なる。それ以降の故小渕・森と続く新自由主義改革路線は小泉・竹中構造改革で完結することとなる。新自由主義が市場原理主義とは異なり緊縮財政による小さな国家をめざし、階層格差を固定し金持ちを優遇する差別の仕組みであることは既に暴露されている。構造改革路線の本質は先天的な障害も含めて自己責任だと切り捨ててしまう障害者自立支援法を見れば明らかなように、機会の平等などないことを一番よく知っている世襲政治家が、恥ずかしげもなく結果の自己責任を口にする差別の政治だったと言えるのではないだろうか。

 構造改革路線によって医療費や年金などの社会保障費、教育費、地方交付税などが大きく削られ社会全体のセイフティネットの網の目が大きくなった。同時に財界の要請に応じて派遣労働の規制を緩和し企業にとって都合の良い働かせ方ができるようにしたことでワーキングプアの問題や偽装請負などの違法行為が出てくるなど社会全体が大きく変わったのではないか。

 雇用環境も過労死するほどの状況に追いつめられる正社員と、会社の給料だけでは生活すらままならない非正規労働者に二極化され、協力・協同などの言葉を口に出せないほど緊張に満ちた人間系の中でお互いに疲弊していく状況に追いつめられていたし今も追いつめられていると思う。

 それらの事実を重く受け止め世の中が少しずつ変わりはじめていることに、まだまだ世の中捨てたものではないと思わされる。政権交代もその現れだと思うし、「自殺対策基本法」という法律が参議院の超党派議員で構成された「自殺防止対策を考える議員有志の会」による議員立法で制定されている。
 追いつめられて絶望して死を選ばなければならない人が3万人、死ななかったけどそこまで追いつめられた人も含めると倍以上いるかもしれないが、死ぬくらいだったら何でもできると思えるような希望が持てる世の中であってほしい。そして人はそれぞれ様々な事情を背負って生きていると思うし、それを周囲の人に打ち明けている人は少ないと思う。誰かを蹴落としたり、足を引っ張り合ったり、自分にとって損か得かでしか物事を考えられずそれを恥ずかしげもなく言葉にするような関係ではなく、自分にできることを精一杯実践して一生懸命生きる「愛と義」に満ちた世の中になってほしいと思う。
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