シドニーの風

シドニー駐在サラリーマンの生活日記です。
心に映るよしなしごとをそこはかとなく書き綴ります…祖国への思いを風に載せて。

トイレ事情

2009-03-18 22:06:59 | シドニー生活
 日本のトイレがハイテク過ぎるというので、米国のソーシャル・ニュースサイト「Digg」で話題になっているという記事を見かけました。米国では温水洗浄便座は一般的ではなく、便座を温めたりお尻を洗ったりする機能に感嘆の声が挙がっているというのですが、これはプラグマティックなアメリカ人が、何故トイレにそこまでの機能が必要なのか疑問に思い、単に珍しがっているだけなのでしょう。彼らにはトイレはトイレとしての機能さえ果たしてくれれば良いのであって、何も便座を暖めてくれなくても気にしませんし、アメリカ人はそんなヤワハダではありません。
 ペナンにいた頃の現地会社・社長はシンガポール人で、彼は日本に出張するたびに、ホテルのトイレが素晴らしいと絶賛していました。便座を暖める、温水洗浄してくれるという機能性だけでなく、そもそも臭わない、清潔だ、音楽が聞こえる、等々、彼にはトイレに対する期待値が日本とアジアとで根本的に違うところが衝撃的だったようです。このあたりは、アジアのトイレとは比べるべくもないことは、アジアに旅行したことがある方は容易に納得できるはずです。そこでいろいろ(酒を飲みながらですから好い加減ですが)話し合った結論として、もし今のビジネスが立ち行かなくなったら、是非、日本の多機能・高級トイレをアジア一円で売ろうじゃないかという話で盛り上がったものでした。勿論、半分冗談ですが、半分本気で議論したことを懐かしく思い出します。
 その昔、ラジオの深夜放送で聞いた話で今も記憶に残っているのが、中国のトイレで、溝が一本掘ってあって川のように水が流れていて、そこを皆で跨いで垂れ流す方式で、仕切りの壁も扉もないということに驚いたものでしたが、Wikipediaを見ると、用便中も順番を待つ利用者と挨拶を交わしたりするので、外国人から「ニーハオ・トイレ」と揶揄される所以と書いてあります。さすがに中国でも都市部では変わったでしょうが、しかし完全密室を好む日本は世界でも例外のようで、アメリカのトイレの扉ですらだいたい膝の高さあたりまでオープンになっていたのは犯罪防止のためでしょうか。マレーシアでは、金隠しもなく、ただ穴が開いているだけのこともあり、またホースがついた蛇口があったり、水おけと柄杓が置いてあることが多いのは、用を足した後それで洗えという意味でしょうが、便座や周囲が水びだしになっていることが多く不衛生で閉口したものでした。こうした水で洗う習慣は、インドでは左手が不浄の手と言われていますし、Wikipediaではトルコにも触れられていて、アジア(の暖かい地方)に広く広がっているようです。案外、温水洗浄便座のヒントはここから来ているのかも知れません。さて、ここオーストラリアはどうかと言うと、もちろん先進国なので、さすがにアジアほど匂いは強くありませんし不衛生でもありません。アジアではTOTOやINAX製をよく見かけますが、オーストラリアは地場メーカー?が存在するため、日本製の多機能・高級トイレが入り込む余地は乏しいかも知れません。またオーストラリアも、アメリカと似て機能的で、そもそも文化的な下地がないかも知れません。
 トイレが衛生的であるかどうかが文明度に比例すると見たのか、先ごろ、マレーシア政府はトイレをきれいにすることを呼びかけていました。衣食足りて礼節を知るではありませんが、確かに世界的に見ればその連関は概ね当たっていると言えますが、文化的な違いや民族性(性格)も大いに作用するように思います。経営コンサルタントや会計士が、初めて訪れるクライアント企業の経営が上手く行っているかどうかは先ずトイレを見て判断するという話がまことしやかに囁かれますが、確かにトイレをきれいにする人は、だらしないわけがなく、何事もきっちり処理しているものと見て間違いなさそうです。件のシンガポール人社長から、何故、日本人はトイレにこだわるのか聞かれたので、日本ではトイレにはトイレの神様がいるからと苦し紛れに答えたものでしたが、今思うと、まんざら外れてもいないかも知れません。