歯を磨いてる間

コラム?と小説?

瀬戸際小説①

2020-03-07 01:14:00 | 日記

ヒロコは居るのか居ないのか分からない存在感で、バーカウンターに座って白ワインを飲んでいた。

俺が隣に座るなり

「いやぁ、ただ生きるのも簡単じゃないね」

とつぶやく。

「まぁ生きてるだけで偉いんじゃない」

俺は適当に返した。


ヒロコは暗すぎず、明るすぎずの黒めのボブで、ロゴなどは一切入っていない無地の服を好む。

ヒロコが言うには、ロゴを入れる意味が分からない。服に勝手に意味を持たせるなということらしい。


俺はブランドロゴにお金を払っているので、あからさまなデザインでないと困る。


「明日から旅に出るんだ」

ヒロコが言う。

「美味しいもの食べて、買い物して、ゆっくりしてくるよ。」


ヒロコは至ってまともなのだ。


俺には妻と娘がいるが、俺の唯一の楽しみはガールズバーだ。

妻と娘を置いて行くガールズバーほど清々しいものはない。


俺とヒロコは違う人間だ。


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