場所 : 神奈川県川崎市川崎区港町 多摩川河川敷
日付: 2015年(平成27年)2月20日 午前2時頃
攻撃手段: 首を刃物で傷つけ出血性ショックで死亡させる
攻撃側人数 :3人
武器 :刃物
死亡者 :中学1年生の男性
犯人 :少年である男(主犯格)A・男B・男C
容疑 :Aは殺人罪、Bととは傷害致死罪
動機: 嫉妬による逆上
対処 : 加害少年3人を逮捕・起訴、3人に懲役刑(最高で懲役13年)の有罪判決
日付: 2015年(平成27年)2月20日 午前2時頃
攻撃手段: 首を刃物で傷つけ出血性ショックで死亡させる
攻撃側人数 :3人
武器 :刃物
死亡者 :中学1年生の男性
犯人 :少年である男(主犯格)A・男B・男C
容疑 :Aは殺人罪、Bととは傷害致死罪
動機: 嫉妬による逆上
対処 : 加害少年3人を逮捕・起訴、3人に懲役刑(最高で懲役13年)の有罪判決
「友達ではなくヒマつぶしの相手」中1男子をカッターで何度も切りつけ…犯人の少年たちが殺害後にとった“驚きの行動”とは
事件の加害者は、川崎区に暮らす17~18歳の少年A、B、Cの3人の男子だった。AとBはフィリピン人の母親と日本人のハーフで、Cは発達障害の傾向があった。 彼らは幼少期から育児放棄や親からの暴力を受け、小学校に上がった後はハーフであることなどを理由に同級生から差別やいじめを受けた。 やがて彼らは家や学校がいやになって不登校になり、近所のショッピングセンターにあるゲームセンターに通いはじめた。そこには他の不登校児もたくさん集まっていて、ゲームに熱中することでいやな現実を忘れ去ろうとしていた。 3人は中学を卒業した後、定時制高校や通信制高校へ進んだが、そこでもうまくやっていけずに中退したり、不登校になったりした。時間をもてあましたことで、彼らは飲酒、万引き、バイクの窃盗といった不良の真似事をしはじめる。 そんな彼らのグループに入ってきたのが、島根県の西ノ島からやってきた上村遼太だった。母親はシングルマザーで、一時期は生活保護を受けながら、5人の子供を育てていた。しかし、中学生になった頃から、家に母親の恋人が同居するようになった。遼太は多感な年齢だったこともあって家に居場所を見つけられず、ゲームセンターに出入りするようになり、年上のA、B、Cのグループと知り合った。 遼太はグループのメンバーとつるみ、万引きや泥棒に手を染め出した。家に居場所が見つけられない子供たち同士で「疑似家族」をつくり上げて孤独をまぎらわせていたのかもしれない。手に入れたお金はゲームセンターやカラオケでの遊びに使った。
とはいえ、彼らはしっかりとした友情でつながっているわけじゃなかった。毎日のように会っていながら、お互いを友達ではなく、「ヒマつぶしの相手」としか考えていなかった。オンラインゲームの対戦相手くらいの結びつきだった。 そんなもろい仲だったため、グループの人間関係はささいなことでいっぺんに崩壊することになる。
ある日、Aは酔っぱらった勢いで遼太に暴力をふるい、顔にあざをつくってしまう。後日、不良グループの先輩がそのことを知り、Aに対して「遼太を殴っただろ」と因縁をつけてきた。不良グループにしてみれば、弱いAたちはいいカモだった。 Aは不良グループにお金をとられたり、家に押しかけられたりしたことで、きっと遼太がチクったに違いない、と逆恨みをはじめる。勘違いであることに気がつかず、一方的に復讐しようと考えた。 2月の寒い夜、AはBやCとお酒を飲んだ後、酔った勢いで暴行するために遼太を呼び出す。そして人目につかない真っ暗な多摩川の河川敷へ連れていった。 河川敷に到着した時、Aはリンチをしようくらいにしか考えていなかったが、思いがけないことが起こる。Cがこれでやれよと言わんばかりにカッターを差し出してきたのだ。Aは見下されたくないと思ったのか、つまらないメンツのために何度かカッターで切りつけた。 遼太の体から血が流れて服が赤く染まった。Aはそれを見て、だんだんと殺すしかないと考えはじめた。中途半端にケガを負わせて帰らせたら、また不良グループから暴力をふるわれるし、少年院に入らなければならなくなる。それを避けるには、いっそのこと遼太を殺してしまうしかない。 Aは何度もカッターで切りつけたものの、弱い性格ゆえにひと思いに殺すことができない。BやCにもカッターを押しつけてやらせても、みんな同じように勇気がなく、傷つけることはできても、命を奪うまでにはいたらない。 結局、A、B、Cは合計43回も遼太の体をカッターで切って重傷を負わせた末に、河川敷から立ち去った。置き去りにされた遼太は、立つこともできず、そのまま出血多量によって死亡した。
信じがたいのは、A、B、Cのその後の行動だ。彼らは遼太を殺害した後、Cのマンションの部屋にもどり、朝までゲームに夢中になった。3人にとって、遼太の命はゲームで忘れることができるくらい軽いものでしかなかったのかもしれない。 この事件を一冊の本にまとめるため、僕はAのグループのメンバーにたくさん話を聞いたけど、その中で強く感じたのが彼らの人間関係の薄っぺらさだった。 グループに加わっていた子供たちの大半が、親が離婚をしていたり、貧困家庭にあったり、虐待を受けたりしていた。家庭は安心できる救いの場じゃなかった。そんな子供たちが、孤独をまぎらわすためにゲームセンターに集まり、グループを形成する。 印象的だったのがグループの一人がはっきりこう言っていたことだ。
「俺は誰とも友達だなんて思ってないよ。ヒマつぶしの相手だね。ゲームやっているだけなら、お互いに話をしなくていいじゃん。だから一緒にいてゲームやってただけ」 寂しいから一人でいたくないけど、かといって信頼関係で結びついた友達関係を築きたいわけでもない。だから、お互いのことをどうでもいいと思っている。 そんな薄っぺらな関係だからこそ、いき違いがあった時、Aは話し合いで問題解決をしようとせず、酔っぱらった勢いで遼太に暴力をふるおうとした。その上、くだらないメンツを守るために、はるかに年の離れた弱い立場の遼太を寄ってたかってカッターで43回も切って殺し、その後も平然とゲームをつづけられたんじゃないだろうか。 僕はこの事件には、現代の社会問題がたくさん含まれていると感じる。貧困、虐待、シングルマザー、不登校、自己否定感……。
(2022.11.8. 文春オンライン)
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