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ユニクロの「魔法の商品戦略」

2017-12-31 19:21:03 | 日記
実はファーストリテイリングの55日分という在庫は、ファッション業界の同業者と比べても多い。国内の優良競合であるしまむらは30日、グローバル競合の中でヴィクトリアシークレットを運営するL Brandsは32日、一番ユニクロにブランドイメージが近くて、ユニクロほど経営がぱっとしないGAPでも在庫回転日数は44日だから、やはりユニクロは突出して在庫が多い。この点が、経営の弱点であることに間違いはない。
さて、小売業が在庫を圧縮して利益効率を上げようとすると問題も起きる。ファーストリテイリングが45%ほど在庫を削ると、経営効率はしまむらと同じになる。しかしそうなることで、機会損失という新しい問題を抱えることになる。
来店した顧客が気に入った服があっても、自分に合ったサイズや、欲しい色がない。だから買わずに帰ってしまう。これが機会損失で、在庫を減らすとこのようなことが頻繁に起きるようになる。特にファッション業界では、この機会損失は大きな問題となる。一般の小売業以上に機会損失が起きやすいからだ。
ところがファッションの場合、同じクルーネックセーターでもサイズがSからXLまで最低で4種類、それに色が白、黒、ブラック、エンジ、カーキと5色あれば全部で20種類のSKU(ストックキーピングユニット/仕入れの管理単位)で品切れを起こさないようにしなければならない。
興味のある方はぜひこの本(エリヤフ・ゴールドラット博士の『ザ・ゴール』)を読んでいただきたいが、ポイントとしては、店頭在庫と地域倉庫、そして近隣店舗の在庫を融通し合うことで機会損失を減らしながら、在庫を圧縮することができるという話である。
それを念頭に置いて話をユニクロに戻すと、最近面白い現象が起きている。2017年秋冬シーズンの目玉として、有名デザイナーのイネス・ド・ラ・フレサンジュ氏、クリストフ・ルメール氏の2人とユニクロがコラボした商品が、発売週に売り切れるという現象が起きているのだ。
ユニクロがたくさんの在庫を抱えられる最大の理由が、粗利率が50%前後と異常に高いことにある。仕入れ値が安いから、たくさんの製品を安心して店頭に置けるのだ。ところが、有力デザイナーとのコラボの場合はライセンス料が高いぶん、在庫も慎重かつ保守的に、つまり少なめにしなければいけない。その結果、有力商品が発売週に即完売という現象が起きるのだ。今年3月「あなたの手のひらに、世界最大のユニクロがオープン」として登場したユニクロアプリは、オンラインで商品が注文できるだけでなく、近隣店の在庫も検索できる機能が付いている。実は、ユニクロの通販は今はどの店舗でも返品ができる。そして店頭で返品すれば、返送分の送料がとられないのだ。だから2つのサイズを同時購入するという行為を気楽に行うことができたのだ。特定の店舗の店頭では品切れが起きていて、「魔法のクリスタルボール」がなければ機会損失が起きておしまいである。ところがユニクロアプリのお陰で、消費者はオンライン在庫(つまり地域倉庫の在庫と同じ)や近隣店舗の在庫を見つけて、そちらで買い物を継続してくれる。これがユニクロが手に入れた魔法のクリスタルボールの効果である。資料:ダイヤモンド

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