みなさんこんにちは。ゴールデンウィーク中の自粛は順調ですか?意外とオンライン飲みが連日続き、飲酒量が増えた人も多いかもしれません。
私はというと、Amazon Primeでアラン・ロブ=グリエ監督の特集をやっておりましたので、解禁されている作品を全部観てみました。
フランス人の映画監督ですが、映画よりも先に小説家としてデビューしています。既に表現者として成熟していたせいか、長編デビュー作である『不滅の女』の面白いことと言ったら!
因みに、Amazon Primeで観られる作品は年代順に以下の通りです。
『不滅の女』("L'immortelle" 1963年)
『ヨーロッパ横断特急』("Trans-Europ-Express" 1966年)
『嘘をつく男』("L'homme qui ment" 1968年)
『エデン、その後』("L'Eden et après" 1971年)
『快楽の漸進的横滑り』("Glissements progressifs du plaisir" 1974年)
『囚われの美女』("La Belle Captive" 1983年)
個人的には、『不滅の女』『嘘をつく男』『ヨーロッパ横断特急』『囚われの美女』『エデン、その後』『快楽の漸進的横滑り』の順で好きです。
年代で区切ると前半が好き、後半がイマイチと綺麗に分けられます。あくまで主観ですが、年代前半の作品は割とストーリーとして成り立っているものの、時を経るにつれ作品が抽象化していく印象を覚えました。
傾向としては、メタフィクションの金字塔として聳えることとなった『ヨーロッパ横断急行』後、『嘘をつく男』では劇中劇が、『エデン、その後』では演劇の再演というテイストが採用されており、構造による批評精神が露わになっているように感じます。
また、『快楽の漸進的横滑り』はタイトルこそ名作感漂うものの、その実かなりシュールレアリスティックで非常に難解。イメージと言葉の組み合わせを連鎖させる高度なモンタージュに取り組んでいるようでした。
何れにせよ多くの作風に通じるのは、女性への拘りです。多くの作品(私の見た限り『ヨーロッパ横断特急』以外)では女性にフォーカスを当てていますし、女体と鮮血のセットも頻繁に出てきます。これはフェミニズムの露出か、そうでなければ監督のフェティシズムと言うしかないでしょう。
あとは女性像への(とりわけ異国の女性像への)執拗な目の縁取り。歌舞伎に倣ったエイゼンシュタインの『戦艦ポチョムキン』を彷彿とさせます。また、BGMも武満徹や芥川也寸志のような昭和の和テイストを感じる仕様。意外と日本文化お好きなのかしら。
因みに、参考までに映画評論家の蓮實重彦先生のコメントを記載しておきます。
誰かが「私は嘘をつく」といったら、彼または彼女のいうことはすでに真偽を超えている。ロブ=グリエの映画の面白さあ、あくまでそのとらえどころのなさにある。しかも、その画面が意味とは思えぬほど鮮明なところに、つきぬ魅惑が脈うっている。(蓮實重彦)
アラン・ロブ=グリエが拘っていたメタフィクションへの視座の背景にある思想を的確に表現されているように感じます。
とまあ、シネフィルを呆れさせてしまいそうな概論は以上です。各作品2時間もないので、ぜひ気軽に観てみてください。今後少しずつ個別の感想録を上げていくので、良ろしければ時間潰しの参考にしていただけると嬉しいです。
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