よろず戯言

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君の膵臓をたべたい

2017-08-08 22:47:46 | 映画

先日の休みに映画を観てきた。

浜辺美波北村匠海 主演のドラマ、“君の膵臓をたべたい”だ。

原作は住野よる氏の同タイトルの小説。

キャッチコピーは、“ラスト、きっと このタイトルに涙する。”

 

 

最初にこの映画の予告編を観たのはいつ頃だったろうか?

内容うんうんよりも何よりも、この奇妙なタイトルにギョッとした。

予告編を見るかぎり、間違いなく青春恋愛モノ。

“恋”だの“愛”だの“青春”だの、解りやすく恋愛・青春ワードの入った、

ありふれたようなタイトルだったら、きっと見向きもしなかったことだろう。

それがこの映画のタイトルときたら、“君の膵臓をたべたい”だぜ!?

なんじゃそりゃ?

 

“ラスト、きっと このタイトルに涙する。”

締めのキャッチフレーズも意味深だ。

同じようなこと、“湯を沸かすほどの熱い愛”でも言っていたような。

それで、あの映画ではそのとおりに号泣させられた。

これは・・・泣けるかもしれない。

タイトルの意味も知りたい・・・。

そんなわけで、気が付けば前売券を購入していた。

 

 

かつて自身も通っていた母校の高校で国語の教師をしている、志賀(小栗旬

その図書館が老朽化によって取り壊されることになった。

在校生だったとき、図書委員を務めていたこともあり、

当時を知る教頭から、半ば強引に蔵書の整理を任されてしまう。

 

 

しぶしぶ図書館へとやって来た志賀。

図書委員のひとり、栗山(森下大地)が整理に苦労していた。

栗山が手にしていた蔵書をまとめたファイル。

そのファイルは、かつて自身が整理してまとめあげたもので、当時のままだった。

栗山はこのファイルを作成したのが、かつての志賀だったと知り、色々と訊いてくる。

「これ、全部整理した図書委員って、先生だったんじゃ?!」

志賀は懐かしみながらも、当時のかけがえのない人物を思い出していた。

 

 

――12年前。

志賀(北村匠海)は病院のロビーで、一冊の文庫本カバーのかけられた本を拾う。

思わず本を開くと、手書きで“共病文庫”とタイトルが書かれていた。

中身はすべて手書きで、本ではなく日記帳のようだった。

“私はあと数年で死んじゃう膵臓の病気・・・”

“家族以外の誰にも秘密・・・”

 

不意に後ろから声をかけられる。

共病文庫の落とし主。

それは志賀のクラスメート。

明るく活発な女子で、クラスいちの人気者だった山内桜良(浜辺美波)だった!

クラスいち根暗でひとりも友達が居なかった志賀が、

クラスいち明るい人気者の桜良の秘密を知ってしまった。

 

 

だが、彼女は動揺することもなく明るいままで志賀に接する。

それどころか、家族以外でただ一人、自身の秘密を知る者として、志賀につきまとい始める。

余命わずかという事実を知りながらも、桜良に対し淡々と接する志賀。

桜良はクラスいち地味だった志賀に興味津々。

自ら図書委員に立候補して、図書館で志賀と一緒に蔵書の整理をはじめるが、

人付き合いが苦手で孤独を愛する志賀は、桜良を避けようとする。

だが桜良は、持ち前の明るさで強引に志賀に接近し、なにかとちょっかいを出してくる。

志賀には余命わずかだという桜良の快活さが理解できない。

  

ふたりで食事したり、旅行したり。

気の乗らない志賀だったが、桜良が余命わずかだというのが真実だと知ってから、

桜良の願いを受け容れ、桜良のことを気遣いはじめ、

そして自身も他人に閉ざしていた心を、だんだんと開いていく。

  

 

人気者の桜良と根暗の志賀が仲良くしているのを、快く思わない者も居る。

ときに志賀は、桜良の親友の恭子(大友花恋)や、元彼の隆弘(桜田通)らから、

厳しく追及されたり、報復を受けたりもする。

反面、興味を持って近づいてくる、ガム君(矢本悠馬)など、

志賀の周辺も大きく変わろうとしていた。

 

桜良が検査入院したとき、志賀は毎晩病室へ赴き、その日の授業を教える。

「君、教師になりなよ!」

「教え方上手いじゃん!」

「もう一度旅行に行きたかったなあ・・・。」

病室での桜良の言葉。

退院したら、すぐに旅行へ行こう!

そう決意した志賀は、まだ桜の咲いている北海道を旅行先に選ぶ。

病室で、「もう一度桜を見たかったなあ。」とつぶやいた桜良のために。

 

 

「君の膵臓を食べたい。」

「なにそれ?カニバリズムにでも目覚めたの?」

「昔のひとってさ、体のどこか悪いと、同じ部分を食べて治そうとしたんだって。」

――

「“共病文庫”、アタシが死んだら、キミにだけ読む権利を与えま~す!」

「アタシが死んだら、アタシの膵臓、君が食べていいよ。」 

 

――

「君の膵臓を食べたい。」

退院して志賀との待ち合わせ場所に向かう桜良。

志賀が桜良に送った一行のメール。

それが最後だった。

 

・・・・・。

志賀は栗山と蔵書の整理をしながら、桜良との日々を克明に思い出して行く。

残りわずかな余命をまっとうすると思っていた。

彼女はずっと笑顔のままだった。

 

 

 

泣いた。

泣きまくった。

何べん泣いたか判らない。

後半、波のように押し寄せてきて、その都度涙腺が決壊。

どうせ今時の若者が見る、薄っぺらい恋愛ものだろうな・・・とナメていた。

これはトンデもない感動作だった。

 

余命わずかであることを悟り、自ら腹をくくり、

「死ぬまでにやりたいこと」リストを作って、それを志賀と実行していく桜良。

この辺は、“湯を沸かすほどの熱い愛”や、“最高の人生の見つけ方”でもあった。

ただ高校生となると、そんな大それたことは実行できやしないし、

それもかわいくて些細なことだったりもする。

現実離れしない程度で、それを実行しようとしていて実に微笑ましい。

しかし最近の高校生て金持ちなのね。

あ、高校時代は12年前って設定だから、最近でもないや。

 

 

死ぬまでにやりたいことリストに、「恋人じゃない男の子と“いけないこと”をする」というのがあり、

それを両親が居ない家に志賀を呼び、実行に移そうとする桜良。

据え膳食わぬは男の恥とばかりに、野獣になる志賀だったが、

桜良が怯んでしまって、けっきょく未遂に終わってしまう。

このシーンを、親子連れはどう観てしまったのだろう。

自分の二列ほど前に、小学校高学年くらいの男の子と、

中学生くらいの女の子を連れたお母さんが、母子で鑑賞していたのだけど・・・。

 

これと似たようなの、松本人志と中居正広が出演した伝説のテレビドラマ、“伝説の教師”でもあったなあ。

「死ぬ前にセックスしたい!処女喪失したい!」と、

副担任の中居に関係を迫る、余命わずかだった女子生徒が居たのを覚えてる。

このドラマ、最初から最終回まで観たけれど、なかなかの糞だったなあ・・・。

竹中直人の無駄遣い。

 

・・・話をキミスイ(こう略すらしい)に戻して。

この中心人物ふたりが、けっきょく、友達以上恋人未満のまま終わる。

この距離感が、返って悲しさを増幅させるし、恋愛ドラマでもないため、

単なるお涙ちょうだいの若者向けドラマじゃあなくなっている。

青春ドラマに分類されるだろうが、これは立派なヒューマンドラマだ。

 

主演のふたりが良かった。

桜良役の、浜辺美波ちゃん。

役柄のため終始明るい。

笑顔も素敵だが、その明るい声質とポジティブな台詞がいい。

ラストの手紙の音読は最高だった。

キャッチコピーどおり、最後のタイトルコールで泣いたさね。

あれは、彼女の本当の願いだったんだ。

演技のウマヘタは置いといて、とにかく素敵な子だった。

たまに、峰岸みなみに見えるときがあるんだよなあ。

 

 

志賀役の北村匠海くん。

名前どこかで見たことあるんだけど、どこで見たのか思い出せない。

顔を見ても思い出せないので調べてみたら、

あやしい彼女に出てた、売れないバンドやってたカツさんの孫だ!

ちょ・・・180°違う役柄やん!

人との関わりを嫌い、境界を作り、自分の領域を守って孤独を愛する少年。

友達はおらず、余命わずかな桜良に対しても、当初 嫌々接する。

そんな難しい役柄を見事に演じていた。

後半の共病文庫を読んで号泣するシーンには、誰しもつられて泣いてしまうはず。

彼がむせび泣くシーンで自分も一番泣いた。

 

そんな北村くん演じる志賀、12年後の現在、大人になった姿を演じたのが小栗旬

志賀の性格は大人になってもそのまんま。

自己主張できず、人付き合いが苦手、物静かでどこか影のある教師。

これまでに観たことのない小栗旬を観ることができて新鮮だった。

今回、小栗旬が北村くんの演技に擦り寄せたらしく、

喋り方やうつむき方、目線の動かし方、さらには利き腕までも矯正して演技に臨んだとか。

なんだかんだで、蜷川幸雄に見出された俳優さんだ。

 

 

桜良の親友、大人になった恭子の現在を演じたのが、北川景子

登場シーンはそれほど多くなく、ほんのチョイ役程度なのだが、

ラスト、桜良の手紙を読んで号泣するシーンは見物。

ここでもまた涙を誘われてしまう。

本来、号泣するのみで台詞がなかったシーンだったそうだが、

北川景子がアドリブで台詞を発し、そのまま映画本編で使用されている。

これに対し、小栗旬もきちんと対応しているから凄い。

そうそう、12年前の恭子を演じた、大友花恋ちゃんも可愛かった。

 

 

志賀に興味を抱いて近寄ってくる、ガム君を演じた矢本悠馬

どっかで観た顔・・・あ!おんな城主 直虎に出てるやかましい家臣だ!

いやまてよ、あの俳優さんがまさか高校生役なんてやらんだろ・・・?

名前を調べて、やはり同一人物だと発覚。

高校生の配役でダントツ年長者だった。

これが大人になった姿を演じるのが・・・一応ネタバレということで伏せておこう。

というか自分はすぐに判ったんだけどな、

周りの観客は、「え!?アイツだったの!?」みたいな感じで、驚いたり笑ったりしていたが・・・。

 

現在の志賀と一緒に蔵書整理をする図書委員、栗山役の森下大地くん。

この子も特徴的な顔で、登場してすぐに判った。

連ドラのあさが来たで、あさの甥っ子を演じていた子だ。

和歌山でミカン農家を継ぐのが嫌で、あさの居る大阪の銀行で働くんだよな。

まあ、そんな森下くんが、かつての志賀のように、

自分にバリアを張って他人を避ける、孤独を愛する図書委員を演じる。

志賀の話を聞くうちに、彼の心のバリアも薄くなっていく。

その光景を微笑ましく見る、志賀もまたいい。 

 

そして・・・泣くべきシーンなのに、思わずニヤリとしたキャスティングが。

桜良の母親役に、昨年の大河ドラマ真田丸で、

大泉洋演じる信之の病弱な前妻、おこうを演じた長野里美さん!

もうあの、おこうさんのキャラクターが強烈過ぎて、いつまでも強く印象に残っていて、

スクリーンで彼女の顔を観たとたん、思わずにやけてしまった。

実際には、もっとも号泣するシーンのひとつなんだけどね。

 

 

劇中、ふたりが旅行で訪れた先が、なんと福岡!

屋台でラーメン食べて、大宰府で梅ヶ枝餅食べて、太宰府天満宮でおみくじ。

余命わずかで、よく福岡を選んでくれた。

九州なら、長崎や熊本,大分,鹿児島あたりを選ぶと思うんだけどなあ・・・。

福岡って観光地あんまりないっしょ?

高校生感覚だと、福岡になっちゃうのかしら。

 

いやあ、この映画、タイトルに惹かれて思わず観てしまったが、観て大正解だった。

陳腐なタイトルを付けられていて、スルーしてしまっては、もったいない作品だった。

このタイトルを付けた原作者と、それを変えなかった監督らに感謝したい。

近年なんだか飽和状態の、ありがちな青春ラブストーリーものだと思うことなかれ。

もっと大きな、ハートフルなヒューマンドラマと言ったほうがいい。

鑑賞する際は、ハンカチを忘れずに。

あと、文中にも書いたけれど、R指定はないが、

小学校高学年~中学生くらいの年頃の子どもに見せるときは注意が必要。

そういった描写はないので、そこまで気にすることではないけどね。

気まずくはなると思う。

 

原作の小説は現代パートなんてなく、

この映画での過去が現代で、それで話が完結するようだ。

興味はあるが、映画のなかでチョイ役だった人も掘り下げられて描かれて、

色々と主人公に絡んでくるみたいで・・・そう考えると面倒なんで、この映画だけでいいかな。

来年にはアニメ映画化も決定しているとか。

うーん・・・アニメはいいや。

 

映画を観終わって帰宅途中にふと思う。

膵臓って美味いんかな?

劇中でも膵臓を食べるために、焼肉店に行こうとするシーンもあったし、

実際に“シビレ”とか、“タチギモ”とかいう名称で牛の膵臓は流通しているらしい。

肝臓(レバー)や心臓(ハツ),肺(ヤオギモ)は食べたことあれど、膵臓は未だ食べたことはない。

これはこの機会に膵臓を食してみようじゃないか!

 

さっそく、近所で一番大きい精肉店に行ってみた。

見当たらないので、ナタみたいな包丁で豪快に豚足を捌いていたおばちゃんに訊いてみる。

「膵臓?そんなんないですよ!特別なんは事前に言ってもらわんと用意できません!」

そうなんだ・・・韓国人がやってるような焼肉店なら食べられるかな?

仕方ない・・膵臓は諦めて、せっかく精肉店に来たんだから、何か買って帰ろう。

そうして、スーパーじゃあまり単品で売られていない、

センマイとミノを購入し、夕飯に美味しくいただきましたとさ。

号泣したとかなんとかいっておきながら、この焼肉オチ。

映画の感動が伝わらないな・・・。

 

右:コリコリ食感がたまらない、ミノ(ウシの第一胃)

左:グニャグニャ食感とザラザラ舌触りがたまらない、センマイ(ウシの第三胃)

ちなみに第二胃はハチノス,第四胃はギアラ。

福岡人だからか、自分は臓モツ系が好きなのよね。

カルビよりもロースよりも、ホルモン! 

 

 

 

※ 本来、主人公は、【僕】表記にすべきですが、

ストーリー紹介にあたって、【僕】だと文章が作りにくかったため、

劇中、ガム君や教頭先生に呼ばれていた、“志賀”という姓で表記しています。

 



2 コメント

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Unknown (れいな)
2017-08-19 09:36:35
こんにちは~
キミスイ、観に行くかどうしようか思案中なのですが、なるほど涙腺決壊必至系の作品なのですね。
公共の場だと酷い顔にならないように感情にブレーキをかけてしまうのでやっぱり家で独りで観たいかも。
あと、なんとなく想像で膵臓癌で死ぬお話かな?と思ってるんですが、現実に身近でそれを日常的に診ていると「そんなんちゃうわ!」などと色々と突っ込んでしまって知識が邪魔して物語に入り込めないかも?とも思っています。
私も調べました。牛肉のモツ部位。
確かにあるようですね。食べた事は無いですが。
一番スタンダード?な白いミノが好きです。焼肉でも鍋でも。
この前、三重でまつさかうしのそれを食べましたがモツすらもやはり全く臭みもなく美味しかったです。
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略したらどうしても肝吸いを連想してしまう ()
2017-08-19 22:06:33
れいなさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
 
泣ける感動作ならば、皆スクリーンに見入ってますし、
映画館の暗がりのなかじゃ、後ろか真横の人の顔しかはっきりと見えませんから、
そんな泣き顔を気にする必要ないと思いますよ。
あ、涙でメイクが崩れて酷い顔に・・ってのなら話は別ですが・・・。
 
まあ自分は元々、涙もろい方ですし、
30過ぎた辺りから、さらに涙もろくなったと思いますし、
ドライな性格なひとまで泣けるかといったら、そうでもないかもしれません。
 
病気は“膵臓の病気”と言うだけで、具体的な病名は出ませんし、
治療・処置中の描写はないので、
専門家が粗探しをするようなこともないと思います。
桜良が携帯していたポーチから、薬やら医療器具やらが出てくるシーンがあり、
専門家ならば、出てきたもので病気を特定できるかも。
でもまあ、膵臓癌なんでしょうね。
闘病中の描写はないけれど、桜良が書き綴った共病文庫のなかに、
「つらい」「起き上がれない」「食事ができない」
みたいな入院中の苦痛の記述は出てきます。
 
早く観たい!とか、スクリーンで観たい!とか思わないのであれば、
DVDが出るまで待ってもいいと思います。
来年の春くらいかな?
 
モツは新鮮さが命。
肉に関しては熟成肉がちやほやされる昨今ですが、
モツに関しては、ちょっとでも新鮮さが落ちると一気に臭みが出てしまいます。
あとは下処理も大事ですね。
特に胃腸系は、ぬめり取りや丁寧な洗浄をやってないと、やはり臭みが強くなります。
とはいえ、ある程度の臭みやクセ、
なんというか、食物としての下品さがモツには必要で、
過剰に洗浄しまくって、それを殺してしまうのはいかがなものかと、自分は思うわけです。
 
これはとんこつラーメンにも言えるんですよ。
とんこつ臭消して、なんがとんこつラーメンっちか!ってね。
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