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不信のとき 陳水扁前総統 身柄拘束事件

2008-11-12 11:26:34 | Weblog
わたしの勤務先は「博愛特区」にあります。「博愛特区」とは、総統府、外交部(外務省)、司法院、国防部(防衛省)、最高法院、検察署、高等法院、検察署、台北地方法院、検察署など中央機関の所在地です。日本に言えば、霞ヶ関みたいなところでしょうね。

昨日午後から、「博愛特区」の周辺にあちおちが保安警察が立て、拒馬(通行を止める釘付きの柵)が並んでいるという厳重な警備体勢です。先週のろう城事件と負けないぐらいの規模です。新聞をみると、陳水扁前総統は今日台北地方法院に出廷して、検察側の拘束要求により、拘束される可能性が高いから、抗議の場面を防ぐために、厳重な警備体勢を整えました。 やはり11日午後4時、陳の予想通り、検察側は拘束の要求を地方法院の合議廷に提出しました。さっそく地方法院の裁判官らは徹夜で拘束の必要性について審議して、今日(12日)午前五時頃、ようやく検察側の要求を認めました。しかし陳が拘束されたにもかかわらず、民衆の不満を防ぐために、厳重な警備体勢が続いています。そのため、「博愛特区」周りの登校者(市立台北教育大学、台北第一女子高校、中学校、小学校などの学生)、出勤者に迷惑をかけました。出勤時間は平常より遅くなってきました。

最近、民進党の政治人物の身柄を拘束するニュースばかりです。陳水扁の汚職疑惑事件を調査するために、検察側は特別捜査班を成立しました。日本の特別捜査班と比べると、日本のは、現役の与党の政治人物を調査することですが、台湾のは違い、野党の人ばかりを調査します。そのため、政府の走狗と言われる酷評もあったそうです。

特別捜査班が発足した以来、陳水扁の側近の人は陳が拘束されたまでもう八人が先に拘束されたそうです。そして、なんの急迫性、逃亡の可能性もないのに、雲林県の女性県知事蘇治芬(民進党籍)を突然に拘束しました。蘇県知事は自分の清廉潔白を証明するために、保釈の許可を拒否して、108時間わたって、絶食して抗議しました。
[m:228]蘇はそれまでの国民党による大規模工業開発推進派と違い、地元の台西郷の漁業被害問題にも取り組む環境保護派である。
アジア環境研究所寺尾忠能(2006年)調査報告書
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Report/pdf/2005_04_27_05.pdf

陳の拘束事件について、中国の要人賈慶林(全国政協主席)は「いつもちゃんと見てますよ。誰か陳に弁当をもたらすさえも。」と満面笑みで質問に答えました。中国のマスコミもう一斉大幅に報道しました。台湾よりお祝い気分が見えますね。一方、一部の中国のネット使用者からも「台湾は前総統を司法の手続きで逮捕することができるのに、中国はいつも党の命令で要人を逮捕します。しかもレベルはそんなに高くないです。いつか中国も台湾のようになれるでしょうか」という声を漏らしました。

検察側はいつも自分の公正性を強調します。しかし、言葉より大切なのは行動です。いままでの経験からみると、逮捕、拘束されたのは、民進党の人ばかりです。同じ法律(汚職特別治罪条例という刑法の特別法です)で起訴され、そして有罪判決を受けた人は、主に地方の町村レベルの公務員ないし警察官です。政治人物なら珍しいです。前有罪判決を受けた政治人物はほとんど国民党籍の人ですけど、実際に刑務所に入る事例もまた少ないです。国民党のみんなは法律によって戦うことではなく、実刑判決を言い渡す前、海外に逃亡するのは慣例です。今年逃亡先の中国で病死した伍沢元もその一つの例です。

[m:230]10大国外逃亡犯として指名手配されていた元立法委員の伍沢元が逃亡先の中国で22日に死亡したことが分かった。死因は糖尿病による合併症。63歳だった。伍沢元は1993年、当時行政院長だった連戦氏の要請により、屏東県長に立候補、蘇貞昌氏の再任を阻んだ。しかし、省局長時代の収賄に問われ、 1998年に逮捕された。控訴審のときに病気治療を名目に保釈され、同時に立法委員選挙に立候補して当選した。しかし、二審で15年の懲役が確定した後、 2001年に外国視察で出国し、中国に逃亡し現在に至っている。伍沢元は1998年に当時の連戦・副総統から3628万元を借りていたことが明るみに出て問題になったこともある。

政治人物も一般人と同じ、法律で裁くことになったのは台湾に対して、悪いことではないけど、司法機関(検察側も含み)はどういう風に法を歪んで、国民党を贔屓するというイメージを払拭するのも重要なことでしょう。人民の不信感を存在する限り、司法への信頼感は蜃気楼みたいなことになるでしょう。
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台湾の陳水扁前総統 身柄拘束
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=664107&media_id=2
【台北・庄司哲也】台湾の陳水扁前総統(57)は11日、総統在任中のマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑などを捜査している最高検に拘束された。身柄は台北地方裁判所へ送られ、拘置手続きに入った。総統経験者の身柄拘束は初めて。前総統は拘束前、捜査は政治的なものだと主張していた。

 ただ、前総統は「拘束の際に警察官に殴られた」と訴えたため、病院で診察を受けるという。このため、拘置手続きが長引く可能性もある。

 前総統は8月に野党・民進党を離党しているが、3月の総統選で敗北、下野した同党にとっても大きな打撃となりそうだ。

 陳前総統は00年の総統選で当選。台湾初の政権交代を実現させたことで台湾民主化の象徴的存在とされ、04年に再選された。

 陳前総統は今年8月、94年台北市長選や00年総統選など過去4回の選挙費用を不正に申告し、余った巨額の資金を海外の口座に入金していることが発覚。検察当局はマネーロンダリングの疑いもあるとみて、これまでも前総統から4回にわたり事情を聴いていた。

 陳前総統はこのほかにも、総統在任中の金銭を巡る複数の疑惑が浮上しており、側近や親族、友人ら計9人が相次いで身柄を拘束されていた。

 最高検に出頭する前に記者会見した陳前総統は、潔白を主張するとともに「私は(与党)国民党と中国共産党の最大の戦犯である。両党が目指す中台統一の最大の障害だからだ」と述べ、政治的な捜査であることを強調。最高検から地裁へ移送される際には、報道陣を前に自ら手錠をかけられた両手を掲げ、抗議の意思を示した。

 [m:176]▽陳 水扁(ちん・すいへん)前総統 1951年2月18日、南部・台南県の貧農一家の長男に生まれる。台湾大3年の時、最年少(当時)で弁護士試験に合格。国民党独裁下の79年、警察が民主化デモを弾圧した「美麗島事件」の弁護団に参加、政界に転じる。86年、主宰雑誌の名誉棄損事件で8カ月間入獄。台北市議、立法委員(国会議員)を経て94~98年に台北市長。改革派として知られた。00年3月に民進党候補として総統に選出され、04年3月に再選。今年3月の総統選では、民進党候補(謝長廷)が国民党の馬英九氏に敗れた。


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