ぬりえ

職員オリジナルの絵です。

2004秋【ぶんぶくちゃがま】

2005-09-07 13:54:26 | インポート
bunbuku1①むかし、茂林寺というお寺にたいそう茶の湯好きの和尚さんがいました。和尚さんは変わったお茶道具を集めて毎日それをいじっては楽しみにしていました。ある日和尚さんは一軒の小道具屋で気に入った形の茶釜をみつけて買うことにしました。





bunbuku2②ある晩のこと。和尚さんの部屋があんまり静かなので、小僧さんたちは心配になり、そっと覗きました。 すると、眠り込んだ和尚さんの横で、茶釜がむくむくと動き出し、なんと頭と尻尾がはえ、四本の足まで 出てきて部屋を歩き出したのです。





bunbuku3③びっくりした小僧さんたち、口々に「茶釜が歩いた、茶釜が歩いた」と大騒ぎ。 目を覚ました和尚さんは、「ばかなことを言うにもほどがある」といって小僧さんたちのいうことを信じません。逆に小僧さんたちをしかりつけました。





bunbuku4④あくる日のこと。和尚さん、「今日はひとつ、この茶釜で茶の湯をたててみよう」と水を入れて囲炉裏にかけました。 「あつい!」 だしぬけに茶釜は動き出し、いろりから外へ飛び出しました。そしてなんと茶釜から狸の頭と足と尻尾がはえて座敷の中を歩き出したのです。





bunbuku5⑤「たいへん、たいへん。茶釜が化けた。誰か来てくれ」。 和尚さんの声に小僧さんたちは向こう鉢巻にほうきやはたきを持ってかけつけたのですが、座敷の中は何事もなかったように静かです。茶釜ももとの茶釜のまま。びっくりした和尚さんは、この気味の悪い茶釜を手放そうと思い、くず屋に売ってしまいました。





bunbuku6⑥「この茶釜、近頃にないほりだしものだ。道具好きの大金持ちにでも売りつけよう」。 くず屋はたいそう喜んで、その夜茶釜を枕元に飾り、ぐっすり寝ました。 「もしもし、もしもし、くず屋さん。くず屋さん。」 はっとして目を覚ましたくず屋の目の前に頭と尻尾を出した茶釜がちょこんと座っています。





bunbuku7⑦「茶釜が化けた!いったいお前はなんだい。」おどろいたくず屋の問いに茶釜は「おいら文福茶釜だ。狸が化けた茶釜だよ。茶釜に化けてからというもの、窮屈で腹は減るは、尻に火をつけられるは、散々な目にあってしまった。だからしばらくおいらをここにおいてくれよ。そしたら明日から見世物をしてくず屋さんを大金持ちにしてあげるよ。」





bunbuku8⑧喜んだくず屋はさっそく見世物小屋を立て人を呼び寄せました。 「さあ、さあ、大評判の文福茶釜に手足がはえて、綱渡りの軽業や浮かれ踊りの芸当じゃ。評判じゃ。」 見世物小屋はたちまち満員になり、評判が評判を呼んでくず屋の商売は大繁盛。





bunbuku9⑨大金持ちになったくず屋はそろそろ茶釜を自由にしてやろうと狸の茶釜に言いました。 狸も「おいらも少し疲れたからやすませてもらうよ。」 こうして茶釜は茂林寺に儲けた金の半分とともに納められ、その後頭や足や尻尾がはえてくることもなくこのお寺の宝物として今日まで伝わっているそうです。


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