ハチ逢わせ

　お客さん同士のはち合わせで、お互いにばつの悪い思いをし、困ることはよくあるが、今回は、1991.8.16に、コガタスズメバチにはち合わせし、１ヶ月も入院していた人の話。
　電気店経営のT氏が、伊東便の貨物が予定通りに乗って無くから戻りなので時間が少し空いたので、たまにはって、寄ってくれた、ｈｐとブログのアドレスを教え、内容についてコメントを求めたら、「本人が見ることは無いと思われるが、イニシャルで特定できる、無難にABCの方が良いんじゃないか？」なんて、狭い閉鎖的社会なのでどうかなあと思っていたので、第三者的でなく、貴重な意見を聞けた。
　とりとめのない話や、機長体験の自慢話や、話し好きな客に捕まり、話が長すぎて帰るに帰れなくなった話なんかして、その部類に入ってきたなと感じていると、来客の様子、このときとばかりと、「　じゃあまた！！　」　と帰っていった。
　十五年前にコガタスズメバチにはち合わせしてヘリコプターで東京まで緊急搬送されたN氏だった。
　工務店を経営し近所に別荘を持っている社長の表敬訪問、今晩あたり呑みに行き、（　♪湖畔の宿　）でも歌うのかななどと気を回し、「今回はいつまで居るのですか？」　と、取りあえず予定を伺う。
　「別荘の外壁の修理をするので、チェックに来て夕方のJFで帰る。」とのこと、時間は約１時間ほどありそうだった、世間話と件の機長体験の自慢話をし、「別荘のテラス窓の下側にアシナガバチの大きな巣があり、夜間の親蜂が巣に戻ったところを一網打尽に駆除したら良いのだろうか」とのよろず相談だった。
　N氏はハチに弱く、草取りをしていて、蜂に刺され、意識朦朧となっているところを病院に乗せていったことが１回、そしてその後、91年、我が家の庭の藪になっていた、資材置き場と言えばかっこいいが、残材置き場に廃棄寸前の道具を取りに行ってくれてヤラレタ！、「良いですよ、マムシがいるかも知れないし、長靴はいて、後で俺が取ってくるから　」　　「　良いよ、ついでだから　」　って行ったのが運の尽き、気になってと言うか、申し訳ないので後から暢気にのこのこついて行くと、頭を押さえ悲鳴！　コガタスズメバチが頭から腕に２～３０匹たかって、当人は頭と目を押さえて動けなくなっていた。
　とっさにゴキブリ用の大型スプレーがあるのを思い出し取りに行くこと、１分くらいかな？　ゴキブリ対策でなれているのかこういうときは早い。　N氏との思い出話では、早かったそうだけれど、お世辞かも知れない、スプレーはハチには有効で、かけると上空めざし飛び、５秒ほどで地面に落ちてくる。
　本人にもかけ、巣らしきあたりにもかけ、安全なところまで避難させ、まだ刺したままのハチにもかけ、手で取り、救急車を呼ぶよりは意識のあるうちに病院へ運ぶ、約５分、病院に着く頃は意識がなくなっていた。
　結局、１３ヶ所刺され、血圧０、意識なし、休みで来ていた看護士の奥さんの付き添いのヘリコプターで東京の総合病院まで搬送、以後１ヶ月ほど入院、とんだ災難すみません。
　子供二人を港に送り、ご令息曰く、「やっと草取りが終わり、午後から海に行って泳ぐはずだったんだけど」返す言葉がなかったなあ。
　あの時N氏が行ってくれなければ、後で俺が一人で行って刺され、叫べど誰も来ないで、その場で失神って可能性が高かったか、俺のことじゃ、暢気だから、ハチが居なくなる秋くらいまで放っておいたかも知れない、運が良かったのか悪かったのか。
　そんな借りが有るのと、ハチに強い体質らしいのと、危機を感じない性格の私としては、別荘に迎えに行き港に送るとき、蜂の巣に、とっておきの、大型のゴキブリ用のスプレーをかけて取りあえず退治することにした。
　ハチに弱い体質のN氏に車の中で待機するように打ち合わせ、敵に向かう、周囲を見回し、逃げ道を確保、敵は取りあえず２０匹程度、N氏は逃げ腰ながら恐い物見たさから離れて見ている。
　巣の大きさは直径１８センチくらい、地上高５０センチくらい、今年は台風が来るのかなあ？って　暢気なことを考えながら、風上からスプレーを噴射しながら巣に近づく、巣からポトポトと落ちる奴、上空に向けて飛び５秒後に地面に落ちる奴。
　N氏を港に送り、かくして 8.18日の午後は終わった、借りは少しは返せたかな．．．．．