Peggy Lee & Benny Goodman
The Complete Recordings 1941-1947
Columbia Records C2K 65686
ペギー・リーことノーマ・デロリス・エグストローム(Norma Deloris Egstrom)は北欧移民の娘。1920年、ノース・ダコタ州ジェイムズタウンに生まれている。8人兄弟の7番目。母親はノーマが4歳の時に亡くなった。あるバイオによれば父親は思うような職にありつけず酒に溺れ、家庭内暴力が絶えなかったと伝えられる。言葉の問題が大きかったようだ。幼いノーマは早くから聖歌隊や学校の合唱部で歌い始め、やがてセミプロのバンドに参加したりして、みずから金を稼ぐようになっていった。
プロとして本格デビューしたのはベニー・グッドマンのバンドシンガーとして。ヘレン・フォレストの後任に採用されたのだった。二十歳そこそこのノーマを「発見」したのはグッドマン本人ではなくて奥さんだったそうである。ペギーがあるホテルのクラブで歌っているのを聴いて気に入り、「あなた、いい娘がいるわよ」と紹介したのだという。無名の歌手はそんないきさつで、人気絶頂の「スウィングの王様」とともにステージに立つことになった。
写真のアルバムはそのグッドマンとの初録音“Elmer's Tune”(1941年8月)から“For Every Man There's a Woman”(1947年12月)までの米コロンビア録音を集めた2枚組。のちの姉御ふうの貫禄はまったくなく、キュートなお嬢ちゃんの初々しいヴォーカルが聴かれる。SP時代の録音だが音はいい。
ペギーはわたしに洋楽をはじめて意識させたシンガーだった。小学生時代、NHKのテレビでペギーが『フィーバー』を歌うのを見て、外国にはこんなかっこいい曲があるのかと思ったのだ。彼女はそのときすでにアンニュイなおばさんだった。だからこのコロンビア録音はまったくの別人のように思える。どうもデッカ時代あたりから唱法を変えたようである。
DISC:1 01. Elmer's Tune 02. I See a Million People 03. That's the Way It Goes 04. I Got It Bad (And That Ain't Good) 05. My Old Flame 06. How Deep Is the Ocean? 07. Shady Lady Bird 08. Let's Do It (Let's Fall in Love) 09. Somebody Else Is Taking My Place 10. Somebody Nobody Loves 11. How Long Has This Been Going On? 12. That Did It, Marie 13. Winter Weather 14. Ev'rything I Love 15. Not Mine 16. Not a Care in the World 17. My Old Flame 18. How Deep Is the Ocean? 19. Let's Do It (Let's Fall in Love) |
DISC:2 01. Blues in the Night 02. Where or When 03. On the Sunny Side of the Street 04. Lamp of Memory (Incertidumbre) 05. If You Build a Better Mousetrap 06. When the Roses Bloom Again 07. My Little Cousin 08. Way You Look Tonight 09. I Threw a Kiss in the Ocean 10. We'll Meet Again 11. Full Moon (Noche de Luna) 12. There Won't Be a Shortage of Love 13. You're Easy to Dance With 14. All I Need Is You 15. Why Don't You Do Right? 16. Let's Say a Prayer 17. Freedom Train 18. Keep Me in Mind 19. For Every Man There's a Woman |
知り合う前のカノジョの写真を見せられてあまりの印象の違いにとまどうような、そんな感じ。こんな素朴な娘だったのか。スウィングバンドの時代、バンドシンガーはオマケみたいな扱いだったので、こういうストレートな歌い方でもかまわなかった。主役じゃなかったから、グッドマンを食ってしまうような個性、存在感は不要だったのだ。そんなわけで、38曲も続けて聴くとさすがに単調に感じてしまう。
それにしても、この時代をリアルタイムでは知らないのに、懐かしいような気がする不思議。ジャズがダンスミュージックだった頃の記録。
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