
ノルウェーの南部ウトヤ島で22日、制服を着て警察官を装った男が、与党労働党青年部集会の参加者に銃を乱射した。警察は少なくとも85人が死亡したと発表。現場でノルウェー人の32歳の男を逮捕した。男は若者らを並ばせ次々、発砲。水中に逃げた人にも銃弾を浴びせた。これに先立つ1~2時間前には、首都オスロ中心部の官庁街で大規模な爆弾テロがあり、7人が死亡していた。警察では両事件とも、逮捕した男の犯行とみて、共犯者の有無を含め、捜査を進めている。
平和だった北欧の国の全長500メートルほどの小島が“死の島”と化した。事件のあったウトヤ島は、オスロの北西30キロの湖に浮かぶリゾート地。労働党青年部が、度々サマーキャンプを開いており、今回も約700人の若者が政治討論やイベントを楽しんでいた。犠牲者の多くは10代の少年少女だった。
目撃者によると、犯人は警察官の格好をし、「オスロの爆破事件について説明する」と人々を周囲に集めた上でいきなり発砲を始めた。確実な殺害を狙い、1人に2発ずつ。パニックになった参加者は岩陰に隠れたり、逃げたりした。水の中に逃げた者にも銃弾の雨を降らせた。水温は極めて低く、溺れた人も出た。
しばらくすると「警察です。もう大丈夫です」と大声で周囲に話し掛け、隠れた人々をおびき出して再び殺害を謀った。ロッジに隠れて生き延びた女子高生(16)は「助けを呼びたいけど、犯人に気付かれるので、できなかった。気がおかしくなりそうだった」と泣きながら振り返った。
目撃した住民女性は「50人ほどが水に飛び込んだ。泣き叫んで、震えていた」と振り返る。救出された若者はホテルに集まり、生存者が確認される度、歓声が。一方、友人を失い、悲しみにくれる姿もみられた。
警察特殊部隊が到着するまで約30分間、乱射は続いた。警察によると、逮捕されたのは極右とつながりのある白人ノルウェー人で、アンネシュ・ブレイビク容疑者(32)。実行犯が複数いたとの目撃証言もあり、捜査を進めている。
乱射事件の1~2時間前の22日午後3時半には島から約30キロ離れたオスロ中心部で爆弾テロが起き、政府関連施設に被害が出た。犠牲者は7人。自動車爆弾が使われ、首相官邸が入るビルも被害を受けた。
同容疑者は乱射事件の前にオスロで目撃されていた。警察は、同容疑者が2つの現場を1~2時間で移動し、両事件を起こしたとみている。英BBC放送によると、島に渡る際、警官姿でフェリーに乗り「爆弾テロ関連の調査に行く」と周囲に話し、捜査活動を偽装していたという。
警察はウトヤ島での捜索の結果、起爆前の爆発物も発見した。集会には21日にストーレ外相も参加、23日にはストルテンベルグ首相が参加予定だった。同国では死刑制度は廃止されている。

アンネシュ・ベーリン・ブレイヴィーク (Anders Behring Breivik, [ˈɑnːəʃ ˈbeːɾɪŋ ˈbɾæɪʋiːk], 1979年2月13日- )
ノルウェー連続テロ事件(2011年7月22日)
ノルウェーの連続テロで逮捕されたアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)が爆弾と銃乱射両事件の犯行を認め、「残忍な行動だと分かっているが、自分の論理では必要だったと思っている」と話していることが分かった。容疑者側の弁護士が二十四日、同国の公共テレビNRKに明らかにした。
二十五日に地方裁判所で身柄拘束を続けるかを判断する審理が予定され、ブレイビク容疑者は自分の考えを説明する意向だという。
弁護士によると、容疑者は「ノルウェー社会を変えるために攻撃した」とも述べ、自らの主張を詳述した声明も用意していた。
司法当局によると、テロ行為の容疑のみで有罪が確定した場合、最長で禁錮二十一年が科される可能性がある。
警察当局は二十四日、容疑者が取り調べに対し「単独で実行した」と供述していることを明らかにした。また、ウトヤ島の銃乱射事件の現場に狙撃特別隊が着くまでに約一時間半かかり、被害が拡大したと認めた。緊急出動できるヘリコプターがなく、島に向かうボートもすぐに用意できなかったという。
ロイター通信によると、NRKは同日、銃撃による負傷者一人が病院で死亡し、死者数が九十三人に増えたと伝えた。島では、まだ四~五人が行方不明のため捜索が続く。首都オスロの爆弾テロ現場にも崩壊がひどく捜索を終えていない場所があり、犠牲者数は最終的に百人近くに上る可能性がある。
(CNN) ノルウェーのウトヤ島で22日に起きた銃乱射事件で、負傷しながらも助かった若者が23日、CNNとのインタビューで「犯人の前で死んだふりをした」と、当時の状況を語った。
この若者は犯人から数メートルの場所にいた。「男はこちらに銃を向けたが、引き金は引かなかった」と語った。しかし肩を撃たれて負傷し、現場から逃れるため周囲の人々と海に飛び込んだという。
警察によると、乱射事件の死者は少なくとも80人に上った。直前に首都オスロ中心部で起きた爆弾テロでは7人が死亡している。

ノルウェーからの報道によると、警察当局に逮捕されたのはアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)。インターネットへの投稿や地元メディアの報道から浮かび上がる人物像は、移民に寛容な北欧型の「開かれた社会」に反発を増幅させていった姿だ。自らを「愛国主義者」などと評し、その言動には自己陶酔の世界さえ垣間見える。
「信念ある1人の人間は(自らの)利益しか考えない10万人分もの力に値する」。ブレイビク容疑者が簡易型ブログ「ツイッター」に18日残した犯行予告とも読めるつぶやきは、19世紀の英国人哲学者ジョン・スチュワート・ミルの名言をまねたものだった。
地元紙ベルデンスガングが伝えた友人の証言によれば、ブレイビク容疑者は20代後半から極右思想に染まっていった。政治問題に強い関心を示し、イスラム批判のインターネットサイトに熱心に投稿しては「現在の政策は社会主義と資本主義の争いではなく、愛国主義と国際主義の戦いだ」などと主張していた。投稿の一つでは、日本と韓国について「多文化主義を拒否している国」と言及。日本などを反移民、非多文化社会の模範のようにたたえていた。
オスロの首相府近くでの爆弾テロと、与党・労働党の青少年キャンプでの銃乱射の共通点は、ストルテンベルグ首相が率いる中道左派の労働党だ。ブレイビク容疑者の思考形態から見て、「左派=移民に寛容」の一点から将来の労働党指導者候補の若者らを憎悪し、標的とした可能性は排除できない。
ブレイビク容疑者に事件以前、目立った右翼活動の記録はないという。拳銃やライフル、ショットガンは合法的に所持していた。菜園を営んでいたとの情報があり、09年に肥料会社を設立したという経歴から、爆薬に使える化学肥料の知識があったとの指摘も出ている。
ノルウェーでは80~90年代にネオナチが社会問題化したが、近年は沈静化している。極右勢力は細分化しているとされるが、「反イスラム、移民排斥」では結束する。ブレイビク容疑者も投稿の中で「穏健なイスラム」という表現に反論し、「(彼らも)排除された瞬間に過激化する」と憎悪をあらわにしていた。捜査当局者は容疑者を「キリスト教原理主義者」と呼んでいる。
ストルテンベルグ首相は23日の会見で「他国に比べ、ノルウェーの極右過激派の問題は大きくはない」と述べ、連続テロが、「開かれた社会」を自任してきたノルウェーの意表をついた事件だったことを言外ににじませた。

2011.7.25
ノルウェーの連続テロで逮捕されたアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)が拘束された際、所持していた銃に大量の弾丸が残っていたことが24日、警察の調べで分かった。一方で同容疑者が抵抗しなかったことから、銃撃戦を回避し、生き延びて自分の信条を法廷で訴える狙いがあったとの見方が出ている。
身柄拘束を続ける必要があるかどうかを審理する法廷が25日に開かれる予定で、弁護士によると、同容疑者は自分の意見を話したいとの意向を表明。審理の公開も求めているといい、強い自己顕示欲を持っているとみられる。
一方、AP通信によると、同容疑者は銃乱射事件で、命中後に破裂する殺傷能力の高い弾丸を使用。所持していた弾丸の多さからも大量殺人の強い意図を持っていたことが明確になった。乱射事件で同容疑者は拳銃と自動小銃の計2丁を使用した。(共同)
アンネシュ・ブレイビック容疑者は、22日の犯行直前にインターネットに投稿した「マニフェスト」の中で、「文化面での保守主義を持つ」理想の国として、日本や韓国を挙げていた
イスラム系移民が少ないため、だという。また、「いま、最も会ってみたい人々」としてローマ法王とロシアのプーチン首相を挙げた。「次に会ってみたい人々」としては日本の麻生太郎・元首相など4人を挙げた。
(2011年7月25日19時11分 読売新聞)
ノルウェーの連続テロ事件、被告の責任能力認め禁錮刑判決
オスロ(CNN) 北欧ノルウェーの首都オスロと郊外の島で昨年7月下旬に発生した連続テロ事件で、
オスロの地方裁判所は24日、テロ罪などに問われたアンネシュ・ブレイビク3 件被告(33)に対し禁錮21年の判決を言い渡した。
被告と検察双方は控訴しない考えで、判決は確定することになった。
裁判では犯行時の被告の精神状態の判断が最大の焦点となっていたが、被告に責任能力があったと認定した。裁判に伴う被告の精神鑑定では異なる判断も出ていた。
国粋主義者と称するブレイビク被告は裁判で、ノルウェーを多文化主義やイスラム系移民から守るための犯行だったと強調。
精神を病む者による犯行との判断が下されるのを阻止するため、精神状態に問題はないとも主張していた。
検察側は裁判で、被告の精神状態には問題があり、犯罪の責任は問えないと指摘。被告は精神治療施設に収容される可能性も出ていた。
ブレイビク被告はスーツ、ネクタイ姿で判決公判に出廷。
判決が下されると笑みの表情が少し浮かんだ。死刑制度を持たないノルウェーでは禁錮21年は最高刑に相当する。
同被告は最低でも10年は服役しなければならない。
爆弾攻撃や銃乱射の連続テロ事件はオスロや郊外のウトヤ島で昨年7月22日に起きたもので77人が死亡する同国では最悪級の惨事となっていた。
ウトヤ島では与党が主催する集会参加者らが標的ともなっていた。
(2012年08月25日 CNN)
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