人形に魅入られた者たちを待っていたのは、金を持ち逃げされるという結末だった――。艶めかしい「生き人形」作りを得意とし、テレビ番組や人気アーティストのコンサートにも起用された気鋭の女人形作家が、1億円以上の金を集めて失踪。一部の被害者たちからは詐欺の疑いで刑事告訴されていたのである。
1980年代から活動し、まるで生きた人間のような物憂げな表情の球体関節人形を作る人形作家・堀佳子(54)は、その世界では知られた存在だ。
先日、全国ツアーを盛況で終えた歌手の中島美嘉は、彼女の人形に魅了され、かつてステージセットに彼女の作品を使用したほか、バラエティ番組などで多数、取り上げられた実績もある。
そんな堀だが、実は2年前、男女3人から合計8700万円を騙し取ったと、岡山地検に刑事告訴されていたのだ。
訴えを起こした60代の男性は、
「彼女とは仕事を通して偶然出会ったのですが、話をするうち“交通事故で3000万円の借金を作ってしまった。人形を作れば返せるが、製作費がない。年1割の利息でお金を貸してほしい”と頼んできたのです」
男性は彼女の経歴を信用し、20回に亘って7000万円以上を融通する。
「投資信託を解約したり、株を売ったりしました。500万、1000万と貸すうち、これ以上は出せないと伝えると、“彼女になってあげる。望めば結婚してもいい”と言って色仕掛けをしてきたのです。1人暮らしで寂しかったこともあり、それでまた金を貸してしまって……。途中、肉体関係も一度もってしまいましたが、“これ以上、金は貸せない”と伝えると、一瞬、鬼のような形相になったのを今でも覚えています」(同)
その表情にひとかたならぬ恐怖を感じ、交際を止めた後、堀とは連絡が取れなくなったという。
「告訴した3人の他にも、まだまだ、多くの被害者がいます」(堀の知人)
それというのも、この刑事告訴から遡ること4年、彼女は破産宣告を受けていた。判明しているだけで債務は、計63人に約2400万円。先の8700万円と足して、ざっと1億円以上を手に入れ、姿を消してしまったというわけだ。
堀の地元、岡山県の特養ホームに入院する母親は、
「娘は乳がんを患って、ずっと、抗がん剤治療を続け、今だって再発の心配があるんです。本人は、少しでも空いた時間に人形製作をして、お金を返そうとしていると言っています」
と娘を庇うのだが、原告たちの代理人を務める的場悠紀弁護士はこう憤る。
「最初の告訴から2年以上経つのに、未だに逮捕されないのは、理解ができない。返済の能力と意思がないのは、明白ですから、検察の怠慢というほかありません」
猛暑の盛り、花ばかりか、人も変調きたしがち。こうしている間にも被害が拡大しかねないのである。
「週刊新潮」2017年8月10日号 掲載
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