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SWAN日記 ~杜の小径~

間の楔SS ◆◆ある夜のアパティア◆◆

◆◆ ある夜のアパティア ◆◆ 間の楔SS
 
注:《間の楔》二次創作SSです。
イアソン×リキ。
アパティアでの生活に慣れてきた頃‥のお話。
妄想のまま勢いで書いたので、落ち着いたら加筆修正するかも‥です。
 
💐 💐 💐
 
〜イアソンside〜
 
定期的に行われるペットの健康管理を兼ねた健診結果を聞きに来たとイアソンはラウールのラボを訪れていた。
「データは送ってあるが‥あの雑種に気になることでもあったか?」
「特には無い。マーケットも楽しいようだからな‥仕事も優秀とのことだ」
「もともとスラムの雑種だ。お前の監視下とはいえ水を得た魚の様だろうと察しはつく」
ファニチャーが二人の前にコーヒーを置き、頭を下げて奥に下がって行った。
イアソンとて忙しいだろうに、わざわざラボまで来たのは何か話したいことがあるのだろう。
スラムの雑種リキ絡みの話であることは間違いない。
こいつはそういう奴なのだ。
まぁ‥見ていて飽きないのも事実。
イアソンはコーヒーを一口飲み、ゆっくりと口を開いた。
「何時もならリキに『来い』と支持するのだがな‥あいつの反応がみたくて『おいで』と言ってみた。一瞬硬直して私を見上げるリキは真意を探るような目をしていたが‥耳は赤かったのだ。なかなか可愛いものだと思わないか?」
「‥イアソン。お前確信犯か?」
また惚気話でもしに来たのかお前は。
「確信犯とは?私はリキの新鮮な反応を楽しんでいるだけだ。昨夜は朝まで離さなかったがな」
雑種の様子を思い出しているのかイアソンの表情が和む。
‥まったく天下のブロンディが聞いて呆れる。
アイスマンとまで言われた沈着冷静なイアソンは何処へやら。スラムの雑種のこととなるとイアソンの言動は途端に人間くさくなる。
『お前どんな顔してるか鏡を見てみろ』
喉まで出掛かった言葉をラウールは飲み込んだ。
他のブロンディには言わないだろうイアソンの本音。
ブロンディ同士とはいえ、イアソンとは腐れ縁に近い。
ユピテルのお気に入りでもあるイアソン。
そのユピテルがイアソンの行動を許しているのだら、止める必要も無いのである。
エリートのブロンディがペットを直接抱くなど有り得ないし酔狂だと思っていたが‥こいつらの繋がりに興味は尽きない。
そんな二人をみるのが日常の楽しみの一つになっているラウールだった。
 
◇ ◇ ◇
 
〜リキside〜
 
マーケットでの午後。
休憩を兼ねてカッツェとリキでひと息ついていると。
淹れたコーヒーを二人分デスクに置きながらリキが呟いた。
「‥まったくよぉ」
「なんだ?イアソンと何かあったのか?」
リキがこんな態度を取るときはイアソン絡みだ。
カッツェは煙草に火をつけ、話を促すように耳を傾けた。
「昨日の夜‥なんだけど。イアソンの奴、何時もなら『来い』って言うのに『おいで』なんて言われて‥ナニ考えてんだアイツ。何か心臓ドキドキするし挙動不審にもなっちまうと思わねえ?」
‥何か恥ずかしいしよ、とボヤいている。
まただ。無自覚の惚気。
「‥‥‥リキ。無意識で言ってるのか?」
「無意識ってナンだよ?けっきょく朝方まで離してくれなくて何時もに増して寝不足ったらありゃしねえ」
‥無自覚。
そんな時のお前がイアソンの目にはどう映るか‥‥判って無いのだろう。
お前が本当に嫌ならこんな事は話さないだろうし、朝から不機嫌丸出しで仕事に来る筈だ。
リキ自身、イアソンのペットとなり三年間エオスに居た後、一年程つかの間の自由を与えられたもののイアソンに引き戻され、アパティアで暮らすようになり‥今に至る二人。
ペットリングは付けられているからブロンディとペットという関係は変わっていない‥が。
『息が詰まる』と溢したリキをブラックマーケットで働く俺の補佐役として寄越した。
カッツェの上司はイアソンであるのだから、逐一リキの仕事の様子を報告する義務もあるため、イアソンの監視下にあるのは変わり無い。
ブロンディのペットがエオスでは無くアパティアに居てマーケットで仕事をしていること自体が特殊で前代未聞なのだ。
リキは《俺はスラムの雑種だから》というが、イアソンのリキに対する執着は尋常では無い。
アカデミー産のペットであろうがスラムの雑種であろうが関係ない。
あのイアソン・ミンクを動かしたのは《リキ》なのだから。
ブロンディとペットがタメ口なんて懲罰ものの筈だがイアソンは其れを赦している。
《リキがリキらしくいる為に》とのコトだ。
其れはブロンディ達の間でも暗黙の了解らしい。
ブロンディの帝王と言われるイアソン然り。
イアソンのペット‥リキは特例なのだ。
 
この二人は特殊かつ特例。
休憩中、コーヒーを飲みながら不貞腐れているリキだが顔に険がある筈もなく目元は心なしか笑っているように見える。
自分はイアソン・ミンクの元ファニチャーゆえ、タナグラの在り方もブロンディ達の顔も見知っているし、主人のイアソンをファニチャー時代からブラックマーケットのブローカーとなった今までみてきた。
あのイアソン・ミンクが異様なほどリキに執着しているのだ。
ペットは無知で従順であるのが美徳であるべき世界でリキは異質だ。
例えるなら黒豹ともいうべきリキ。
そんなリキゆえ‥かもしれないとも思う。
ファニチャーであるとき同様にイアソンの前では《様》付けで呼び、敬語を使うのが常であるが、リキと話すときは自分もイアソンを呼び捨てだ。
そもそもペットであるリキがブロンディのイアソンを呼び捨てでタメ口であるし、それが許されている関係であるのだから俺ががリキに注意することも無い。
〜さて。このリキの発言はイアソンに報告して良いものか。
報告すればリキの寝不足は続いてしまうだろうから愚痴として聞き留めておいたほうが良さそうだ。
この二人に振り回されるのにも慣れてしまった自分に溜息も吐きたくなるが、イアソンとリキが並んでいる姿をみていたいと思う自分がいる。
ふ〜っ‥とカッツェは煙草をふかし、デスクに突っ伏すリキをみていたのだった。
 
◇ ◇ ◇
 
ラウール然り。
カッツェ然り。
イアソンとリキのボヤキは惚気話にしか聞こえなかった。
恋は盲目。
無意識の惚気ほど始末に悪い。
いや、イアソンとリキが自覚してしまったら、第三者が見ていられないような事態になるのではないかと思うラウールとカッツェだった。
 
そして。
今夜もイアソンとリキの掛け合いは続く。
アパティアの一室‥軋むベッドの上で。
「イ‥ァ‥‥ッ」
声にならないリキの掠れた吐息にイアソンは耳元で囁く。
「リキ」ーーーと。
 
◆終わり◆
 
 
〜勢いのまま、一話短編UPしちゃいました(汗)
拙文ですが‥ここまでお読みいただき有難うございました。
 
SWAN/白鳥いろは
 
💐 💐 💐
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