よろず戯言

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青天の霹靂

2014-07-09 00:15:06 | 映画

先日の休みに映画を観てきた。

主演:大泉洋,原作・脚本・監督・出演:劇団ひとり のヒューマンドラマ、

晴天の霹靂(へきれき)”だ。

キャッチコピーは、“人生は、奇劇だ。”

 

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劇団ひとり初監督作品。

原作・脚本を手がけた作品は、過去にあったものの、

それのみならず、監督から出演までこなすという意欲作。

 

前に井上真央永作博美 主演の映画、“八日目の蝉”のときにも書いたけれど、

正直言って俳優の劇団ひとりが、どうにも気に入らない。

バラエティ番組でのお笑い芸人としての顔は好きだが、

俳優をやっている彼が、生理的にというか、どうにも受け容れられない。

今回この映画も公開前の予告編などを観ていて、

面白そうだとは思えど、主要キャラに劇団ひとり・・・。

最初はスルーしていた。

 

02

 

ところが深夜に放映されている福岡のローカル情報番組で、

この映画の番宣で、大泉洋と劇団ひとりが登場しているのをたまたま観て、

番組内での、ふたりのやりとりが面白く、

またその番組中にも放映された予告編にも興味惹かれ、

けっきょく観に行くことにした・・・。

 

07

  

東京都内、場末のバーで、

客相手にマジックを披露する、売れないマジシャンの晴夫(大泉洋)。

20年もこのバーで、彼はマジシャン・バーテンダーをやっている。

このバーを出て、テレビで売れっ子になった後輩から蔑まれ、

スーパーで見切り品の惣菜を買って、ひとり寂しくボロアパートへと帰宅する。

 

帰宅すると、アパートは水道管の破裂で水浸し。

部屋も浸水していて、大事なマジック道具も台無しに・・・。

その状態に呆然とし、もう何もかも嫌気がさし、

夜の公園でひとり、半額シールのついたホットドッグを食べる。

そのとき携帯電話が鳴る。

警察署からだった。

「お父さんが遺体で発見されました、遺骨を引き取りに来て下さい。」

 

05

  

父親とは高校卒業以来会っていない。

晴夫には生まれたときから母親が居なかった。

父親曰く、「お前が赤ん坊のとき、俺の浮気がバレて出ていった・・・。」

そんなだから、晴男は母親の愛情を知らず、

なぜ自分を連れて行かず、ひとりで出ていったのかと恨んでもいた。

男手ひとつで育ててくれたとはいえ、父親にも嫌悪感を抱いていた。

ラブホテルの清掃員なんて仕事をしていた父親、

そして母親が居なくなったのは、親父の浮気が原因。

 

警察署で骨壺を受け取る。

晩年は河川敷でホームレスだったという父親。

その父親が住んでいた、高架下の段ボールハウスを覗く。

雑多ながらくたのなかから、ひとつの缶を見つける。

フタを明けると、色褪せた古い写真が一枚。

若い男が赤ん坊を満面の笑顔で抱いている写真。

 

晴夫は、その赤ん坊が自分で、それを抱く若い男が父親だと即座に理解した。

写真を握りしめ、河川敷でむせび泣く晴男。

「親父・・生きるって難しいな・・・

毎日みじめで何のために生きているのかわからねえ!

なんで俺なんか生きてるんだよ!」

そう泣き叫んだ瞬間、晴天にも関わらず一閃の稲光とともに晴夫に雷が落ちてきた。

 

06

 

――――。

気付くと河川敷で倒れていた。

橋脚が古めかしいレンガ作り・・・?

落ちている新聞紙の日付が昭和48年・・・?

なんだか周りの様子がヘンだ。

 

落雷のショックか?

晴夫は40年前の東京にタイムスリップしていた。

そしてひょんなことから、浅草の劇場にたどり着く。

支配人の丸山(風間杜夫)に、「なにができる?」と訊かれ、

晴男は側にあったスプーンを曲げてみせる。

まだスプーン曲げで一世風靡したユリ・ゲラーが来日していない。

初めて見るマジックに驚いた丸山は、

ちょうど劇場に所属しているマジシャンの“チン”が、数日前から行方を眩ましているため、

そのマジシャンの代理で、晴夫を舞台に立たせることに。

 

マジックの腕は確かでも、喋りのパフォーマンスが苦手な晴夫。

浅草ではマジシャンだろうが、話芸がなけりゃ舞台が務まらない。

そんなわけで、話芸の苦手な晴男の助手として、悦子(柴崎コウ)を付ける。

スプーンを曲げる謎のインド人、“ペペ”として舞台ビューを果たす。

そしてスプーン曲げをはじめ、この時代にはないマジックを披露し、

観客から好奇の目で見られ、ペペは劇場の人気者になる。

 

元の時代に居ても、みじめで情けなかった自分、

だがこの時代ではスターになれる!

有頂天になった晴夫は酔った勢いで、助手の悦子に手を出そうとする。

だが・・・彼女の部屋には男物の洗濯物、歯ブラシや茶碗などペアの生活用具・・・。

晴夫が来る前に行方を眩ませていたマジシャン、チンと同棲していたのだった。

しかも彼女はお腹に、チンの子を身籠もっていた。

 

01

 

悦子の元へ、チンが詐欺容疑で警察署で保護されていると連絡が来る。

引き取りに行きたいが、つわりがひどくて動けない悦子。

代わりに、晴夫が警察署へ出向く。

そしてそこで、悦子の同棲相手のチンを見て驚愕する。

親父のダンボールハウスから出てきた、写真に写っていた赤ん坊を抱く若い男!

つまりは・・・チンこそ、若かかりし日の自分の親父、正太郎(劇団ひとり)だった。

ということは、悦子が自分の母親!?

お腹の中の子どもは自分!?

 

40年前・・・

自分が生まれる前にタイムスリップし、若い頃の両親と会ってしまった。

それを悟ったとき、晴夫はやるせなく複雑な心境に陥る。

若い頃もロクでもない親父。

自分を捨てて出ていくとは思えない優しく強い悦子。

 

臨月が近づいたとき、悦子の身に思いもよらないことが起こる。

「浮気がバレて出ていった・・・。」というのは正太郎のウソだった。

何も知らない幼い晴夫のためを思ってついた大きなウソだった。

生まれ来る自分のため、正太郎も悦子も悲劇を受け容れ、できる限りの愛を注いでくれた。

何も知らず、その両親を憎み生きることに絶望していた晴夫は、

己の情けなさに打ちひしがれる。

 

そして、いよいよ自分が生まれる運命の日。

晴夫はタキシードを着込み、意を決してステージに上がる。 

自分を生んでくれた母のため、育ててくれた父のため、最高のマジックショーを披露する。

まばゆいスポットライトを浴び、自信に満ちあふれた表情で、大技を次々と披露して喝采を浴びる。

人生に疲れ、場末のバーで酔っぱらい相手に淡々とカードを切っていた晴夫はもう居ない。

病院では悦子がお産で苦しみ、分娩室の外では正太郎が祈る。

そして、産声が聞こえてくる・・・。

 

04

  

すごい良かった。

まず毛嫌いしていた劇団ひとり氏に謝りたい。

すみません、あなたは天才です!

ありきたりなようで斬新だったストーリー。

最後まで見入ってしまった。 

最後の最後にどんでん返しがあるものの、まったく許せるレベル。

こういうのひとつ取っても、脚本の巧さが光る。

 

大泉洋、演技の上手さはもはや言うことはなく、

吹き替えなしで難易度の高いマジックを猛練習して習得したという。

しかもそれを編集なしのワンカットでやっており、役者魂を感じさせられる。

同時に、劇団ひとりの妥協しない“鬼”監督ぶりもうかがえる。

 

柴崎コウもよかった。

ひと昔前まで表情の固い女優さんだとか、棒読みだとか言われていたが、

終始、緩急の利いた喜怒哀楽の表情を見せてくれる。

終盤の晴夫との病室のシーンなんか、思わず涙してしまう。

 

03

  

昭和の風景、街並みや劇場を再現するため、

かなり拘ったらしく、美術スタッフがかなり苦労したとのこと。

今やCGで簡単なセットを組めば、あとはどうにでもできる時代。

実際、“ALWAYS 三丁目の夕日”や、“20世紀少年”など、

昭和の風景や町並みなど、そのほとんどがCGで再現されている。

だが、この晴天の霹靂では、CGは一切使わず、

またスタジオでセットを組んだりもせず、全てロケによってそれを再現している。

劇団ひとりの強い拘りには感服する。

本人も出演した、“バブルへGO!!タイムマシンはドラム式”で、

その昭和のバブル期のセットの細部を見て回り、

ダウトがないか粗探ししていたという話もうなずける。

 

もう公開終了している劇場も多いが、邦画好きなら観て損はなし。

劇団ひとり,大泉洋,柴崎コウのそれぞれのファンは観るべし。

あと、それとは無関係に、両親と何かしらわだかまりのあるひと。

自分の人生に満足していないひと、生きることに疲れているひと。

こういう人にも是非観てもらいたい。

 

 

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YouTube: T.M.Revolution  蒼い霹靂 (-Jog Edit-) 歌詞付き

蒼い霹靂/T.M.Revolution

西川貴数と浅倉大介のユニット、T.M.Revolutionの7th.シングル。

まあ彼のファンではなかったが、確か「晴天の霹靂」って曲出してたよな~と、

うろ覚えの記憶で探してみたが見つからず。

それもそのはず、「晴天の霹靂」でなく「蒼い霹靂」だった・・・。

“青い”じゃなく、“蒼い”にしているあたりが非常に厨くさい。

聴いてみると、聞き覚えがある曲だった。

まあこの当時、テレビ露出凄かったからなあ。

 

 



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